表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/29

Ep.6 賀茂先生との面談(前半)

温故知新、以心伝心


「てっきり安倍さんと一ノ瀬しか来ないと思っていたから椅子が足らなかったね。

この椅子、使って」


そう言いながら賀茂先生が椅子をガラガラと用意し、

大きな机(実験ができそうなレベル)を囲うように椅子を並べた。


それぞれ着席すると、賀茂先生は人数分のお茶とお菓子を出す。

「今回の面談はそんなに硬いものではないですが、

ちょっと打ち合わせをしておきたくて、今日は来ていただきました。」


「よろしくお願いいたします。」


晴明が深々と礼をする。


賀茂先生は手に持っているデータと見比べながら話し始める。

「今日来てくださったのは理学部物理学専攻1年 安倍晴明さん。

理学部物理学専攻2年 一ノ瀬湊さん。

情報学部2年 一ノ瀬さやさん。

スポーツ科学部 火坂いぶきさん。」


「それで、皆さんは【ゴーイングマイウェイ研究会】という大学公認サークルのメンバーで、

安倍晴明さんの素性を知っている。

お間違い無いでしょうか?」


「え!?なんで知っているの!?」

いぶきがたまらず椅子から立ち上がる。


「まぁまぁ、落ち着いて。」

賀茂先生が少々焦り気味に制する。

「実はですね、私もこの情報をもらったのが先ほどでしてね。

悩むより当人たちに聞く方が早いと思いまして、来ていただいた次第です。」


大学二年生三人はじっと賀茂先生の話を聞いている。

晴明は出されたお茶をゆったりと飲んでいる。


賀茂先生が話を続ける。


「皆さんもリラックスしながら聞いてくださいね。

あんこはいけますか?」


「阿闍梨餅、僕は好きなんですよね」


そう言いながら賀茂先生は阿闍梨餅の包装紙を破く。


「一応形式ではありますが、大学生が安心して大学生活を送れるように、

大学の教員は大学生の担当教員としてお世話をします。」


「しかしながらですね。

僕自身、ここの大学に赴任してきたのがこの4月でして。

それまでは福岡の大学で教鞭をとっていたんです。」


「赴任したばかりの教員に大人数の大学生の担当をさせないと聞いていまして、

それで安心していましたら、ちょっと、いや、だいぶ特殊なタイプの学生さんである

安倍晴明さんを担任することになりまして。」


大学二年生三人、大きく頷く。

晴明は静かに聞いている。


賀茂先生は一呼吸おいて、晴明をまっすぐ見る。

「ただ、僕は、どんな立場であろうと、どんな境遇の持ち主であろうと、

一人の大学生として接していきます。」


「それが、あなたを守り、あなたを一人前に育てていく一番の近道だからです」


不安や動揺は隠せていないが、覚悟を決めた人間の宣誓であった。

晴明は賀茂先生から目を逸らすことなく聞いていたが、

懐かしそうな、そして嬉しそうな笑みを浮かべる。


ーかつて私に陰陽道のイロハを教えてくださった師と同じ音がする


そう思いながら、晴明は賀茂先生に応える。

「その決意、お心遣い、大変ありがたく思います。

現代にて勉学をしたいという私のわがままに巻き込んでしまい、

申し訳ありませんが、これからどうぞよろしくお願いいたします。」


賀茂先生はその言葉を受けて安心したのか、

「よろしく」と言い、手にしていた阿闍梨餅を一口食べる。


すると、タイミングを見計らったかのようにさやがおずおずと挙手する。

「あの、いくつか質問してもよろしいでしょうか」


「いいですよ?僕が答えられる範囲であれば」

賀茂先生は2つ目の阿闍梨餅を食べようとしている。


「えっと、まず、晴明さんの本当の姿ってあまり巷には広めたらいけない気がするのです。

ただ、私たちの研究会のメンバーはひょんなことから知っておりまして、

学長から『安倍晴明さんが大学で正式に学ぶことになったから身の回りなどのサポートをするように』と頼まれました。」


「それで、晴明さんが神界からの遣いであることを知っているのは

誰なのかを把握したいのですが、教えていただけないでしょうか?」


賀茂先生は口をもごもごさせながら

「そうそう、それ言わないといけなかったんだ」と言わんばかりにうなずき、

タブレットをさやたちに見せる。


「そうだね、まずはその情報共有が大切だね。

安倍さんも一応確認のため見てほしい。」


タブレットに映し出された表には、数行しか書かれていない。


[人間界側]

・【ゴーイングマイウェイ研究会】14名

・学長

・賀茂(僕)


[神界側]

・ほぼ全員


「ガチで一部の人しか知らないじゃん」

湊がぼそっと言う。

賀茂先生が静かに頷く。


「やはりこのような場合は、本当のことを知っているのは一部だけでいい。

ただ、神界の皆様方はね、噂好きなのか、一気に広まっちゃったらしい」


晴明は心当たりがあるのか、額に手を当てて少し肩を落とす。

「せーめーさんがこんな顔するの、初めて見た」

いぶきがぼそっと呟く。

さやが小さく頷く。


「なので」

賀茂先生が話を続ける。

「自分から正体を明かすことはないと思うので、

その点は大丈夫でしょう。」


「ただ、念のため、

大学内では偽名を使ってもらうことになります。」


「安倍さん、大学でのあなたの名前、いいのが思いつきますか?」


せーめーさん、なんて名乗るんでしょう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ