Ep.22 準備は入念に
多謀多算、足音跫然
翌日、晴明は部室に入ると、すでに一ノ瀬姉弟が来ていた。
「おはようございます。」
晴明が声をかけると、
「「おはようございます、せーめーさん」」
と、声を揃えて応える。
「吉田さんの件、お疲れ様でした。
ねーちゃんから聞きましたよ。結構大変だったんですって?」
湊が話を切り出す。
「まぁ、私はおそらくお二人が思っているところと違う部分で大変でした。」
「というと?」
湊が晴明の発言の意図を問うと、晴明は説明を始める。
「実は、一つ相談がありまして。
スマホはなんとなく板のようなものというのはわかるのですが、
会話に出てきた『SNS』や、
炎が実際に上がっているわけではない『炎上』といったものがよく分からなくてですね…」
「あ〜、確かに初見だとそうなりますよね。
平安の時代になかったものが話題の中心になると、
何が起こっているのか分からない、ということですね?」
湊の解釈に晴明は頷く。
「ですので、大学の講義が3日後に控えた今、
私がやらないといけないことがありまして。
思いつくのだけでも
①荷解き
②スマホ、パソコンを知る
③インターネット、SNSを知る
④シラバスを見てどの講義を受けるか決める
ですね。
スマホやインターネット関係はどうしたらいいのか分からないのと、
シラバスもインターネットで閲覧するようにとのことなので、
お二方、教えてもらってもいいですか?」
「いいですよ!ね、ねーちゃん?」
「えぇ、任せてください!」
双子は晴明の依頼を快諾した。
「そしたらさ、期間が短いから段取りよくしたいよね。
ねーちゃん、もうプラン立てているんじゃない?」
湊がさやに話をふると、さやはサムズアップする。
「もちろん!
こういうのは早めにやる方がいいからね!
プランの草案をスマホに送るから、湊、確認してくれる?」
そう言いながらさやはパソコンのエンターを押す。
ピロン♪
湊のスマホにデータが送られる。
「せーめーさん、スマートフォンはこんな感じで情報共有もすぐにできるんですよ」
湊はそう言いながら晴明に画面を見せる。
【せーめーさんのやることリスト】
①荷物の分別、運搬
服、教科書などは下宿先に運搬(これは帰り際に分担して持って帰ればOK)
②PC、スマホのセットアップ
③受講予定の授業登録(インターネット体験含む)
④インターネットやSNSでできることのレクチャー
★今日中に②〜④完了できるのが理想だが、せめて③まではやっておきたい
★焦りは禁物!
一通り読み終えた晴明はふむふむと頷く。
「なるほど。これだと、遣いに文を届けさせることも、
術式で飛ばすことも必要ないのですね。
…これ、現代の人が使える術式ということですか。
なるほどなるほど」
『…せーめーさんなりの解釈だから、術式とかそういうのに突っ込むのはやめておこう』
若干突っ込むことに疲れた湊は、心の中でそう呟いた。
「あ、私から提案なのですが。」
晴明がさやの提案を読んで話し始める。
「1番の運搬ですが、これ、私の術式で運搬するのはいかがですか?」
「術式、ですか?えっと…どうやって?」
さやが尋ねると、晴明が懐から人型に形どられた和紙を取り出す。
「この依代を使って一時的に式神を召喚し、荷物を運んでもらうのです」
「あ、そのやり方、いいですね!
普通の現代の人の服装だったら大丈夫かと思います」
さやがうんうんと頷くので、晴明はでは、と構える。
その時、晴明の頭に強い思念が飛んできた。
『晴明!そんな式神を召喚するくらいなら俺を召喚しろ!
力しごと、やってやるから、現代のうまい飯を食わせろ!!』
血気盛んな大男のような勇ましい声が響く。
続いて、
『……坊、わしもついでに召喚しておくれ。
スマホとやら、知りたいわい』
と、昨夜も聞いた老婆の声が続く。
晴明は苦笑いを浮かべ、依代を懐へしまう。
「さやさん、湊さん。
…すみません。
どうやら二柱ほど、こちらへ来る気満々のようでして。
召喚してもよろしいですか?」
さやと湊は顔を見合わせ、
「は、はい。私たちは大丈夫ですが…
なんか大変そうですね」
さやからの気遣いに晴明は力なく笑って返した。




