Ep.2 ジャージ姿の安倍晴明、ついに大学デビュー
邂逅遭遇、興味津々
大学1年生にとって、念願の大学・学部に入学し、
憧れのキャンパスライフに心躍る季節。
それと同時に、大学とは様々な人種・思考・学術が混ざり合う
カオスな場所であることも知ることになる。
理学部物理学科で講師を務める賀茂は、
ガイダンス教室へ向かいながら、
先ほど学長に告げられた言葉を思い返していた。
「今年の理学部物理学科には特例で入学した人物がいる」
「スポーツや一芸といった、そういう特例ではない」
「非科学的ではあるが、安倍晴明が今年、入学している」
平安時代にいたとされる安倍晴明、本人ということらしい。
「理解し難いかと思うが、賀茂君。よろしく頼んだよ」
学長曰く、フォローする学生がいるので心配はない、ということだったが、
はてさて、どんな人間か……。
いや、人間ではないのか。
神界から派遣された、
とも学長が淡々と告げていたが、
意味がわからない。
学長がなぜそこで冷静なのかも疑問ではある。
ただ、そこは物理学を極めた研究者でもある賀茂である。
目の前にあることをまずは観測し、そこから考えれば良い。
そう結論づけ、教室の扉を開いた。
……いた。安倍晴明と思しき人物が、本当にいた。
教壇の正面の席に、凛とした姿勢で座っている。
……なぜジャージを着ているか謎である。
ミスマッチにも程がある。
だが、なぜか妙に似合っていた。
その隣に見知った顔がいたので賀茂は声をかける。
「一ノ瀬。お前、2年だろ?なんで1年のガイダンスに来ているんだ?」
一ノ瀬と呼ばれた男子学生は賀茂にニコッと笑う。
「せーめーさんのフォローをした方がいいって
ねーちゃんに言われたんで、そうだなと思ってきました」
学長が言っていたフォローする学生とは、
一ノ瀬湊のことだったか。
一ノ瀬だったら大丈夫か。賀茂は少し安心した。
そして手に持った資料を教卓に置き、教室にいる新入生に向けて話を始める。
「新入生の皆さん。こんにちは。
そして、京都総合大学 理学部 物理学科へようこそ。
これからガイダンスを始めたく思います。
担当いたしますのは私、賀茂忠行です。
どうぞよろしく」
「それでは、資料を配布しますので——」
賀茂が話し始めた、その時だった。
「……なるほど。」
ぽつり、と。
教室の最前列で、安倍晴明が静かに呟く。
「“履修登録”とは、現代における術式構築なのですね。」
「違います。」
間髪入れず、隣の湊がツッコんだ。
こうして、理学部物理学科のガイダンスが始まった。
【今回の登場人物】
安倍晴明
・みんなから「せーめーさん」と呼ばれる。
・理学部物理学科1年。
・神界から派遣されたが、なぜか大学生になってしまった陰陽師。
一ノ瀬 湊
・理学部物理学科2年。
・面倒見が良く、ノリも軽い理系男子。
一ノ瀬 さや
・情報学部2年。
・湊の双子の姉。
・服装センスは壊滅的。
賀茂 忠行
・理学部物理学科の講師。
・まずは観測してから考えるタイプ。




