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せーめーさん、大学へ行く 〜神界から派遣されたら、大学が“現代陰陽寮”すぎました〜  作者: 水無月あすか
第二章

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Ep.29 せーめーさんのやりたいこと(その2)

耳提面命、右往左往


「もう1つの話はですね…」

晴明は少し打ち明けにくそうな様子だったが、

賀茂先生は晴明が話をするのをゆっくりと待つ。

晴明は一呼吸おいて打ち明ける。

「千年前、私はこの京の街に結界を張りました。

現在もその結界は健在で、千年前と変わりありません。

しかしながら、先日、その結界を通り抜ける無数の光が観測されました。」

「無数の光?街灯の光や照明の灯りといったものではなく?」

賀茂先生の問いに晴明は首を振る。

「夜の道を照らしたり、家の中を明るくしたりするような光とは種類の違う光でした。

なんかこう、あたりを照らすというより、光の直線という方がしっくりきます」

「光の直線?あ、こんな感じ?」

賀茂先生は戸棚から棒のようなものを取り出しスイッチを押すと、緑色の光線が出た。

晴明は驚く。

「そうです!このような光でした!

ただ、光の強さや大きさは桁違いではありましたが。

先生、その機械は一体なんでしょうか?」

「これはレーザーポインターといいまして、

表などを使いながら説明をするときに使う道具です。

人に光を向けないようにしてもらったら、スイッチを押してもらってもいいですよ」

賀茂先生は晴明にレーザーポインターを渡す。


興味深そうにレーザーポインターを眺めている晴明だが、ハッと気づく。

「先生。これは光を生み出す場所、いわゆる、光源があります。

ただ、私が京の街に出入りしていた光は、どこに光源があるかわかりませんでした。

と、考えると、私が見たものは単なる光では無い可能性がある、ということです。

そこで、先生にご相談というのは」

晴明は真っ直ぐに賀茂先生を見る。

「京の街に不可解なことが起こっていることが分かった以上、

陰陽師として、その問題を解決する責務が私にはあります。

しかしながら、その原因を調査するのに、今の私には知識が無さすぎます。

したがって、現代のことを学ぶ必要があるのですが、

この身ひとつで学ぶには時間がかかりすぎるという問題がありまして。

私が妖術を使うことはよく無いことだと思いますが、

学ぶ時だけ分身の術を使わせていただくことはいけないことでしょうか?」


賀茂先生は目をぱちぱちさせると、そばにあるホワイトボードのそばに立つ。

キュポンとホワイトボードマーカーの蓋を外すと、晴明に問いかける。

「安倍さんは、陰陽師として、謎の光線の調査を行うということだね?」

「はい」

「そのために、千年の間に起こった内容などを学ぶ必要がある、ということかな?」

「はい」

「だから、少しでも早く原因を突き止めるために、分身の術を使いたい、と?」

「そうです」

なるほど、と呟き、賀茂先生はメモした内容をじーっと見て考える。

チッ、チッ、チッ、と、研究室の掛け時計の秒針の音が響く。

晴明にとって、この沈黙の時間が途方もなく長く感じた。



「…うん、やはり、そうだよね」

賀茂先生はうんうんと頷きながら、晴明を見る。

「安倍さん。英語であるんだけどね。

One for All, All for One. という格言、知っていますか?」

「和訳したら、一人はみんなのために、みんなは一人のために、ですよね?」

「そうですそうです。」

賀茂先生はコーヒーを一口啜る。

「でね。よくわからない光線の正体を調査するといった、

陰陽師としての役割をするという大義名分に対しては

しっかりと遂行すべきだと思うんだ。だけどね」

ケーキを一口食べ、飲み込んでから賀茂先生は続ける。

「それだと、君だけ大変じゃないか。

もっと周りを巻き込んでもいいんじゃ無いかな?」

「周りを、ですか?」

「うん、周りをね」

賀茂先生はケーキの上にのっているいちごをフォークで突き刺す。

「君はもしかしたら、

周りに危険なことをさせることはできないとか、

巻き込まないようにとか、色々考えてくれているのかもしれない。

でもね。

知識の共有といった学術の内容は、どう考えても危険じゃ無いんだよね。

だからさ。周りの人やもの、施設を上手に使ってさ、

一人で抱え込まないようにした方がいいんじゃない?」

晴明は黙って聞いている。賀茂先生はいちごを一口で食べる。

「思慮深い君だから、おそらく背負い込んでしまったのかもしれないね。

でもね、ここは大学だ。一人で背負う必要はないのだよ。

分担できるものは分担したらいいんだ。

本当に危険なこと、たとえば、神々の戦いとか、そういうのはね、

巻き込まないようにして欲しいんだけどね」

賀茂先生はひとしきり発言した後、あれ?と不思議な気持ちになる。

「…僕さ、安倍くんと会ってまだ二日目なのにさ、

なんで君のことをさも知っているような発言したんだろ?

今まで出会ったことないよね?」

賀茂先生は晴明に確認するが、晴明はどこか懐かしそうな表情になる。

「…確かに、現世ではまだ二日目ですね。先生とお会いして。

先生のお話をまとめると、一人で背負い込むのではなく、

分担して学ぶのがいいのではないか?というご提案、ですよね?」

晴明のまとめに賀茂先生はうんうんと頷く。

「そうそう。僕はそれが言いたかったんだ!…実際、どうかな?」

「そうですね、その考え、いいと思います」

晴明の回答に賀茂先生はほっと胸を撫で下ろす。

「では、研究会の子たちに色々聞いてみるの?」

賀茂先生の質問に晴明はにこやかに返答する。

「研究会の皆様だけでなく、式神様たちにも協力してもらって、

見聞を広めていこうと思います」

「そうだね、それがい…、ん?安倍くん?

君、なんて言った?式神、様?」

「はい、式神様にも協力してもらったら、だいぶ調査が捗るかと」

「…安倍くん」

「何でしょう?」

「後日、式神様を交えて、面談しよっか」

賀茂先生の悩みは尽きないのだった。

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