Ep.14 せーめーさん、酸味の洗礼を受ける
デカ盛りのお店に来た晴明たち。
桐生のオススメの丼が晴明の前に運ばれてきた。
未知未踏、転禍為福
ゴトン
「お待たせいたしました〜。鶏塩レモン丼です〜」
店員のおねーさんが晴明の前に丼を置いた。
晴明はしげしげと丼を見つめる。
「…なんと。半月が丼にいるとは!」
嬉々としている晴明の隣で桐生は笑みを浮かべつつ首を傾ける。
「半月とは、レモンのことか?
…だとしたら、鶏のもも肉を焼いたのは、
早朝に浮かぶ白い雲といったところか?」
「おぉ、それはなんと雅な表現!
それがこの器1つで表現できるとは…
現代、恐るべきです」
晴明は感心しつつ、少々困った顔をする。
「…桐生殿。私、これを食べ切れる気がいたしません」
「ややっ!?せーめーさんは少食だったのか?」
桐生は驚いたが、晴明が困るのも無理はない。
このお店のミニサイズは、ご飯だけでもお茶碗大盛り二杯分ある。
当然、その上には相応の具材が乗る。
しかしそこは用意周到な桐生である。
「もしせーめーさんが構わないならば、
俺がせーめーさんの分を少し取りましょうか?」
「えぇ?よろしいのですか?」
戸惑う晴明に桐生はにっこりと笑う。
「大丈夫です。俺は普通サイズを頼んだので、まだ余裕で入ります」
注意するが、桐生のいう普通サイズの丼はご飯がお茶碗三杯分ある。
種類は晴明と同じ、鶏塩レモン丼である。
「では、このくらいを取っていただいてもよろしいでしょうか?」
「承知した!」
桐生は手慣れた様子で晴明の丼から自分の丼へ移した。
「……結構減りましたけど、本当に大丈夫ですか?」
三分の二の量になった丼を渡しながら、桐生は少し心配そうに尋ねた。
「いえいえ、これでも十分なくらい量がありますよ。
…さて、早速いただきますね」
そう言うと晴明は迷うことなく半月へ箸を伸ばした。
「「「あ、それは!」」」
その様子を見ていたメンバーが声を揃える。
「「「食べちゃダメ!!」」」
注意したのも後の祭り。
晴明は無言で口元を抑え、涙目になりながら桐生を見る。
「これは…食事でも修行をせよ、ということでしょうか?」
桐生は慌ててペーパーナプキンを渡す。
「すまない、せーめーさん。
その半月の正体を伝えるのを忘れていた!
…ひとまず、これに口のものを出した方がいいかもしれない」
「ありがとうございます」
晴明はそう言ってペーパーナプキンを受け取る。
「…この半月の正体は、なんでしょうか?」
晴明がシワシワな顔をしながらか細い声で問う。
桐生は申し訳なさそうに次は白湯を差し出す。
「ひとまず口の中がイガイガすると思うので、これを飲んでください。
…この半月は、レモン、という果物です」
「レモン?そういえば、先ほどの給仕の女性もそう言っていた気がします」
桐生は頷く。
「レモンを単体で食べると、経験された通り、とてつもなく酸っぱいのです。
ですが、このレモンを絞った汁をふりかけて食べると、
爽やかな酸味が効いて美味しいのです」
晴明は白湯を飲んで少し落ち着いたのか、普段通りの顔に戻っている。
「…なるほど。薬膳のような考え方でしょうか。」
「では、改めて食してみます」
晴明は一瞬躊躇ったものの、意を決したように一口食べてみる。
すると、先ほどのシワシワの顔ではなく、パアッと明るい表情を浮かべる。
「…なんと!レモンの汁でこんなに風味が豊かになるのですか!?
単体だと酸味と苦味だけのものだったのに。
これは、箸が進みますね」
そう言いながら晴明はパクパク食べ始める。
「よかった…では、俺も食べよう」
桐生はほっとした様子で、自分も食べ始める。
晴明の周りにいた他のメンバーも、止まっていた箸を再び動かし始めた。




