Ep.13 せーめーさん、任せてみる
初体験記、安分守己
暮れ泥む頃。
晴明たちは桐生に案内され、
クラブセンターから程近い場所にある店へとやって来た。
店の看板には、大きく『ジュージュー』と書かれている。
店先からは焼き鳥や鉄板焼きの香ばしい匂いが漂っており、
夕食時ということもあって店内は賑わっていた。
学生が利用しやすいようにとの配慮だろうか、
店内にはテーブル席だけでなく、
カウンター席や座敷席も用意されている。
今回は九人という大所帯であるため、
机をいくつか繋げた座敷席へ案内された。
メニューには、
・唐揚げ丼
・牛丼
・キムから丼
・スタミナ丼
(唐揚げ、焼肉、キムチ、卵焼き入り)
・唐揚げ定食
・生姜焼き定食
・焼きそば
・たこ焼き
・お好み焼き
など、学生が好みそうな揚げ物や鉄板料理がずらりと並んでいる。
だが。
晴明の目を引いたのは、料理の写真ではなかった。
メニュー上部に大きく書かれた注意書きである。
『当店の普通サイズは他店の大盛りに該当します』
『気持ちよく完食していただくため、
ご自身が思うサイズより一段階下のサイズをご注文されることをおすすめします』
桐生が座席から立ち上がって話し始める。
「今日は俺の奢りだから、遠慮なく食べてくれよ!
ただし!
お残ししたらもったいないから、食べ切れるサイズを選ぶこと!
特にいぶき!」
「え!?私!?」
いぶきはギョッとする。
桐生は頷く。
「君は前科があるからな!
定食サイズは妥当だったんだが、
単品を頼みすぎて結局他の人が食べることになってしまったからな!」
「…は〜い、気をつけます〜(だって、食べたかったんだもん)」
「わかっているならOKだ!
さて、各々注文してもらっていいからな!」
「は〜い!」
元気よく返事をすると、
晴明と桐生を除く面々は
メニューを見ながら注文を吟味し始めた。
「では、せーめーさん。
こういう現代の食べ物は初めてかもしれないが、
苦手なものはないか?」
桐生は隣に座っている晴明に話しかける。
「なければ、俺のオススメがあるのだ!」
晴明は、ほう?となるが、ニヤリと口角を上げる。
「…では、オススメをお願い致します。」
「承知した!すいません、オーダーをお願いします!」
桐生は店員を呼んだところで、
何かを思い出したように顔を上げた。
「あ」
そして勢いよく晴明の方を向く。
「すまん、せーめーさんがどれくらい食べられるか知らないから、
この店でいうミニサイズにさせていただくぞ。
まあ、他の店なら普通盛りくらいの量だからな。」
「たらなかったら、後で追加の単品を頼めばいいのだ!」
そう言いながら桐生は眩しい笑顔でサムズアップする。
「…楽しみにしております」
そう返事をしながら、
晴明は内心で首を傾げた。
『こういう人を、こみゅにけーしょんおばけ、というのでしょうか?』
桐生の勢いに押され気味ではある。
だが、それすらも晴明にとっては新鮮だった。
経験したことのない状況を、どこか楽しんでいる自分がいた。
5分も経たずに次々と食事が運ばれてくる。
「お待たせいたしました〜」
店員さんが晴明の前に
ゴトン
と丼を置いた。
さて、桐生先輩はせーめーさんに何を選んであげたのでしょうか?
ちなみに、こみゅにけーしょんお化け、の言葉は
いぶきが桐生について話すときに晴明に教えてあげました。
どういうことか晴明は説明を求めたのですが
「経験した方が早い」
と言われたのが背景にはあります。




