第五話 唐揚げ屋アポロ、オープン!
あらぎ島の近くに、新しい唐揚げ屋さんがオープンした。
その名も――
「アポロ」
オープン初日。
朝からお店の前には、いい匂いが漂っていた。
「うわぁ……」
ピンクが鼻をひくひくさせる。
「めっちゃええ匂い……」
黄色も店の方を見る。
「唐揚げや……」
レッドは腕を組んだ。
「これは……応援せなあかんな」
ブルーが振り返る。
「なんで?」
「新しい店やからや!」
「理由になってへんけど……」
そこへ、お店の人が出てきた。
「あっ、ソーリュージャー! ちょうどよかった!」
「ん?」
「今日オープンで忙しいから、ちょっと手伝ってくれへん?」
六人の目が輝いた。
「任せてください!」
レッドが胸を張った。
まずは店の前の掃除。
レッドがほうきを持つ。
しかし――
ガシャン!
ほうきが恐竜の短い腕から落ちた。
「……」
ブルーが無言で拾う。
「普通に持てへんのか」
「持てるわ!」
レッドがもう一度ほうきを持つ。
今度は、ちゃんと掃除ができた。
その横では、グリーンとホワイトがテーブルを拭いている。
ピンクと黄色は、お客さんにメニューを渡す係だ。
ケロ助もピンクの肩から顔を出して、
「ケロッ!」
と愛想を振りまいている。
「かわいい~!」
お客さんが笑う。
ケロ助は得意げだ。
しばらくすると、お客さんがどんどん増えてきた。
「唐揚げ五個!」
「こっちは十個!」
「お弁当ひとつ!」
店の中は大忙し。
レッドも張り切って、
「はい! 唐揚げ五個!」
と袋を受け取った。
ところが――
「……これ、誰の?」
レッドが袋を持ったまま固まる。
ブルーが聞く。
「注文票は?」
「……ない」
「名前は?」
「……聞いてない」
「お前、何してんねん!」
そこへ店員さんが走ってきた。
「あ、それ隣のお客さんのです!」
「なるほど!」
レッドは何事もなかったように、袋を渡した。
お昼を過ぎるころ。
ようやく店が少し落ち着いた。
六人は店の裏で休憩していた。
「疲れたなぁ」
ホワイトが言う。
「でも楽しかった!」
黄色が笑う。
ピンクも、
「また手伝いたいね」
と言った。
レッドは満足そうにうなずく。
「うん。今日は大成功や!」
ブルーが言った。
「……レッド」
「なんや?」
「お前、ほとんど唐揚げ運んでただけやで」
「それも立派な仕事や!」
グリーンが笑う。
「まあまあ。平和でええやん」
そのとき――
店の奥から声がした。
「ソーリュージャー! 休憩終わりー!」
六人が一斉に立ち上がる。
「はい!」
そしてまた、お店へ戻っていった。
夕方。
ようやく仕事を終えた六人は、お店の前に並んでいた。
「今日はありがとう!」
お店の人が笑顔で言う。
「こちらこそ、ありがとうございました!」
六人も笑顔で手を振った。
そして、帰ろうとしたとき――
ピンクがふと立ち止まった。
「……ところで」
「ん?」
「今日、唐揚げ……」
みんなが振り返る。
「一個も食べてないよね?」
「…………」
六人の間に、沈黙が流れた。
黄色が小さな声で言う。
「ほんまや……」
ホワイトも、
「楽しみにしてたのに……」
と、しょんぼり。
レッドも肩を落とす。
「……せっかく唐揚げ屋さん手伝ったのになぁ」
ブルーがため息をつく。
「まあ、しゃあないやろ」
六人は、少し残念そうに歩き出そうとした。
そのとき――
「あっ!」
お店の人が声を上げた。
「忘れてた!」
六人が一斉に振り返る。
「これ、持って帰って!」
そう言って渡されたのは――
唐揚げがぎっしり詰まった、大きな袋。
「…………」
六人が袋を見つめる。
次の瞬間――
「おおおおおーーーっ!」
さっきまでの落胆が、嘘のように吹き飛んだ。
「いっぱい入ってる!」
黄色が目を輝かせる。
「すごーい!」
ピンクも袋をのぞき込む。
レッドは胸を張った。
「やっぱり、頑張った人にはご褒美があるんや!」
ブルーが笑う。
「最初からそれ目当てやったんちゃうやろな?」
「ち、違うわ!」
六人が笑う。
その横で、ピンクの肩に乗っていたケロ助が、
「ケロッ!」
と嬉しそうに鳴いた。
ピンクが袋から小さな唐揚げを一個取り出す。
「はい、ケロ助の分」
「ケロッ!」
ケロ助は嬉しそうに唐揚げを抱えた。
六人は唐揚げの袋を大事に持って、あらぎ島への道を歩いていく。
今日も、あらぎ島は平和です。




