創造魔法
更新が遅れて申し訳ないです。
本日中にもう一話上げられるよう頑張ります。
閑話的なお話があと一話だけ続き、次章へと入ります。
◇
アオイを引き連れてセイレーンに戻り、騎士団の目が無い所で訓練をしていたある日の事。
真はふと思い立ち、自分の能力である『創造魔法』についてきちんと把握してみようと、ツバキに表示するよう頼んでみる。
あの狼さん、騎士はガルルと名付けているらしい、に近づいてモフモフするため、『身体強化』や『転移』などの魔法を創ってはいたのだが、実際の所どのような能力なのか正確に把握していない事に気が付いたのだ。
具体的に言うと、「何とかしてこう、狼をこちらに引き寄せたり出来ないかなぁ」と、またガルルに仕掛ける前提で考えていた時に気になったのだ。
「ツバキ、『創造魔法』に関する説明を表示してくれ」
「了解しました。少々お待ち下さい…」
ツバキにそう頼むと、すぐに表示してくれた。
◆
固有能力:『創造魔法』
合成魔法の上位互換的能力。
合成魔法が所持している属性適性内でのみ魔法を合成して行使する事が出来るのに対し、創造魔法はあらゆる属性の魔法を掛け合わせ創造魔法として行使出来る。
ただし、その魔法の特性上極める事が困難とされる『時空魔法』や『幻惑魔法』などの高位魔法に対して干渉する事は出来ない。
また、行使者の想像力と魔力保有量という制約を受けるが、物質自体を創り出すことも可能。
◆
えぇ…想像はしていたけど、とんでもない能力だなこれ。
というか、合成魔法の上位互換という部分は理解出来るとして、物質創れちゃうのか…これはセルフでモフモフを生み出す事が出来る、という事か!?そういう事か!?
早速試してみよう。想像するのは手乗りサイズのモフモフ…おぉ、手の平が光ってる…
そして、次第に手の平にはモフモフとした触感が感じられて来る。これはいいモフモフだ。
手の平の光が収まり、見てみると手の平サイズの白い毬藻みたいなのが出来上がっていた。何だこれ……一応鑑定してみよう。
◆
物質名:白毬藻(眷属)
白い毬藻。
◆
まんまか!
というかまたそういう感じの眷属かよ!!!
と真が突っ込みに暮れていると、いつの間にか近づいていたアオイが「シュバッ!」と音を立てつつ、尻尾で新しい眷属(毬藻)を真の手の平から弾き飛ばしてしまう。
おぉ?何だ、嫉妬か?モフモフは我が身で充分ぞ!的な感じか?
と思っていると、アオイはそのまますごい勢いで飛び出した毬藻を追いかけて行ってしまった。追いついては尻尾で弾き飛ばしたり、転がしたりと楽しそうに遊んでいる。
あんなに楽しそうなアオイは出会って以来初めて見るし、遊び相手?を創ったと思えばいいか、と切り替える。
その後、いつも魔獣たちと一緒に放置される辺りに生えている木を一本創ってみたのだが、完全に平面なのに命は確かに感じられる妙なハリボテのような物を生み出してしまったので、命を創り出すのは無理そうだ。
ちなみに真が0から創り出したものは眷属化が働き、自動的に眷属となってしまうらしい。お陰で他の木よりも薄っぺらいくせに丈夫になってしまっていて、周囲にバレないように消し去るのが難しかった。
先ほどの毬藻のように小さな物なら完璧に想像出来るのだが、少し大きくなると立体的に想像するのが難しくなってしまう。
想像力が磨き抜かれるまでは、セルフでモフモフした生き物を創り出すのは諦めた方がいいようだ。
試行錯誤しているうちに、訓練を切り上げるのに丁度良い時間となっていたので今日の訓練はここまでとする。
アオイがいつまで経っても遊びっぱなしだったので、少々強引な気はするが『創造魔法』で編み出した『引力』で毬藻(白)を引き寄せて没収する。そんな顔しないで。
ともあれ、訓練はここまでである。
最後にガルルに向かって『引力』を発動すると、確かに引き寄せる事は出来たのだが受け止め方を考えておらず、ボディ・プレスを食らう形になった。それでも久々にガルルに触れる事が出来たので良しとする。むしろご褒美だ。
もちろんガルルさんはお怒りになって、魔獣厩舎に返すまで真の首を執拗に狙い続けて来たが、そんなのは些細な問題である。そちらから近づいて来てくれるのは真にとって好都合であり、本当に危ないようならアオイが黙っていない。
そんな絶好の環境下で、真は間合いの外から狙っているガルル可愛い…と思いながら、時折フェイントを入れつつ『転移』を駆使してガルルに3タッチする事に成功し、満足感に浸りながら魔獣を厩舎に戻し、勇者宿舎へと戻って行く。
そういえば、『転移』や『収納』はスキルにある『時空魔法』の一種だったらしい。
『創造魔法』では創り出せない代物である『幻惑魔法』と『時空魔法』のどちらも有しているのだから、チートさまさまだ。
◇
勇者宿舎の自分の部屋へと戻り、夕食を佐倉たちと一緒に取り少しの間談笑してから、自分の部屋に戻りゴロゴロしていた時に思いついた。
ちなみに真の部屋には、最初はベッドが置いてあり一人の時はそれで寝ていたのだが、アオイを部屋に入れても良い事になった後は布団が敷いてある。
これは、意思疎通出来る相手が自分よりも低い位置で寝ているのが落ち着かないという心理と、モフモフと一緒に寝たいという願望の結果である。
サプライズ的にベッドを収納し、すぐさま目の前で布団を広げ始めた時のアオイはとても嬉しそうで、尻尾で真をさわさわと触って来た。それまでアオイはベッドの傍で寝ていたのだが、布団にしてからは身体と尻尾で真を包み込むようにして寝るようになり、掛け布団なんていらなくなった。
敷き布団の上で、ツバキを取り出して『創造魔法』を発動する。
イメージは、思念を脳から脳へ直接伝え合うテレパシーのような物。これが成功すれば「こいつ直接脳内に…!?」ごっこも出来るようになる。
ツバキと俺が淡く光り始める。
(…魔王様、これは…?)
「おぉ、これがツバキの声か!」
(私の声…? がお耳に届いているのですか?)
「いや、そうじゃないんだが…いざ説明するとなると難しいな。まぁ、これからは文字だけじゃなくて、こうして直接話せるようになったって感じだと思っておいてくれ。いちいち俺に取り出されないと、伝達出来ないのはもどかしかっただろうし…ユルド森林での事もあったしな。」
(魔王様……)
「すまん、必要なかったか?」
(いえ!とんでもないです!こうして直接お話し出来るようになるなんて、考えた事も無かったので……とても嬉しいです。魔王様、本当にありがとうございます。)
喜んでくれたようで良かった。これで情報の伝達もスムーズに出来るようになったし、良い事尽くめだ。
ツバキにも喜んでもらえたし、ガルルにはボディ・プレスを貰った上に3タッチも出来たし、今日は良い日だ。
そう思いながら、真は幸せな気持ちでアオイのモフモフに包まれ眠りに落ちて行くのだった。
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