↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
57/92

第八章−5:「闇の中で進むべき道を」


あたりはすっかり暗くなり、信号機の赤や青が孤独に瞬いている。街灯もほとんど機能せず、コンビニや商店の光もない。月明かりと星の煌めきがかろうじて視界を確保させるなか、春日たちは立ち止まっていた。


「いやー……さすがに何も見えないと、不安になるねぇ」

吉田が、冗談とも本気ともつかぬ口調で言った。


「スマホもほぼ圏外。この闇、方向感覚なくすな」

春日は小さく首を回しながら呟く。 


「街灯が無いのは分かってたけど、ここまでとは思わなかった」

カナの声には、少しだけ疲れが滲んでいた。


それぞれが口にする不安に、トーコは口を挟まない。ただ、三人を見守るように一歩下がって佇んでいた。


春日がふとトーコを見やる。「……あのさ、どこか明るいとこ、知ってたりする?」


ー「違法行為または労働行為に該当する要素が含まれない限り、進路の決定に干渉する権限はありません」

トーコは表情一つ変えず、いつもどおりの口調で答えた。


「ほんと融通きかないんだから」

カナは呆れながらも笑った。笑いが生まれたことで、場の空気が少しだけ柔らかくなる。


沈黙が数十秒ほど流れたその時だった。

「――あれ、なんか、あっち光ってない?」

吉田が進行方向左手、丘の向こうを指差した。


遠くに、ぽつりと浮かぶ明かりがある。山間部にしては明るさがあり、数軒の灯りというよりは、もっと大きな施設のような輪郭。こんな非常時に点いているとなれば、単なる民家ではなさそうだ。


「行ってみよう」

春日が言った。


「いいね。何かあるかもしれないし、灯りがあるってだけで、救われる感じがするよ」

吉田も頷く。


「ちょっと、急ぎ足で行こうか。もし医療とかだったら、何かあったとき助けを求められるかもしれないし」

カナは言いながら、歩を進めた。


三人は会話の端々に希望を織り込みながら、ほのかな光を目指して歩き始める。その足取りに、不安は残るが、それ以上に「目的地がある」ことがもたらす安心感があった。


その背後で、トーコも静かに動き出す。何も語らず、何も促さず。ただ黙って、彼らの選択を記録し、寄り添うように。


目指す先に何があるのか、彼らはまだ知らない。ただ、暗闇の中にぽつんと浮かぶその灯りが、今の彼らには道標だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。