Ep.7 賀茂先生との面談(先生本人は離席中)
深謀遠慮、雲散霧消
「安倍さん、大学でのあなたの名前、いいのが思いつきますか?」
賀茂先生の提案に少し驚くものの、晴明はふむ、と考え、
ジャージのポケットから和紙と筆ペンを取り出した。
そして、「せいめい」と書いて筆ペンのふたでコンコンと文字の上を叩くと、
パアッと文字が一瞬光った。
次の瞬間、和紙に漢字が書かれていた
清明
晴明はふふっと笑うと、賀茂先生を見る。
「先生、決めました」
「安倍清明と名乗ります」
和紙にもいつの間にか
安倍 清明
と書かれている。
「あべ、きよあき くんね。…いい名前だ。」
賀茂先生がうんうんと頷くと、すくっと立ち上がる。
「ちょっとこれから学長に連絡するんで、2、3分待っててくれる?」
「すぐ戻ってくるから。」
そう言って先生は奥の部屋へと消えていった。
それを見届けると、いぶきが元気がなさそうに晴明に問いかける。
「そうしたら、せーめーさん、って言っちゃダメなの?」
「いぶき、えっと…」
いち早く気づいたさやが話しかけようとしたが、
晴明はさやに向かってウインクしながら「シーッ」と右人差し指を口に当てて制した。
そしてゆっくりといぶきに話しかける。
「…いぶきさんは、私に一番『せーめーさん』と言ってくださいますね」
「それほどまでに、親しみを持ってくださっているのでしょう」
こくんと頷くいぶきの前に、晴明の偽名が書かれた和紙をスッと差し出す。
「いぶきさん。私のこの名前、違う読み方をすると
嬉しいことが起こりますが、わかりますか?」
「…清い、明るい、え〜!?」
いぶきの頭はこんがらがる。
「いぶき、落ち着けって。(まぁ、お前少々おばかさんなのは知っているけど)
お前が一番言いたいことだよ」
晴明のカラクリに気づいた湊がフォローする。
「…湊、なんか私のことバカにしてそうな顔してる〜。」
「でも、うちが一番言いたいことと言ったら、せーめ…
あっ!!!!!」
モヤが晴れたような笑顔になったいぶきが叫ぶ。
「せーめーさんだあぁあああ!」
「ご名答」
晴明が微笑む。
「漢字の読み方を変えた呼び名で相手を表すこともまた一興です。
あと、人間は咄嗟の時にはどうしても隠し事を隠せないことがあります。」
「その時に事情を知らない人が疑っても、
『愛称で呼んでしまいました』で通すことができます」
それに。
晴明は心の中で呟く。
ー皆さんに「せーめーさん」と呼ばれるの、悪くないんです。
賀茂先生、何か持って戻ってきます




