第12話
自室で1人、考え事をしていた。静かな夜だった。
王子に謝罪させるのはあきらめることにした。アイリスとの確執は取り除きたいが、心からの謝罪でなければ意味がない。
バルコニーに出る。夜空に月が浮かんでいる。手を2回打ち鳴らした。
「お呼びでしょうか? エミリー様」
背後にサッと黒服の男が現れる。ひざまずいて控えていた。
冷たい声色で尋ねた。
「最近の国民の評判はどうなっている?」
黒服の男は、顔を伏せたまま答えた。
「はっ! 国民の評判ですが、エミリー様の評判が急上昇しております。辺境に援軍を出し魔物を討伐したこと、またその軍を王子妃様が率いたことが評判になっているようです」
「そう。それは何よりだわ」
「しかし、ギュスターヴ王子様の評判は下がっています。辺境への援軍を率いることもせず。妻に何もかも任せている頼りない男との評判です」
「そう。それは困ったわね」
最近、私の評判は良くなってきているが、反対に王子の評判はどんどん下がっていた。
「いっそ、王子を暗殺しますか? ア・ン・サ・ツ♡ 全ての実権をエミリー様が握るのです。王子に足を引っ張られることもなくなりますよ」
「そうね。暗殺しちゃおうかしら?」
それを聞いて、黒服の男が顔をぱぁーっと輝かせる。よっぽど暗殺したかったらしい。
「嘘に決まってるでしょ! 王子を暗殺してどうすんのよ!」
「はッ! 申し訳ありません」
王子がいなくなれば、当然だが王子妃として後ろ盾を無くすことになるのだ。それに、王子はたしかにバカでヘタレだが、根は悪いやつじゃない。殺すほど悪いやつじゃあないのだ。
「他に何か報告はある?」
「はッ! 今回の辺境の地の魔物討伐で評判を上げた者が、王子妃様の他にもう1人おります」
「ほう。誰かしら?」
「アランという名の下級騎士です。我が軍に所属。1人で魔物を100匹以上討伐する活躍を見せて話題になっております。勇敢な騎士です」
うちのヘタレ王子とは大違いだ。その時、名案を思いついた。
「そのアランとかいう者を、王子の剣の稽古係として取り立てましょう。バカ王子を教育させるのよ」
「はッ。承知いたしました」
そして、翌日。王子の御前に、下級騎士アランが呼び出された。ひざまずいて控える。
赤い髪に、日に焼けた肌、スラリとした体躯の健康的な美男子だった。
「アラン・カストゥール。参上いたしました」
よく通る声だ。王子は興味なさそうに見る。
「うむ。ご苦労」
アランに向けて微笑んで見せた。王子妃スマイルだ。
「アラン。先日の魔物との戦いでは、たいそうな活躍だったと聞いています」
「はッ! ありがとうございます!」
「その活躍を見込んで、あなたに王子殿下の剣の指導を任せたいと思います」
アランは、驚いた顔をする。無理もない。下級騎士には本来あり得ない大役だ。
「私が王子殿下に剣を指導するのでございますか?」
「そうよ。期待しているわ。アラン・カストゥール」
「ははーッ! ありがたき幸せ」
とにかく、バカ王子の評判を上げなくてはならない。そのために一から教育し直さなければ。
チラリと王子の方を見ると眠そうにあくびをしていた。
なに、ぼーっとしてんのよバカ王子! これからビシバシいくわよ!
ブクマや評価、感想をいただけると作者が泣いて喜びます。ポチッとお願いします。




