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第17話 ドンブラコ 流れ着いた木箱

朝から、あらぎ島にはものすごい雨が降っていた。


展望台へ続く道には雨水が流れ、あらぎ島展望台もすっかり小川のようになっている。


「うわぁ……今日の雨、えらいこっちゃな」


レッドが窓の外を眺めていると、ホワイトが言った。


「今日は外に出んほうがよさそうやな」


「せやな。こんな雨やったら、展望台の見回りもできへんやろ」


ブルーも窓の外を見ながらうなずく。


そのときだった。


展望台のほうから、何かが雨水に流されてくるのが見えた。


「ん? あれ、何や?」


レッドが目を細める。


雨でできた小川のような流れに乗って、怪しい木箱がドンブラコ、ドンブラコと近づいてきていた。


「木箱や!」


イエローが窓に駆け寄る。


箱はそのまま流れに乗り、ソーリュージャーたちの家の庭までやって来ると、泥の上でゆっくり止まった。


「なんや、あれ……」


グリーンが外を見ながらつぶやく。


「箱に何か書いてあるで」


ピンクが目を凝らした。


雨に濡れた木箱のふたには、宛先らしき文字が刻まれていた。


『ソーリュージャーへ』


「ボクら宛てやん!」


ケロ助が驚いて声を上げる。


「でも、送り主の名前がないで」


ホワイトが箱の側面を確認する。


「ほんまや。誰が送ってきたんやろ?」


「怪しすぎるやろ、これ」


ブルーが腕を組んだ。


「しかも外は大雨やで。誰が取りに行くん?」


全員が黙り込んだ。


庭に出るには、雨の中を通らなければならない。展望台から流れてきた箱は泥と水にまみれていて、近づくのも大変そうだった。



挿絵(By みてみん)



「ケロ助、行ってきてや」


レッドが何気なく言った。


「えっ、ボク?」


ケロ助が自分を指さす。


「カエルやから、雨に濡れても平気やろ?」


「いやいや、ボク、ロボットやし壊れるときは壊れるで!」


ケロ助は慌てて首を振った。


「水が入ったらショートするかもしれへんし、泥で動かれへんようになるかもしれへん!」


「それは困るな」


グリーンがうなずく。


「ほな、誰が取りに行くか決めよか」


「どうやって?」


イエローが尋ねる。


レッドは少し考えてから、にやりと笑った。


「ゲームで決めようぜ!」


「ゲーム?」


「一番負けたやつが、箱を取りに行くんや」


「ええやん!」


イエローが目を輝かせる。


「それなら公平やな」


ピンクも賛成した。


「でも、負けたらほんまに行くんやで?」


ホワイトが念を押す。


「もちろんや!」


レッドが胸を張る。


「ケロ助も参加な」


「ええっ、ボクも?」


「みんなで決めるんやから、当然やろ」


ブルーが笑った。


「ボク、今日は絶対に負けへんで!」


ケロ助が気合いを入れる。


「昨日も同じこと言うてたやん」


レッドが笑った。


こうして恐竜たちは、誰が怪しい木箱を取りに行くかを決めるため、ゲームを始めることになった。


最初はトランプだった。


「うわっ! ブルー、強っ!」


「そこに置いたらあかん!」


「ホワイト、そこ違う!」


「え? そうなん?」


「イエロー、勝手にルール変えるな!」


「こっちのほうがおもろいやん」


「ケロちゃん、そこや!」


「任せとき!」


一回戦が終わると、今度はボードゲームを出した。


「まだ勝負はこれからや!」


「そのコマ、そこに置くんか?」


「作戦や、作戦!」


「ケロ助、また最下位やで」


「まだ終わってへん!」


さらにその次は、なぜかゲーム機まで引っ張り出してきた。


「この勝負で決まりや!」


「絶対に負けへんからな!」


「うわっ、レッド強っ!」


「そこは避けろ!」


「ホワイト、今の反則ちゃう?」


「え? そうなん?」


気がつけば、全員夢中になっていた。


外では雨が降り続いている。


庭の木箱は、誰にも取りに行かれないまま、泥の上に置かれていた。


そして、時間だけが過ぎていく。


昼になった。


「腹減ったな」


「昼飯にしよ」


「そのあと続きな」


「もちろん」


昼飯を食べた。


ゲームを再開した。


また盛り上がった。


「ケロ助、今の勝負どうやった?」


「……聞かんといて」


「まだ箱を取りに行く人、決まってへんやん」


「次こそ勝つ!」


気がつけば夕方になっていた。


雨も、いつの間にか止んでいた。


窓の外には、雨上がりのあらぎ島が広がっている。


庭には、あの怪しい木箱がまだ残っていた。


「……なんか今日、一日ずっとゲームしてたな」


ホワイトが言った。


「せやな」


レッドも笑った。


「で、箱を取りに行く人は?」


ブルーが庭を見ながら尋ねる。


全員が顔を見合わせた。


「……決めるの忘れてた」


グリーンがつぶやいた。


「ええっ! ほな、誰も取りに行ってへんやん!」


イエローが驚く。


「今日はもう、何もせんでええんちゃう?」


「晩ごはん食べて、ゆっくりしよ」


グリーンが言った。


「賛成!」


イエローが元気よく答える。


「箱のことは、明日考えたらええやろ」


レッドが言うと、みんなもそれにうなずいた。


「明日は晴れるとええな」


ピンクが窓の外を見ながらつぶやいた。


「晴れたら、みんなで展望台まで行こか」


「ええな!」


「明日の予定、決まりや!」


こうして恐竜たちは、雨の一日をゲームで遊んで過ごした。


晩ごはんを食べて、風呂に入って、布団に入る。


「おやすみ」


「おやすみー」


「また明日な」


あらぎ島は、静かな夜に包まれていった。


そしてその日、恐竜たちは箱のことも、誰が取りに行くか決めることもすっかり忘れたまま、眠りについた。


そのころ、庭に置かれた箱は、泥と水にまみれ、角の一部が少しへこんでいた。けれど、厚い木の板で作られたふたはしっかり閉じたままだった。表面には見慣れない印が刻まれ、雨粒がその溝に沿ってゆっくりと流れている。


風が吹くたび、箱の中からかすかな音がした。


コト……コト……。


まるで、誰かが内側から合図を送っているようだった。


月明かりが庭を照らし、箱の影が長く伸びる。



その箱の中に何が入っているのか――そして、あらぎ島にどんな出来事が始まろうとしているのか。


静かな夜の庭で、箱はもう一度、小さく揺れた。

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