備えあれば
すみません。
予想以上に手間取ってしまい、日を跨いでしまいました。
あと、『勝手にランキング』なるものを始めてみました。
◇
隣国、イルソン帝国を攻め落としたという魔王軍が、ついにブライス王国へ向けて軍を進め始めたという報告が入った翌日。
勇者一行はピリピリとした空気の中で、それぞれ訓練を行っていた。真は例の如くぼっちで、騎士宿舎近くの芝生で魔獣と至高のまったりタイムである。
何やら真がこうして一人でまったりしている事に、不平を言う勇者もいるらしいのだが、ぼっちの真にはその陰口さえなかなか届かない。
食事の際に佐倉たちに聞いた所によると、佐倉、市原、野田はそれぞれ似たような職業を持つ者同士で固められ訓練をしているそうだ。さらにその中で少人数の班を作り、班行動や連携などを確認している。
最近になって、魔物の討伐に近場へと出かける事もあったらしい。初耳である。勇者って大変なのねぇ。
まぁ、真をジトジトと羨むくらいなら直接誘え、という話である。実際誘われた所で、勇者たちとの訓練がアオイとの戯れ合い以上の効果がある気がしないし、ガルルに特攻するための『創造魔法』を編み出す以上の価値があるとは思えないから、丁重にお断りするのではあるが。
◇
さて、今日は何をしたものか。軍勢をかき集めて装備や食料などを揃えるために、最速で後一週間はかかってしまうというのに周りはピリピリとした空気で満たされている。魔獣厩舎から連れ出して来た魔獣たちもその空気を感じているのか、今日はどこか雰囲気が違っている。
ガルルも例外ではなく、いつもなら芝生にゴロンと寝そべっているのだが、今は耳をピンと立てて伏せをしている。アオイはいつも通り白毬藻(眷属)を弾き飛ばしているというのに。あれ、気に入ってるのか……
真もいつもならガルルにガンガンいこうぜする所なのだが、あの雰囲気のガルルに仕掛けると本気で怒るかもしれないから止めておこうと思う。自粛、大事。
となると、『創造魔法』の訓練くらいしかする事が無いのだが、この雰囲気の中では何か問題が起こる可能性がある事は控えた方がいいだろう。
そういう訳で、今日は眷属たちのステータスと自分の能力をもう少し見てみようと思う。
まずは自分のステータスから確かめるとする。
「ツバキ、自分のステータスを確認したい。その後で、固有能力やスキルについての説明も頼む」
(了解しました。少々お待ちください……)
ツバキが光を放ち始める。
おっ、表示されたな。どれどれ……?
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氏名 : 匝瑳 真 ♂ (--)
種族 : 人(魔王) Lv.61(+9) 職業 : 眷属王 Lv.23(+3)
体力 : 31011(+7402)
筋力 : 20834(+4263)
知力 : 31807(+1550)
魔力 : 35009(+3936)
<適性>
<固有能力>
闇魔法、幻惑魔法、眷属化、上級鑑定、反射、全吸収、再生、能力共有、創造魔法
<スキル>
時空魔法、闇魔法、結界、弓術、投擲術、短刀術、心眼、体術
<称号>
異世界人、不死の魔王、賢王、狙撃手
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順調に人間離れしていってしまっているようだ……何故だ……
(魔王様、恐らくアオイとの訓練や『創造魔法』の行使などが原因かと思われます。)
「ん…どういう事だ?」
(アオイは、元々がぽっと出の魔人程度なら倒せてしまう程の特殊な個体です。その上、魔王様に名前を与えて貰ったものですから、相当強力になりました。)
「ふむふむ。もしかして、その強力な妖狐と訓練とはいえ戦い続けていたから、体力や筋力が増加しているのか? …新しいスキルも増えてるけど」
(その通りです。新しいスキルについては、アオイとの訓練の中で魔王様が必要だと思う動きを実現するために現れたものかと。)
「なるほど……釈然としないけど魔王だしな………わかった。それで『創造魔法』の方は、行使の度に少なくない魔力を使っていたし、さらに行使によって見えていなかった部分が分かってきたりして、知力と魔力に影響したって感じか?」
(さすがは魔王様です。その通りです。)
「本当に魔王なんだなぁ……」
(魔王様は、本当に素晴らしいお方だと思います。私のような物にまで、名前を下さったのですから。)
真の感情が落ち込んだ事を察して、すぐにツバキがフォローしてくれる。ツバキさんぐう有能である。人間だったら嫁に欲しいレベル。あぁでも俺が人間じゃないのか………
駄目だ思考がループしてしまっている。能力の確認をしていこう。
「ツバキ、次は能力の説明を頼む。以前に説明を表示してもらった物なんかは、飛ばしてしまって構わない」
(了解しました………)
◆
能力名:『闇魔法』
闇属性の魔法が使用出来る。
固有能力に属性魔法が表示されている場合は、すでにその属性魔法を高位まで使用できる状態であることを示す。
スキルと固有能力に重複して表示されている場合は、その属性魔法を極めたと言う意味を持ち、かつてこの世界を創りし神々が使用したと言われる神級魔法が使用出来る。
また、上位までの魔法は行使の際の魔力量が抑えられ、威力が段違いにまで増すと言われている。
◆
初手でこれとか………もういい、次。
◆
能力名:『幻惑魔法』
その存在自体が幻とまで言われる伝説上の魔法。
その魔法は、全ての者を例外無く惑わし、幻覚に惑わされる内に死を与える事も出来る。
自身の姿を誤摩化す、相手の精神に干渉する、幻想の存在を生み出すなど、その用途は多岐に渡る。
固有能力に表示される場合は、この魔法を生み出したと呼ばれる大魔王に匹敵する熟練度を持つことを意味する。
◆
………はい、次。
◆
能力名:『反射』
能力保有者が指定したものを反射する事が出来る。
これは物質、魔法など全てに対して有効であり、一度指定されたものは指定が解除されるまで保有者に届く事はない。
反射の際は、基本的にその速度や力量をそのままに真逆へと跳ね返す。魔力を注げば、反射のタイミングで威力を増して返すことも可能。
◆
………、次…………(ガルルや実織に使わなくて良かった……)
◆
能力名:『全吸収』
能力保有者が発動する事によって、任意の対象を取り込む事が出来る。
魔法や空気中を漂う魔素を始め、生物を取り込む事も出来る。
生物を吸収する際にはその大きさによって魔力を消費し、対象が持つ固有能力やスキルなどを吸収する事も可能。
魔法を吸収する際は魔力を消費せず、行使者が消費した分の魔力を得ると共に、その魔法への耐性が得られる。
◆
………
◆
能力名:『再生』
能力保有者が発動する事によって魔力を消費し、身体を修復する事が出来る。身体の欠損は修復可能。
また、自身に使用するよりも多くの魔力を必要とするが、保有者が指定した対象に使用する事も出来る。
ただし、生命活動を停止してしまった対象には無効。
◆
はいここまでー!!
もう無理!もう無理です!俺の脳のヒットポイントはゼロでーす!!
薄々「チートなんだろうなぁ……」と勘づいてはいたし、諦めてもいたけど。これは度が過ぎるよ……完全に人間やめてたよ俺………
闇魔法とは神に匹敵しちゃうし腕とか生えちゃうし。簡単には死なない事がよく理解出来た。うん。もうここまで来たら、落ち込むレベルは通り越しているな。笑っちゃう感じだ。
◇
さてさて、気を何とか取り直して、次は眷属達のステータスを見よう。
まずはツバキからいってみるか……ステータス・プレートだし、大丈夫、そこまで強くはなっていないはずだ………
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名前付:ツバキ ♀(魔王の眷属)
種族 : ステータス・プレート Lv.28 職業 : --
体力 : 1370
筋力 : 1081
知力 : 30914
魔力 : 26020
<適性>
闇、風
<固有能力>
(幻惑魔法)、上級鑑定、転写
<スキル>
闇魔法、風魔法
<称号>
魔王の初眷属、魔王の右腕
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………なんて思ってた時代が僕にもありました。体力と筋力とかどこにあるのって感じなのに、騎士とかよりも余裕である。
しかもその後はもう何か、魔法使わせたらそんじょそこらの勇者では勝てないだろう。というか、魔法使えたのか……言ってよ………
結局人前で使わせる事は出来ないから、状況は変わっていないっちゃ変わっていないのであるが。心構えというか、そういうセンシティブな部分がアレなのだ。
◇
次はアオイか……あぁ……見たくないなぁ………
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名前 : アオイ ♀ (魔王の眷属)
種族 : 九尾 Lv.37
体力 : 18021
筋力 : 20040
知力 : 16709
魔力 : 19934
<適性>
光、火、水、土
<固有能力>
変化、狐火、威圧、合成魔法
<スキル>
光魔法、心眼、近接格闘、刺突、切断
<称号>
妖狐の女王、魔王の眷属、魔王専属モフモフ、魔王の剣
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………見なかった事にしよう。
いや、『妖狐の女王』とか想定外にも程があるだろう。元から名前とか持っていたのではないだろうか。「つけてー!」な感じで擦り寄ってきたから付けてしまったが、これは面倒事の気配がする。
だって最初からキュートに走りよって来たモフモフで可愛いうちのアオイが、そんな途轍もない存在だったなんて……
何だか特にこれと言った訓練はしていないというのに、通常のアオイとの訓練よりも疲れてしまった。
時間も途方に暮れているうちに、訓練を終える時間となっているようだから、今日はここまでにしよう。
魔獣を厩舎までに連れて行く前に、真は精神を保護するために伏せているガルルと地面の間に無理矢理『転移』で身体を捩じ込み、抱きついてモフモフとした首に顔を擦り付けた。
予想通りガルルが本気で怒ったので、そのままガルルを抱いたまま一度魔獣厩舎に転移をして、ガルルを置いてまたアオイたちが待つ場所へ戻る。
こうして真の今日の訓練は、いつも通り暢気な空気で終了したのだった。
これも、ツバキやアオイが予想以上に強かったために、真の戦争準備は終わったと同義であるからだ。
真とアオイが居れば、少なくとも佐倉たちを守る事は余裕で出来る。
戦争を知らない身でありながら、緊張感を忘れ真はそう思いながら勇者宿舎へと戻って行くのであった。
◇
来る戦争の時へ向け、確かに時間は進んで行く。
その経過と共に、セイレーン内の空気を静かに、しかしながら確かに、張り詰めさせていきながら。
誤字・脱字等のご指摘ございましたら、
よろしくお願いいたします。




