邂逅
⋇暴力描写あり
⋇残酷描写あり
車に撥ねられた――目まぐるしく回る視界の中で反射的に考えるも、すぐに間違いだと悟る。マッハ一で走る光斗を背後から撥ね飛ばせるものなど地上に存在するわけがない。戦闘機かミサイルなら可能かもしれないが、そんなものが地上スレスレを飛んでいたら気付かない方がどうかしている。
「ぐああぁぁっ!」
車道に落ちた光斗は元の速度が速度だった事もあり、スーツが煙を上げるほどに滑り転がる。とはいえ能力を得た事で多少頑健になっている肉体の方は、結構な痛みこそあれど大したダメージは無かった。
だが痛みよりも重要なのは、顔を上げて瞳に映った光景。眼前には倒れ伏す光斗を冷たく見下ろす、極めて異質な存在が佇んでいた。
最初に感じた印象は悪魔、あるいは鬼。深い紅色の結晶体で構成された禍々しく凶悪な全身鎧を纏い、一部の隙間もなく全身を覆っていた。鎧の外観は鋭角的で所々鋭く尖り突き出しており、頭上では悪鬼羅刹を思わせる二本の捻じれた角を形作っている。瞳の部分に至っては不気味な赤い光が零れるだけで、その奥に存在するはずの目玉や素顔は一片たりとも伺えない。
不思議な事に、光斗にはこの紅色の結晶が宝石であると直感で理解出来た。血液にも似た深い紅色の輝きは月明かりの反射を差し引いても眩しく、内部に星の煌めきにも似た十字の輝きが幾重にも浮かんでいた。
「な、何だ、お前は……!?」
美しくも悍ましい未知の存在を前に、音速で身体を起こし距離を取る。
驚いた事に、紅い鎧は一連の動きを目で追っていた。それが意味するのは音速の挙動を認識出来るという事実。すなわち、この人物も超常的な能力を持つ存在であるという事。
冷静に考えてみれば光斗はあまりにも傲慢だった。自分だけが能力を授かった特別な存在だと認識し、他に能力を授かった者が存在する可能性を考慮していなかったのだから。
『……ヒーローごっこか。くだらん真似を』
誰何に対し、返って来たのは脈絡のない言葉。口周りすら宝石で覆われている事を加味しても、信じ難いほどの重低音。年齢も性別も判断できない、加工された声質であった。
「何だと!? 人を助ける事の何がくだらない!?」
『名も知らぬ誰かのため、己の人生を捧げ奉仕する。己を犠牲に他者を救う――それがくだらぬ所業以外の何だと言うのだ? 高い知性と自我を持つ高等生命体でありながら、種の保存のために己を犠牲にするという虫畜生と同レベルの愚行。<変彩光>を授かっておきながら、そのような低能極まる真似をするとはな』
「っ……!」
紅い鎧が吐き捨てたのは、ヒーローという存在に対する一種の侮蔑。声の調子こそ落ち着いたものだが、滲み出る激情が尋常ではない。
憤怒か憎悪か、それとも他の何らかの感情か。身に纏う宝石の色を象徴するかのような、激しく燃え上がる何かしらの意思が込められていた。光斗を冷静にさせるほど恐ろしく圧倒的で、全てを捻じ伏せるほどに強烈な意思が。
「……この力は、<変彩光>っていうのか」
『そうだ。大宇宙より飛来した奇跡の結晶、それを己が身に宿した者が授かる超常の力だ。このような祝福を授かり現生人類から抜きんでた存在へ至りながら、ヒーローごっこなどという幼稚で愚かな真似に現を抜かすとはな』
光斗の問いに答えながらも、言葉の端々から落胆や失望を滲ませる紅い鎧。
突然の化物染みた存在との遭遇に恐れ戦いていたものの、一連の会話から二つ理解出来た事があった。紅い鎧は決して善なる者ではなく、絶対に相容れない存在なのだと。
「上から目線で偉そうな事言いやがって! だったらお前は、この力で一体何をするつもりなんだ!?」
『知りたいか? ならば私を捕まえてみせるがいい』
「なっ!? それは……!」
答えた紅い鎧が己の周囲に展開したものを目撃して、驚愕に息を呑む。
透明感のある輝きを放つ、水晶染みた結晶領域。見間違えるはずも無い。光斗自身が日頃から世話になっている水晶膜だ。高速走行に伴う風圧や衝撃波、摩擦熱から己と周囲を守るための防護壁であった。
『我が名はグリーフ。最強最速の煌めきを持つ存在なり』
名乗ると共に、紅い鎧――グリーフは瞬間移動にも似た速度で駆け出した。さながら流星が光の尾を引くように、紅い煌めきの軌跡を残して夜の街へと消えて行く。
水晶膜に、高速移動。同じ超常の力を授かった存在というだけではない。能力までもが同一であった。
「ふざけやがって! 絶対に捕まえてやる!」
即座に光斗も水晶膜を展開し、マッハの速度でグリーフの後を追う。禍々しい様相にも今だけは怯えを忘れ、怒りのままに疾走する。
最初に撥ね飛ばされた事よりも、ヒーローを侮辱する発言が許せなかった。光斗にとってのヒーローとは父親そのもの。父を侮辱されて平静でいられるはずがなかった。
絶対に報いを受けさせるという誓いを胸に、紅い宝石の煌めきが残す光の尾に食らいつく。黄色いスーツの残像を軌跡として残しながら、様々な光に彩られた街の光を置き去りにして駆け抜ける。
「――くそっ! 何なんだアイツ、速すぎるっ!」
しかし、一向に距離が縮まらない。
グリーフは車道のど真ん中を我が物顔で走り、直角に曲がるコースを取っている。対する光斗は車道も歩道も走り、時には路地を抜け、時には建物を駆け上がり屋上から屋上へ渡るショートカットも行っていた。
にも拘わらず、お互いの距離は離れて行くばかり。ほんの一時距離を詰める事が出来ても、すぐに恐るべき勢いで引き離されていく。
「ありえない……どうしてここまでの差があるんだ!?」
能力が同じ高速移動なのは明らか。しかしその差は歴然。下手にショートカットができない高速道路を駆け抜ける中、信じ難いほどの速度で紅い背中が遠ざかっていく。能力の練度か、あるいは使い方の差か、圧倒的な速度差に愕然とする他なかった。
速度の次元が違う――地上最速の存在になったと舞い上がっていた自分を叩き伏せるような、残酷なまでの現実が突き付けられていた。
『――つまらん。興が冷めた』
「ぐあっ!?」
どれほどの時間が経った頃だろうか。高速道路を走り抜け市街地に戻って来た光斗は、唐突に速度を落とし隣に並んだグリーフに殴り飛ばされた。再び超音速で吹き飛び、コンクリートの地面を激しく転がってしまう。
『仮にもヒーローを名乗っておきながら、何とも無様な。力なきヒーローなど悪より度し難い存在だとは思わないか?』
「うっ、ぐ……くそっ……!」
重苦しい足音を響かせながら、一般人にすら認識できる緩慢な速度で歩み寄ってくるグリーフ。酷く馬鹿にされている気分で腹が立ったものの、強烈な一撃を受けて数十メートル近く吹き飛ばされた事もあり、立ち上がる事すら出来なかった。
「おい、何だアレ。何かの撮影か?」
「コスプレなら余所でやれよ。頭おかしいんじゃねえの?」
嫌味な声と嘲りが耳に届き、遅れて周囲の様子を認識する。どうやら光斗は大通りの交差点に倒れているらしい。行き交う車両が鬱陶しそうにクラクションを鳴らし、横を通り過ぎて行く。横断歩道の向こう側では、一見するとコスプレにしか見えない光斗とグリーフの姿を誰もが訝しみ、あるいは嘲笑を浮かべていた。
『見るからに尋常でない状況だというのに、それを察する事の出来ない危機感の薄い愚か者共……少しは思い知らせてやるべきだな』
「な、何を、する気だ……!?」
『見せつけるのだ。この力を、そして輝きを』
剣呑な雰囲気漂う言葉を口にしたグリーフは、内容とは裏腹にゆったりとした足取りで移動する。ただし移動したのは、今正に大型車が通り抜けようとしていた車線。総重量十トンはありそうなダンプカーの前に、自ら身を躍らせたのだ。
直後に重苦しい衝突音が響き渡り、グリーフが撥ね飛ばされる――などという事態は起きなかった。
「――うわああぁぁぁぁっ!?」
「マズイ! 間に合えっ!」
吹き飛ばされたのは、フロントガラスを突き破って車外に投げ出された運転手。光斗は痛む身体に鞭打って走り出し、運転手が吹き飛ぶ方向に合わせて相対速度をゼロにする形で受け止めた。
「大丈夫ですか!? 怪我は!?」
「えっ、あ、ああ……大丈夫、だ……」
「良かった。じゃあすぐに逃げてください。ここは危険です」
半ば放心状態の運転手の身体を下ろし、グリーフの方に向き直る。
恐ろしい事に、グリーフはダンプカーと正面衝突しておきながら全くの無傷であった。車両の残骸から悠々と抜け出て、煌めく紅い鎧姿を夜闇に晒している。むしろ車体の方が悲劇的な結末を辿っており、前部が運転席ごとひしゃげ無残に潰れていた。この様子を鑑みるに、むしろ運転手が投げ出されたのは幸運と言うべきかもしれない。
「な、何だよアイツ! 化物じゃん!」
「に、逃げろおおぉぉぉっ!」
大型車がスクラップになるほどの衝突を起こしながら、微塵も揺るがず平然としている怪物。周囲の人々はようやくコスプレイヤーではなく人の形をした凶悪な怪物だと悟ったらしく、蜘蛛の子を散らすように走り去って行った。
とはいえ危機感の薄い人間という者は必ず存在する。未だテレビの撮影か何かだと勘違いしているのか、ヘラヘラ笑いながら携帯で撮影を続ける者たちが何人か残っていた。
『真に危険が迫ってからようやく逃げる。挙句の果てに、未だ留まり撮影する者すらいる始末。見せしめに何人か血祭りに上げれば、危機意識も向上するか?』
「や、やめろ! そんな事はさせないぞっ!」
剣呑な発言と共に、危機感の薄い人々の方へ足を向けるグリーフ。光斗は惨劇を防ぐために超音速で飛び出すが――
「――ぐっ!?」
神速で反応され、振り返り様に首を左手で掴み上げられてしまう。高速移動能力も地に足が着いていなければ無用の長物。ダンプカーの衝突を物ともしない堅牢極まる頑健さを持つグリーフに捕らわれた以上、自力で拘束から逃れる事は不可能だった。
『ヒーローは力不足のごっこ遊び。人々は愚民ばかり。全く、何ともお笑い草だ。愚か者には死の制裁を下さねばならない。まずはお前からだ、弱小ヒーロー』
「ぐ、がっ……!?」
道路に身体を叩きつけられ、衝撃を全身が貫き呼吸が止まる。コンクリートが粉砕され小規模なクレーターが生み出されたのは、常人なら即死しかねない速度であった証。肉体が頑健になっているというのに、しばらく前後不覚に陥る程の致命打であった。
ぐらぐらと揺れる視界の中で、左手を掲げるグリーフの姿が目に入る。手刀で胸を貫かんとするような姿勢に血の気が引いたものの、実際に発生した事象は全く別物。音叉の如き澄んだ音色を響かせながら、グリーフの左手が輪郭を失い残像を残すほどの速度で振動を始めたのだ。
恐らく高速移動の応用。紅い結晶に包まれた左手は大気との摩擦で赤みを増して光り輝き、更にバチバチと帯電し始める。まるでテスラコイルのように周囲に青白い稲妻を迸らせながら。
「――ぐあああぁぁぁぁぁぁっ!?」
そして突き出された左手から、青から紅へと転じた禍々しい雷撃が光斗を襲う。
全身を駆け抜ける想像を絶する苦痛に、喉が張り裂けそうなほどの悲鳴を上げてしまう。凄まじい電流に身体の筋肉がのた打ち回り、あるいは引きつり無様に悶える。全身の血液が沸騰しているのではないかと思うほどの熱さが身体の中で暴れ回り、意識が漂白されていく。
やはりヒーローを志すなど無謀だったのだろうか。あるいは動機が不純だったために天罰が下ったのかもしれない。所詮は幼馴染を傷つけておきながら、謝罪の一つも出来ていない最低最悪な男。志半ばで果てるというのは、ゲス野郎には相応しい末路と言える。薄れ行く意識の中、光斗は自らの最期を嘲笑い――
「<異界送りの魂刈り取る鋼鉄馬車>!」
「……えっ」
直後に舞い降りた奇跡を理解しきれず、呆気に取られて凍り付いた。
どこか甘く愛らしい声が響いた直後、グリーフが再びダンプカーに撥ねられたのだ。しかも今回は不動で耐える事無く、ビルの壁面に叩きつけられ車体に圧し潰されていた。
単なる事故なら奇跡とは言えない。しかしあのダンプカーは先ほどグリーフが破壊した車両であり、走行など当に不可能な状態のものであった。
加えてもう一つ。夜空に輝く三日月を背に、謎の人物が姿を現したのだ。銀色のサーフボード染みた物体に立ち宙に浮かび、鈍色の輝きを宿すマントをたなびかせながら。
「き、君は、一体……?」
その人物は目元のみを覆うドミノマスクで顔を隠していたものの、小柄な少女なのは一目瞭然であった。マントの下には普通の少女らしいスカートやブラウスを纏っており、夜闇に煌めく美しいエメラルド色のツインテールがなびいているのだ。加えてマスクの下から覗く瞳は、月夜でも鮮烈に輝くスカイブルー。
彼女の背後に輝く三日月の美しさも手伝い、実に神秘的な光景だ。幻想的でミステリアスな雰囲気漂う闖入者の姿に、光斗は魅入られたように目を釘付けにされてしまった。
「――待たせたな、我が相棒ライトニングよ! 汝のバディたるマグネーター、今ここに見参!」
しかしマグネーターと名乗る少女は雰囲気を台無しにする珍妙なポーズを取り、厳めしい口調に反して実に愛らしい声音で謎の発言を口にした。恐らく自分ではカッコいいと思ってやっているポーズなのが、自信に満ち溢れた声音から理解出来てしまった。
「……なに!? 誰!? 俺がなに!? マジでなに!?」
とはいえ発言の内容自体は一ミリも理解出来ず、混乱の極みに陥ってしまう。
何故かライトニングなどと呼ばれた挙句勝手に相棒認定され、長年のコンビであるかの如く親し気に振舞われたのだから当然であった。恐らく友好的な人物で、自分を助けてくれた事だけはかろうじて理解できたが。
「さあライトニングよ! 我と共に勝鬨を上げ、市民に安寧を取り戻した事を知らしめるのだ!」
無駄に大仰に両腕を広げ、緩やかに隣へ降りてくる自称マグネーター。
何が何だか分からずいまいち展開についていけないが、光斗は一つ深呼吸をしてあらゆる疑問を脇に置いた。何故なら戦いは終わっていないのだから。
「……残念だけど、たぶん倒せてないぞ」
「何を言う。十トンダンプの衝突、耐えられる者などいるわけが――」
『――二人目のヒーロー気取りか。何故こうも愚か者が多いのか、理解に苦しむな?』
地獄の底から響く怨嗟の呼び声にも似た声が、ダンプカーの残骸から響く。すると残骸は真っ二つに引き裂かれ、五体満足のグリーフが悠然と現れた。全身を覆う紅い宝石の鎧には傷一つなく、足取りにも全く乱れはない。何の痛痒も感じていないのは明白だった。
「やっぱり生きてたか。しかも無傷とか、どんだけ頑丈なんだよ……」
「んえええぇっ!? 何で無傷!? 普通トラックに撥ねられたら異世界転生コース一直線だよね!?」
毒づく光斗の隣で、マグネーターは場違いな悲鳴を零す。恐らくはこちらが彼女の素なのだろう。悪い子ではなさそうだが、少々癖がありそうなのは否めなかった。
とはいえ彼女もまた光斗たちと同じ能力者なのは明白。ただの金属の板にしか見えない銀色のボードに乗り、重力を無視して浮遊しているのが確たる証拠だ。
グリーフは明らかに光斗より格上の能力者だが、二対一なら勝てる望みはゼロでは無い。尤も勝率は果てしなく低そうだったが。
『……興が冷めた。今回はここまでにしてやろう。だが次こそは覚悟しておけ。私は弱きヒーローの存在など、決して認めない』
幸運な事に、グリーフは戦意を収め紅の残像を残し走り去って行った。再び矛を交える事になるであろう、不吉な言葉を残して。
騙し討ちからの奇襲を警戒してしばし周囲を窺うも、特に何事も起きなかった。続々と集まりつつある野次馬の騒めきが広がるばかりであった。
「どうやら本当に逃げたみたいだな。いや、こっちが見逃されただけか……」
「フハハハハッ! 何にせよ我らの勝利だ! やったな、ライトニングよ!」
「……うん。相棒とかライトニングとか一体何の話って感じだけど、ひとまずはありがとう。君のおかげで助かったよ」
「なに、気にするな! 相棒を助けるのは当然の事だぞ!」
張りつめていた空気が消え去り、光斗は少女と共に一息つく。勝手にライトニングと名付けられた挙句、知らぬ間に相棒にされているのは甚だ疑問であるが、彼女のおかげでグリーフが退いたのは確かだ。多少の不満はあれど今は感謝しか無かった。
「同じ能力者として色々と聞きたい事や話をしたい事があるけど、さすがにこの場では厳しいな。野次馬も集まって来たし、パトカーのサイレンも近付いてきてるし」
「確かに。ならば日を改めるとしよう。これを受け取れ、ライトニングよ」
「何だこれ、パチンコ玉? って、おおっ……!?」
頷いたマグネーターが差し出してきたのは、銀色に輝く小さな球体。何故こんなものを渡すのかと疑問に思った途端、球体は瞬く間に形を変えて薄いプレート状に変形した。しかも文字や数字が刻まれた状態に。
パチンコ玉を変形させ、動かないはずのダンプカーを動かし、銀色のボードに乗って空を駆ける。恐らく彼女の能力は金属操作に違いない。どうやら誰もが高速移動能力者というわけでは無いらしい。
「我が居城の三次元上の位置を示す座標を刻んだ! 明日の午後一時、我が居城に馳せ参じるがいい!」
「座標……あっ、住所か。いや待てよ? そんなの俺に教えて良いのか?」
「構わぬ! 魂の盟友に隠す事など何も無い! それは我が素顔も含めての事である!」
「何か知らぬ間にどんどん関係性がランクアップしてるな……」
初対面から尋常でないほど友好的な少女に、少々辟易してしまう。とはいえ邪気の欠片も感じられないので、さほど悪い気はしなかった。
「ではさらばだ、ライトニングよ! ハーッハッハッハッ!」
言いたい事を好きなだけ口にしたマグネーターは、ボードを操り再び空に舞い上がる。最後に上機嫌な高笑いを残し、夜空に浮かぶ三日月に向かって飛び去って行った。
「……まさか一晩で二人も別の能力者に合うなんてな。世界は狭いな?」
その後ろ姿を見送った光斗は、グリーフが走り去って行った夜の闇に目を向ける。
マグネーターはまだ常識の範疇で計れる存在であり、極めて友好的なので問題は無い。しかしグリーフは何もかもが異質だった。紅い宝石の鎧に包まれた凶悪極まる様相も、ヒーローという存在に対する常軌を逸した執着も。禍々しい容貌通り、人間ではなく悪魔か何かかと言われた方がまだ納得できるほどだ。
何にせよ去り際に残した言葉通り、再度の衝突は避けられない。あの強大な力に対抗するには力を磨くか、仲間を集めるのが賢い選択だろう。すでに一人仲間が出来た、というか向こうから相棒宣言してくれているのは実に有難い事である。
「……絶対負けないぞ。父さんみたいな立派な人になるためにも、久遠に謝るためにも」
決してグリーフには屈しない事を胸に誓い、光斗も夜闇に向かって走り出した。憧れと罪の意識、二つの感情を胸に抱きながら。
サビターとかリバースフラッシュが思い浮かんだ人とは友達になります(強制効果)




