エピローグ(1):車に揺られて
夜が明けきらぬ街を、歩いていた。
インフラの光が戻り、人の営みが息を吹き返す中、
春日、カナ、吉田の3人は、どこか満たされたような、しかし少し名残惜しそうな足取りで進んでいた。
「……なんか、終わったって感じしないな」
春日がぽつりと呟いた。
「それな」吉田が苦笑いし、
「まるでまだ続いてるみたい」とカナも肩をすくめた。
そんな時だった──
「……あれ、恭平……?」
車の窓から声がかかる。振り返ると、見覚えのあるファミリーカーが停まっていた。
後部座席から顔を出したのは、春日の妹だった。
「えっ、なんで!?」
「こっちのセリフだよ。何してたの……って、そっち誰!?」
家族にとっては、春日と一緒にいるカナと吉田は完全に初対面だった。
だが、その驚きよりも家族の関心を引いたのは、春日のスマホに貼り付くように佇む存在──
「それ、……噂のAIでしょ? トーコってやつ」
春日の母が助手席から目を丸くしている。
トーコは微かに反応しただけで、何も言わなかった。
──日付を越えた今、彼女の任務はすでに終了していた。
結局、「乗っていく?」という申し出に甘え、
3人は後部座席に詰め込まれ、ぎゅうぎゅう詰めの状態で車は再び走り出す。
「これだけいると、小旅行みたいだな……」
吉田がぼそっと呟いた。
「あんたらにちょうどいい話があるんだけど」
唐突に、カナが言った。
「……話?」
「カフェ、やろうと思ってる。貯金全部はたいて」
唐突な宣言に、車内の空気が一瞬凍る。
「ちょ、いきなりすぎじゃない? 店って……」
春日が目を見開く。
「だから言ってるのよ、今のうちに声かけとく。
あんたたち、ちゃんと働く意志あるでしょ?」
「え、面接とか──」
吉田が口にしかけたところで、カナは笑って言った。
「面接なら、今日一日かけて終わってるわよ」
──静かに、トーコが首を傾げる。
ー「今日一日……ずっと観察されてましたからね?」
やっと絞り出した言葉に、全員が笑った。
その後、キャンプに行っていた家族から道中の話を聞かされ、
「やっぱり準備は大事だ」と3人は口を揃えて言ったが──
ー「それ、今さら言いますか?」
と、トーコに軽くツッコまれてしまった。
車の中は、あたたかい笑いに包まれていた。




