Ep.24 現代機器と神の融合
天地開闢、神宿機器
「…ふむ、”術式展開”とは比喩で、スマホの設定のことを指しておったんじゃな。
とんだはやとちりをしたもんじゃわい」
太陰は愉快そうにカラカラと笑う。
「で、坊のスマホとやらはどれじゃ?」
持ち主の晴明よりも太陰の方が興味津々である。
いや、晴明も表面には出さないだけで、太陰に負けず劣らず興味はある。
さやが段ボールの中からスマホを取り出す。
「これですね。
今はWi-Fiを繋いでおけばなんとかなるので、
また電話などの細々としたものは後々したらいいかな」
「「わい、ふぁい?で、んわ??」」
「あ、これは説明するよりも実際に体験した方が早いです。
一つずつやっていきましょうね」
習うより慣れろ。この格言はこういう時のためにある言葉である。
昨日のうちにスマホとパソコンの充電を完了させていたので、
早速電源を入れようとすると、さやはふと思う。
『これ、せーめーさんがやった方がいいんじゃない?
せーめーさんの勉強になるはず』
そう考え、晴明を見る。
「せっかくなので、せーめーさんが実際に操作してみましょう!」
「えぇ、ぜひ」
そう言って晴明は、さやからスマホを受け取る。
「思ったよりもずっしりと重い感じがします。木の板くらいの重さかと思っていました」
さやはふふっと笑いながら、スマホの側面の突起を指差す。
「それでは始めましょう。このボタンを長押し、大体3秒くらいですかね。
押してみてください。」
晴明が指示に従うと、それまで暗かった画面にリンゴのマークが出てくる。
「晴明、紋様が浮かび上がっておるぞい」
「そうですね、太陰様。不思議ですね」
面白がる二人の様子を見ながら、さやはさくさくと説明を進める。
「では、次に表示させる言語を選んでください。
画面を指でスクロール、上下になぞって動かすと、色々見れますよ」
「言語、ですか?確かに、いろんな言語名が書かれています。」
ゆっくりと、少しおそるおそるな様子で晴明が画面をスクロールする。
すると、ひょっこりと太陰が顔をのぞかせる。
「坊、フランス語なんかどうじゃ?」
「…フランス語はまだ学んだことはありませんので、ここはやはり日本語にします」
「なんじゃ〜、つれないのぅ。わしが横で訳してやるのに。」
「…ずっと召喚しているの、何気に体力いるんですよ」
「いいではないか〜」
晴明なりの遠回しの拒絶をしているように見えるが、太陰はカラカラと笑う。
さやの的確な説明や指示のもと、晴明のスマホは無事にセットアップができた。
「ひとまず、スマホ本体はこれで使えるようになりました」
「次にですね…」
さやが説明を続けようとした、その時だった。
「この中に知識の書庫があるのじゃな?失礼するぞい?」
太陰が光の粉になったかと思うと、スッと晴明のスマホに入っていった。
「「!?!?」」
晴明とさやが絶句していると、スマホの画面からにょきんと太陰の頭が出てきた。
「のう、書庫はどこにもないではないか〜」
頬を膨らませた太陰は文句をいうと、さやは気を取り直して説明する。
「えっと、今のスマホは外の世界と繋がっていないので、多分すっからかんだと思います。
今からWi-Fiを繋いで、外のデータバンク…情報の保管庫を見れるようにしますね」
「あれま。またはやとちりしてしまった。
こんなオババだが、許してくれな?」
そう言ってスマホの中に再び入っていく。
「…さやさん、ちょっと自由奔放で申し訳ないです。彼女は知識に貪欲でして…」
「いえいえ、悪気があってのことではないというのはわかっていますので、大丈夫ですよ。
では、太陰様を待たせてはいけませんので、Wi-Fiを繋げましょうか。ここをこうして…」
さやにやり方を教えてもらい、晴明はWi-Fiを繋げた。
すると、スマホから歓声が上がった。
「坊や、坊!いろんな情報が来ておるぞ!
なんじゃこれぇ!?」
晴明は机にスマホを置くが、スマホが小刻みに震えている。
「…さやさん、スマホはこのように震えるものなのですか?」
「いいえ、私のスマホはそんなことは起こらないですね」
そう言いながらさやは自分のスマホを置く。
さやのスマホは静止しているのに対し、
晴明のは5センチほど机の上を行ったり来たりするような揺れかたをしている。
「…おそらく、中で太陰様が暴れているのかと思います。私のスマホ、壊れませんかね?」
「さぁ…私も、神様が入り込むという現象は初めて見ましたから…」
二人が呆気に取られていると、太陰がヒョコっと顔だけ画面より出してきた。
「いやぁ、いろんなものが満ち溢れておるな!これは愉快じゃわい。
まぁ、玉石混合といったところじゃが、色々見てみるのは価値があるのう」
太陰はニヤッと笑う。
「坊、しばらくの間、わし、ここにおるわ」
「…はい?ここにいらっしゃる?」
太陰は満足そうに頷く。
「そうじゃ。わしを召喚し続けるのはどうしても坊の力を依代にしておるから
お主の体力や霊力を使ってしまっておるんじゃが、このスマホの中に入っておけば、
坊の体力をそんなに使わせておらんじゃろ?」
「そう言われてみれば、そうですね。…あ、もしかして!?」
晴明はあることに気づく。
「私が先ほど、紙の人型の依代で一時的な式神を召喚しようとしていたのですが、
それと同じ原理がスマホで働いている、ということでしょうか?」
太陰はうんうんと頷く。
「実態として存在を作ることが一番体力を消耗させるが、それをしなくて良くなっておるからの。
ということで、わし、少しの間ここにおるわ。
では、しばしの間、わしはねっとの世界を旅してくるぞい」
そう言ってスマホの中にスッと入っていった。
こうして晴明は、しゃべるスマホを手に入れたのだった。




