Ep.11 段ボール、オープン!!
多事多端、深謝厚情
「では、せーめーさん。
これはせーめーさん宛の荷物なんで、
せーめーさんが開けてみてください」
湊に促され、5つある段ボールのうちの1つを開けてみた。
「おお…!これは、なんとも色とりどりな…」
中に入っていたのは、現代で着られている洋服であった。
シンプルなデザインのシャツやパンツだけでなく、
プリントや刺繍が凝っているものもある。
晴明は興味深そうに1枚1枚見ていき、
一通り見終わった後で若干不満そうに感想を漏らす。
「…私が現役で来ていたような装束はありませんでした」
「いやいや、せーめーさん。
装束の裾とか長いものは実験の時に引っ掛けて危ないから!
だからないんだと思いますよ?」
「いや、そもそも何で平安装束を大学で着ようとしているんだよ!?」
晴明にツッコミを入れる湊に対し、
今度は蓮が呆れたように口を挟む。
2箱目を開けると、
そこにも服がぎっしりと詰められていた。
こちらはちょっと変わり種の服で、
浴衣、袴はまぁ、日本の衣装なのでなんとなく理解できるが、、、
「この衣装はなんでしょうか?」
晴明が衣装を湊と信長に見せると、二人は困惑する。
「なんでチャイナ服?」
「しかも、これ、女物だぞ?」
信長は晴明を見る。
「…せーめーさん、まさか、本当は、、、」
「ち、違います!私は正真正銘、男です!」
晴明はブンブンと首を振る。
「せーめーさん、神界で神様にからかわれたことあったりする?」
「…」
晴明が目線を逸らすので、二人は「なるほど」と察した。
((せーめーさん、女装しても似合いそうだもんな))
3箱目には、ノートパソコンやタブレット、スマホ、そして、
それ用のカバンやケースなどが詰められていた。
「おぉ、これが噂の、
皆さんが肌身離さず持っており、
紛失した瞬間、
人を情緒不安定に陥れるという、
いわば精神安定剤」
「せーめーさん、その表現、あっているけど
あまり外では言わない方がいいやつだよ!?」
湊があわあわしながら晴明をたしなめるのをよそに
いおりの追撃から生還したさやが帰ってきた。
「…ふう、いおり先輩をやっとまけた。
あら、スマホやPCじゃん!
せーめーさん、今度一緒にセットアップします?」
「…せっとあっぷ?」
「あ〜、えっと、術式展開!」
「!!」
術式展開と聞いて晴明は目を輝かせて何回も頷く。
「では、また明日にでも一緒にしましょ!
今日は充電しておいた方がいいかもなんで」
「よろしくお願いいたします。」
4箱目を開けると、大学で使用する書籍や、
ノート、シャーペンといった文房具類がきちんと詰められていた。
「…ふぁ!」
晴明は今までに聞いたことないような奇声をあげ、書籍に飛びつく。
「これはなんと!
現実の人やものが寸分違わぬくらい精密に描かれている!
しかも、鮮やかだ…」
晴明が書物をペラペラとめくっている横で、
「最新モデル、発見」
さやを追いかけていたいおりが晴明の文房具をみて物欲しそうにいじっている。
「いおり殿、私は筆で書くほうが多いかと思いますので、
欲しいのがありましたらお裾分けいたしますよ」
「晴明……!」
いおりが「いいの?」という顔で晴明を見た瞬間
パシっ
と神谷がいおりの頭を軽くチョップする。
「…危険人物、登場」
「何が危険人物だ?
ったく、せーめーさんに物をもらおうとするなよ。」
神谷といおりの会話を聞いて晴明は思わずククッと笑ってしまった。
5箱目には、電子レンジが入っていた。
電子レンジと一緒にメモが入っており、
【大学生活に電子レンジは必須!
って誰かが言っていたから
買ってあげた!】
と書かれていた。
「…誰かって、誰?」
「…さぁ?」
信長の問いに湊は首を横に振る。
晴明がふと思い出す。
「形状や色などは違いますが、
先週からお世話になっている宿に電子レンジ、というもの、あります」
「「え?」」
「せーめーさん、電子レンジ知っているの?」
「いやいや、それよりも、どこに住んでるの?
神界から通っているのとばっかり考えてた」
湊と信長が思い思いに質問する。
晴明は淡々と答える。
「下宿、というところで現代の大学生は生活をするという話になりまして。
ただ、完全に一人で生活するのは正直、難しいだろうということで、
貸主…大家さん、というんですかね。その方と一緒に暮らすことになりました。」
「電子レンジ、というものの使い方は大家さんから教えてもらいました。」
「今は、牛の乳を一人で温めることができます」
晴明は若干胸を張っている。
「おぉ、すごい!」
湊はパチパチと拍手する。
「ただですね」
晴明はうーんと考える。
「そうなると、このご好意でくださった電子レンジ、
正直不要になってしまうのです。
どなたか使いませんかね?」
すると、いぶきが話に割り込んでくる。
「じゃあさ、部室に置いたら?」
いぶきの一言で電子レンジの居場所が決まった。
メンバーがわいわいガヤガヤと話している時、
晴明はふと、
【晴明によろしくねん⭐︎】と書かれたメモを手に取る。
………
この紙からは念といったものが感じられない。
手紙とは、文字だけに意味を込めるのではなく、
紙の材質、色、言葉、時には花や香をつけるなど、
送り側の思いを散りばめるものだと考えていた。
今回、このようなものを送ってもらっているが、
「私が送りました」という主張をしないばかりか
その気配すら消している。
唯一、⭐︎をつけていることで、その人の茶目っ気が見てとれるくらい。
つまり、これは送り主の心意気なのだろう、と思う。
我のことは気にせず、まずは目の前の「今」を生きよ。
そういう思いなのかもしれない。
晴明はそう考えると、自然と笑みが溢れた。
せーめーさんの大家さんは、信仰心の厚い老夫婦です。




