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せーめーさん、大学へ行く 〜神界から派遣されたら、大学が“現代陰陽寮”すぎました〜  作者: 水無月あすか
第一章 せーめーさん、大学デビュー

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Ep.1 平安装束は通学服に含まれますか?

はじめまして、水無月あすかです。


『せーめーさん、大学へ行く』

〜神界から派遣されたら、大学が“現代陰陽寮”すぎました〜


を読んでいただきありがとうございます。


この作品は、

「もし安倍晴明が現代日本、それも大学に来たら?」

という妄想から始まった、

現代陰陽学×大学生活×情報社会なお話です。


AI、SNS、情報学、研究室、学食、履修登録。

現代社会を、

陰陽師視点でゆるく観測していきます。


深夜の研究室雑談みたいな空気を楽しんでもらえたら嬉しいです。

古今東西、老若男女。


様々な人と知識と情熱が集まる場所―大学。


京都のとある山際に存在する《京都総合大学》もまた、

例に漏れず変人の巣窟であった。


そのクラブセンターの片隅。


古びたプレートに、

小さくこう書かれた部屋がある。


【ゴーイングマイウェイ研究会】


……名前からして、既に怪しい。


ガラリ、と扉が開く。


「せーめーさん! その服なんなん!?」


部屋へ響いたのは、

赤茶けたショートボブの女子学生の叫びだった。


“せーめーさん”と呼ばれた男は、

ゆっくりと女子学生へ目を向けた。


「いぶきさん。

学問を修める場へ赴くのですから、

それ相応の装いをするのは当然では?」


「だからって何時代なんよ!?」


実際、

男の格好は異様だった。


雛人形のお内裏様が着ているような、

平安貴族の装束。


ゆったりとした狩衣に、

手には細長い尺まで持っている。


どう見ても、

令和の大学へ通う服装ではない。


「いやまあ、

大学って変な格好の人おるし、

多少なら誰も気にせんけどさぁ……」


いぶきは腕を組みながら、

まじまじと男を見つめた。


「せーめーさん顔良いから、

その格好でも成立しかけてるのが腹立つんよな……。

でも悪目立ちはすると思う。」


そう言って、

部屋の奥へ視線を向ける。


「だよね? さや。」


“さや”と呼ばれた眼鏡の女子学生が、

ノートPCから顔を上げた。


「珍しく、いぶきさんと意見が一致しました。」


彼女は静かに、

机の横へ置いていた紙袋を持ち上げる。


「なので、現代大学環境用に服を選定してみました。」


PC画面に映し出されていたのは、

白いシャツに黒のジャケットを合わせた、

シンプルなコーディネートだった。


「これこれ!

大学デビューなら、

まずはこの辺からでしょ!」


いぶきが食い気味に言う。


しかし、

当の本人はどうにも納得がいっていない様子だった。


「……なんと言いますか。」


男は眉を寄せる。


「身をやつしたような。」


「え?」


「趣がありません。」


「色も少ない。」


「布の重なりも浅い。」


「身分も思想も読めません。」


次から次へとダメ出しが淡々と男の口から出てくる


「ちょっ!!服に思想求める!?」

いぶきはすでに困惑しており目をぱちくりさせている。


それをみてさやは肩をすくめる。


「現代服は“情報量を減らす”方向へ進化してるんです。

今は“悪目立ちしないこと”にも価値があるので。」


男はふむ、と考える。


「……隠形術ですか。」


「なんか違うような、あってるような、、、」


いぶきが微妙な顔をした、その時だった。


部室のドアが、

キィ、と音を立てて開く。


「姉さ〜ん、って、え?」


入ってきた短髪の男子学生が、

部屋の中央で固まった。


「せーめーさん、

さすがにエグいっすよ。

ヤバいっすね。」


まじまじと男を見ながら、

しかしどこか楽しそうに言う。


「湊。」


さやが弟の名前を呼ぶ。


「平安装束ではなく、

こちらの服装を提案しているのですが、

あまり響いていないようで。」


PC画面を見せられた湊は、

「ふーん」と軽く唸り、

しばらく考え込んだ。


やがて何か思いついたのか、

さやのPCを勝手に操作し始める。


「せーめーさん、

こういうのは?」


湊が画面に映したのは、

膝丈ほどあるロングカーディガンだった。


一見すると濃紺のシンプルなデザイン。


だがよく見ると、

同色の糸で草花の刺繍が細かく施されている。


「…………」


「…………」


沈黙。


やがて男が、

静かに口を開いた。


「……まあ、

及第点ですかね。」


湊は小さくガッツポーズをした。


「そしたらですね。」


さやが静かに続ける。


「この服、

取り寄せになるので、

届くまで二、三日ほどかかります。」


「なので、せーめーさん。

それまではこちらを着用してください。」


そう言って差し出されたのは――


絶妙にダサいジャージだった。


「ねーさん、

相変わらずセンスねぇな……」


湊が頭を抱える。


しかし当の本人はというと、


「ほう。」


特に気にした様子もなく、

普通に袖を通していた。


「動きやすいですね。」


「せーめーさん、

そこ評価ポイントなん!?」


いぶきが思わずツッコんだ。

※せーめーさんは、

この後ちゃんとジャージで大学へ行きます。

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