Ep.34 仮想空間で仕事ができるって本当ですか?
果断迅速、超塵出俗
晴明の部屋に湊と白虎(人間Ver.)が入ってくる。
「あ、パソコン開いてくれてる!
そしたら、ねーちゃんからそろそろメールが来るはずなんで、待っておきましょうか。」
「湊さん、これから何をするのですか?」
「実はですね、デジタルワークスペースを開設しようと思っていまして。」
「「「デジタルワークスペース?」」」
晴明、太陰、白虎の頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいる。
ちなみに、太陰はスマホから出てきた十センチほどの和服姿のおばあちゃんで、晴明の頭の上に座っている。
白虎は子猫サイズの白い虎の姿で、晴明の右肩に乗っていた。
湊は自分のノートパソコンを繋げながら頷く。
「はい、デジタルワークスペースです。
最近、賀茂先生の研究室に行って面談したじゃないですか。
本当だったら、これからも研究室といった部屋にメンバーが集まって話し合いができたらいいんですが、
なかなかそうはいかないのが現状です。
大学の授業が本格的に始まったら空きコマが重なっているとは限らないし、賀茂先生、忙しいし。
なので、作業場をインターネット上に開設して、そこで各々作業をしたらいいんじゃない?
ということで、ねーちゃんと話をしていたんです。
そしたら、たまたま先ほどせーめーさんからの相談のメールが来まして。
タイミングが良かったので、せっかくだからやってみよう、と思いまして、俺らが動いたんです。」
「なるほど。インターネット上に作業場を作ることができるのですね。
でも、作業場となるインターネットにどうやって入り込むのでしょう?」
「あ、せーめーさん。太陰様のイメージで話ししちゃダメですよ。
インターネットにダイレクトに入ることができるのは、太陰様のような神様だけだと思います。
僕らも入れませんからね。
だから、ノートパソコンといったデジタル機器を使うんです。」
すると、晴明のノートパソコンにポップアップが表示された。
メール 1件 受信
題名:一ノ瀬さやさんがあなたをデジタルワークスペースへ招待しました
湊が晴明のノートパソコンの画面を確認する。
「あ、話をしていたら招待メールが届きましたね。
せーめーさん、ひとまずやってみましょう!
メールに貼り付けられているURLをクリックしてください」
「URLとは何ですか?」
「メールの本文にある、なっがいアルファベットの羅列のものです。
インターネット上にある俺らの作業場の住所、と思ってもらったらOKです。」
「なるほど。ではクリックしてみます」
画面が開かれる。左側には数名の名前が載っており、
その中には一ノ瀬姉弟や賀茂先生の名前もある。
画面中央には、数個の吹き出しの中にメッセージが乗っている。
「ここにメッセージが載っていますが、発信者の名前がこの吹き出しの上に表示されます。
自分の意見等を述べるときはここにメッセージを入力して、送信ボタンを押してください。
せっかくなので、練習がてら、メッセージを飛ばしてみましょうか」
晴明は
こんにちは
と入力して送信ボタンを押す。
すると、画面に
安倍清明
___________
|こんにちは |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
と表示され、すぐに小さく
既読 2
と吹き出しのそばに表示された。
「湊さん、既読というのは誰かが私のメッセージを読んだ、ということであっていますか?」
「そうです!あっていますよ!おそらく、ねーちゃんと賀茂先生だと思います。」
湊と晴明が確認しあっていると、画面に新規メッセージがピロン♪と効果音と同時に表記される。
一ノ瀬さや
_____________________________________
|せーめーさん、デジタルの世界へようこそ!|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
あまりの返信の速さに、晴明は思わず湊を見る。
湊はにっこりと笑う。
「驚きますよね、ここまで早いと。
このデジタルワークスペースだと、いつでもどこでもメッセージを確認することができるので、
自分のタイミングで作業に取り掛かることができます。
また、メールだったら、相手が限られるし、どうしても一方通行なやり取りになりがちなのですが、
この形式だと、ある程度会話のように進めることが可能です。
メールにはメールの良さがあるのですが、今後の作業のことを考えたら、このツールを取り入れるのはありだと思って。」
「……これは、すごく画期的なことですね」
晴明は驚きのあまり、言葉がなかなか出てこない。
そんな晴明のことを無視するかの如く、続いてメッセージが送られてくる。
賀茂忠行
_________________________________________________________
|チャットができているので、次はビデオ通話を試してみませんか? |
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「…湊さん、ビデオ通話とは何ですか?」
「そうですね、実際に体験してもらった方がいいと思うので、
早速ですがこの右上のこの印をクリックしてもらえますか?」
湊が指差したのは電話マークであるが、晴明はおそるおそるそれをクリックする。
すると、画面が切り替わり、二分割された映像が表示された。
片側には晴明や湊が映っている。
「…!?どうして私がここにいるのですか!?」
晴明は反射的に後ろにサッと動く。
すると、画面上の晴明もそれを真似する。
「せーめーさん、これはですね、ノートパソコンにあるこのカメラで撮影されているんですよ」
「…鏡ではなく?」
「はい、鏡ではありません。
これの原理、話しし出したらそれこそ大変なので、
こういうのがあるんだ、で今は頑張って受け入れてください。
あ、賀茂先生たちも応答しましたね」
画面には賀茂先生とさやが映っており、賀茂先生が手を振りながら話し始める。
『安倍さん、デジタルワークスペースデビューおめでとう!
あのさ、安倍さんの肩と頭、光の塊があるんだけど、西日か何かかい?』
「えっと、部屋は東向きなので西日は入らないんですが…」
『そうなのですか?でも、光っているんだよね』
湊が気づく。
「せーめーさん!神様たちじゃないですか?」
「え、俺らのせい?」
「デジタルにも認識されぬとは…」
白虎と太陰が渋々晴明から降りる。
『うん、光の塊がなくなりましたね』
「神様はデジタルでは光の塊という認識なのかもですね〜」
湊が感心する。
白虎は床に寝転がり、太陰は腕を組んで座布団代わりの本の上に腰掛けながら拗ねている。
「お二方、もしかしたら、人型になったら映るかもしれません」
晴明がそういうと、二人の表情はパアッと明るくなり、一瞬にして人型になる。
そしてカメラの前に立つ。
『あれ、そちらの方々、いらっしゃいましたか?初めまして、賀茂です。
あと、そのお二人だけ異常に発光しているのは仕様ですか?』
「え?そんなの出していないぞ?」
「わしも普通にしているだけなんじゃがな…」
白虎と太陰は自分の周りを確認している。
そんな二人を尻目に、晴明が賀茂先生に話しかける。
「こちらのお二人は、私の式神様です。
私には発光しているようには見えないのですが、
先生には二人から後光が出ているように見える、ということでしょうか?」
『そうだね、その例えがあっているかも。
あ、スクリーンショットを送るんで、そのデータを見てもらえますか?』
ピロン♪とともにチャット画面には賀茂先生から送られたスクリーンショットが表示される。
晴明、湊は何ともないが、白虎の後ろから青白い光が、太陰の後ろからラベンダー色の光がそれぞれ溢れ出ている。
『ちょっといいですか?』
賀茂先生の横にいたさやが発言する。
『多分なのですが、デジタルはそのまま情報を拾うので、
神様オーラをきちっと観測されたんじゃないかなと思うんですが、どうでしょう?』
どうやら、神様は完全に人間になりきれないみたいだ。
デジタルワークスペースは大学で採用されているツールです。
そのため、せーめーさんの表示名は大学登録名の「安倍清明」になっています。




