↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
2/20

第二話 隣の犬が鳴いている

あらぎ島の朝。


田んぼのあぜ道を、レッド、ブルー、ホワイト、グリーン、イエロー、ピンクの六人が並んで歩いていた。


そのとき――


「ワン! ワン! ワン!」


隣のわさび寿司屋「わさだま」さんの前から、元気な鳴き声が響いた。


「またや……」


レッドが振り返る。


そこにいるのは、フレンチブルドッグのりりぃ。


六人の姿を見るなり、しっぽを振りながら、


「ワン! ワン! ワン!」


と猛烈に吠えている。


「毎日顔合わせてるのになぁ」


ブルーが首をかしげる。


「俺、なんかした?」


「知らん」


グリーンが即答した。


「ひょっとして、恐竜が怖いんじゃない?」


イエローが言う。


「でも、もう毎日見てるで?」


ピンクも不思議そうにりりぃを見る。


ホワイトだけは、


「もしかしたら、僕だけ好きなんじゃない?」


と、なぜか自信満々だった。


「なんでやねん」


五人から同時にツッコまれた。


そんなやり取りをしている間も、りりぃはずっと、


「ワン! ワン! ワン!」


六人が歩き出すと吠え、立ち止まると吠え、振り返るとさらに吠える。


「……絶対なんか言いたいことあるやろ」


レッドがそう言ったときだった。


ピンクの肩に乗っていたケロ助が、ひょこっと顔を出した。


その瞬間――


りりぃの吠え声が止まった。


「……あれ?」


ケロ助がニコニコしながら手を振る。


「ケロ〜!」


すると、りりぃは大喜び。


しっぽをブンブン振りながら、ケロ助のところへ一直線。


「わぁ、ケロ助のこと好きなんや!」


ピンクが笑う。


ケロ助も嬉しそうに、


「ケロケロ♪」


と近づいていく。


ところが――


りりぃはケロ助を見つけた途端、


ベロベロベロベロベロ!


「ケローーーッ!」


顔を舐めまくった。


「ケロケロケロ!」


最初はニコニコしていたケロ助だったが、りりぃの勢いは止まらない。


顔を舐める。


頭を舐める。


手まで舐める。


しまいには全身を追いかけ回してくる。


「ケロ……」


ケロ助の笑顔が、だんだん引きつっていく。


「ケロ助、めっちゃ喜んでるやん!」


ピンクが笑っていると、


ケロ助がピンクの後ろへ隠れた。


「ケロ……」


「どうしたん?」


すると、りりぃがピンクの足元から顔を出した。


「ワン!」


ケロ助が反対側へ逃げる。


りりぃも追いかける。


「ケローーー!」


「ワンワン!」


ついには、ケロ助とりりぃの追いかけっこが始まった。


田んぼのあぜ道を、


ケロ助が逃げる。


りりぃが追う。


ケロ助が曲がる。


りりぃも曲がる。


「ケロ助、めっちゃ逃げてるやん!」


「最初はあんなに嬉しそうやったのに」


ブルーが笑う。


「好きすぎるんやろな」


グリーンも笑っている。


そのとき、わさだまのおやっさんが店から出てきた。


「おーい、りりぃ! またケロ助追いかけてるんか!」


どうやら、りりぃは以前からケロ助を見つけると、遊びたくて仕方がなかったらしい。


六人が毎日吠えられていたのも、実は――


「ケロ助を出して!」


と言っていたらしい。


「なんや、それ!」


レッドが笑う。


「俺たち、完全に巻き添えやん!」


その日の夕方。


ケロ助はピンクの肩の上で、りりぃがいないことを確認してから、ようやく一息ついていた。


「ケロ……」


しかし、わさだまの前を通りかかった瞬間。


りりぃと目が合った。


「ワン!」


「……!」


ケロ助は一瞬でピンクの後ろへ隠れた。


「ケロ助、逃げるん早っ!」


こうして今日も、あらぎ島には平和な一日が流れていく。


ただし、ケロ助にとってだけは――


りりぃに見つかったら、全身ベロベロの刑。


今日もあらぎ島は平和です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。