第七話 乾燥機でジャンプ?
秋も深まり、あらぎ島にも少しずつ肌寒さを感じるようになってきた。
田んぼでは、そろそろ稲刈りの時期を迎えようとしている。
この日もソーリュージャーたちは、田んぼの作業を手伝いながら、いつものように島の中をパトロールしていた。
「今年も、そろそろ稲刈りやな」
レッドが黄金色になりつつある稲を眺める。
そんな穏やかな午後だった。
ぽつ。
「ん?」
ぽつ、ぽつ。
空から落ちてきた雨粒に、ブルーが空を見上げた。
「雨……?」
次の瞬間。
ザァァァァァァァァァッ!
突然のゲリラ豪雨だった。
「うわぁぁぁ!」
「走れ!」
「早く戻るぞ!」
六匹は慌ててあぜ道を駆け出した。
しかし、逃げ切れるはずもない。
あっという間に雨は全身を濡らし、泥水まで跳ね上がる。
ようやく雨宿りできる場所までたどり着いた頃には、六匹とも見事なまでにびしょ濡れ、泥だらけになっていた。
「……ひどい目にあったな」
レッドが身体を見下ろす。
「泥までついとる」
ブルーもため息をつく。
ピンクは小さく身体を震わせた。
「……寒い」
一方、ホワイトだけは楽しそうだった。
「なんか、すごかったな!」
「お前だけや、楽しんでるの!」
レッドが突っ込む。
◆
やがて雨は上がった。
しかし、問題はそのあとだった。
「で……これ、どうする?」
「乾かんぞ、これ」
「タオルだけじゃ無理やろ」
六匹が途方に暮れていると、
ガラガラガラ……
何かを押す音が聞こえてきた。
振り向くと、柳生先生が大きな装置を押してこちらへやって来る。
「先生、それ何?」
「乾燥機だよ」
そこにあったのは、空港の検査ゲートのような形をした、大きな輪っか型の装置だった。
ただし、普通の扇風機のような羽根はどこにもない。
ゲートの内側から、どこからともなく風が吹き出している。
「羽根を使わずに風を送る仕組みなんだ」
柳生先生は、どこか満足そうに説明した。
「これなら、みんなの身体も乾くだろう」
六匹はゲートの前に並んだ。
柳生先生がスイッチを入れる。
その瞬間――
ゴォォォォォォォォォォ!!
「うわぁぁぁぁ!!」
最初に風を浴びたレッドが、短い腕をバタバタさせる。
尻尾も激しく振られ、身体がズズズ……と後ろへ押し戻されていく。
「先生! これ乾燥機ちゃう! 風や!」
「風を利用して乾燥させているんだ」
「強すぎるわ!!」
ブルーは何も言わず、必死に踏ん張っていた。
ただし、尻尾だけはものすごい勢いで振られている。
イエローも両足を踏ん張った。
「ちょっと! 前に進まれへん!」
グリーンは早々に風の届かないところへ逃げる。
「俺、タオルでええわ」
「まだ始まったばっかりやぞ!」
ホワイトは逆に大喜びだった。
「おお! これ、おもしろい!」
風に向かって、何度も近づいていく。
「ホワイト、遊ぶな!」
ピンクは風圧に耐えながら、自分の身体を確認した。
「……もう乾いた?」
ケロ助が答える。
「まだやで」
「……そう」
ゴォォォォォォォォォォ!!
「やっぱり強すぎるってーー!」
六匹の文句が飛び交う中、ホワイトはふと、巨大なゲートの中を覗き込んだ。
「なあ……」
「なんや?」
「これ、中に入ったらどうなるんや?」
「知らん」
「入るなよ」
「やめといたほうがええで」
みんなが口々に止める。
しかし、ホワイトは目を輝かせた。
「ちょっとだけ!」
「おい、ホワイト!」
ホワイトがゲートの中へ一歩踏み込んだ。
その瞬間――
パッ。
ホワイトの姿が消えた。
「…………」
全員が固まった。
「ホワイト?」
返事はない。
その頃――
ドサッ!
「なんじゃ、お前。どっから来たんや」
突然、目の前に現れたホワイトを見て、蒼龍が目を丸くした。
ホワイトも周囲を見回す。
「……ここ、どこ?」
「わしの家や」
「えっ?」
蒼龍は、ホワイトが現れた場所を見つめた。
「わしの家に、いきなり空間が開いたと思ったら……お前が飛び込んできたんじゃ」
「空間が?」
「そうじゃ」
ホワイトは後ろを振り返った。
そこには、さっきまで自分がいた乾燥ゲートにつながる、奇妙な空間が開いている。
「……あれ?」
二人で、その向こう側を覗き込む。
すると、向こう側には、驚いた顔でこちらを見ているソーリュージャーたちとケロ助がいた。
「蒼龍さんや!」
「蒼龍さんがおる!」
「なんで蒼龍さんのところに!?」
蒼龍はしばらくゲートを眺めたあと、ため息をついた。
「……また柳生か」
「え?」
柳生先生が困ったように眼鏡を押し上げる。
「……どうやら、乾燥機に少々特殊な機能が付いていたようだね」
「特殊すぎるやろ!」
レッドが叫んだ。
結局、六匹は蒼龍の家へ集まることになった。
びしょ濡れの身体を見た蒼龍が、家にあった大きなタオルを取り出す。
「ほれ。これで拭け」
六匹はそれぞれタオルを受け取った。
身体を拭いていく。
ゴシゴシ。
ゴシゴシ。
やがて、みんなの身体から水気がなくなっていった。
グリーンがタオルを手に、得意げに言った。
「……ほらな」
レッドが顔を上げる。
「何がや?」
「タオルでええ言うたやろ」
みんなが顔を見合わせる。
そしてレッドが一言。
「……やっぱりタオルが一番やな」
ケロ助も頷いた。
「ほんまやな」
柳生先生は、少し離れたところで自分の乾燥機を眺めていた。
「……もう少し改良が必要だな」
「もう作らんでええ!」
六匹の声が、蒼龍の家に響いた。
今回も、あらぎ島で起こった小さな事件のお話です。
雨に降られたら、濡れる。
濡れたら、乾かしたくなる。
……ただそれだけのはずやったんですけどね(笑)
ソーリュージャーたちの日常は、今日もなんとなく平和です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!




