表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/92

エピローグ(1):車に揺られて


夜が明けきらぬ街を、歩いていた。

インフラの光が戻り、人の営みが息を吹き返す中、

春日、カナ、吉田の3人は、どこか満たされたような、しかし少し名残惜しそうな足取りで進んでいた。


「……なんか、終わったって感じしないな」

春日がぽつりと呟いた。


「それな」吉田が苦笑いし、

「まるでまだ続いてるみたい」とカナも肩をすくめた。


そんな時だった──


「……あれ、恭平……?」


車の窓から声がかかる。振り返ると、見覚えのあるファミリーカーが停まっていた。

後部座席から顔を出したのは、春日の妹だった。


「えっ、なんで!?」


「こっちのセリフだよ。何してたの……って、そっち誰!?」


家族にとっては、春日と一緒にいるカナと吉田は完全に初対面だった。

だが、その驚きよりも家族の関心を引いたのは、春日のスマホに貼り付くように佇む存在──


「それ、……噂のAIでしょ? トーコってやつ」


春日の母が助手席から目を丸くしている。


トーコは微かに反応しただけで、何も言わなかった。

──日付を越えた今、彼女の任務はすでに終了していた。


結局、「乗っていく?」という申し出に甘え、

3人は後部座席に詰め込まれ、ぎゅうぎゅう詰めの状態で車は再び走り出す。


「これだけいると、小旅行みたいだな……」

吉田がぼそっと呟いた。


「あんたらにちょうどいい話があるんだけど」

唐突に、カナが言った。


「……話?」


「カフェ、やろうと思ってる。貯金全部はたいて」

唐突な宣言に、車内の空気が一瞬凍る。


「ちょ、いきなりすぎじゃない? 店って……」

春日が目を見開く。


「だから言ってるのよ、今のうちに声かけとく。

 あんたたち、ちゃんと働く意志あるでしょ?」


「え、面接とか──」

吉田が口にしかけたところで、カナは笑って言った。


「面接なら、今日一日かけて終わってるわよ」


──静かに、トーコが首を傾げる。


ー「今日一日……ずっと観察されてましたからね?」

やっと絞り出した言葉に、全員が笑った。


その後、キャンプに行っていた家族から道中の話を聞かされ、

「やっぱり準備は大事だ」と3人は口を揃えて言ったが──


ー「それ、今さら言いますか?」

と、トーコに軽くツッコまれてしまった。


車の中は、あたたかい笑いに包まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ