第12話 今日は平和な…はずだった
「コケコッコーーーーッ!!」
「うわっ!」
レッドが飛び起きた。
「な、なんだ!?」
隣のテントからも、
「何事!?」
「朝からうるさいよ……」
「眠い……」
次々と声が聞こえてくる。
どうやら、全員たたき起こされたらしい。
昨夜は稲刈りお疲れ様会ということで、みんなでキャンプをして、そのまま一泊。
しかも夜中には、満月の夜にだけ開く「宇宙うさぎカフェ」にまで行っていた。
そんなわけで、六匹はまだまだ眠かった。
「……もうちょっと寝かせてくれへん?」
グリーンがテントの中からぼやく。
「ほんまや……」
ホワイトも眠そうに目をこする。
すると、また聞こえてきた。
「コケコッコーーーーッ!!」
「だから、うるさいって!」
レッドがテントから飛び出す。
すると、キャンプ場の向こうから、慌てた様子で農家さんが走ってきた。
「大変やー!」
「うちの農園のニワトリ、全部逃げたー! 捕まえてー!」
「えっ?」
レッドが目を丸くする。
「おっちゃんとこのニワトリって……めっちゃおらんかった?」
「そうや!」
農家さんが指差した先を見ると――
「……え?」
「うそやろ……」
「めっちゃおる……」
キャンプ場のあちこちを、ニワトリの大群が埋め尽くしていた。
テントの周りを走り回り、通路を横切り、あっちでもこっちでも羽ばたいている。
もはやキャンプ場は、完全にニワトリに乗っ取られていた。
「……これ、全部?」
「全部や!」
「よっしゃ、みんなで捕まえるで!」
レッドの号令で、六匹は一斉に走り出した。
ところが、ニワトリたちは思った以上に素早い。
「待てー!」
「そっち行ったで!」
「こっちや!」
逃げ回るニワトリを追いかけているうちに、レッドが一羽を追い詰めた。
すると――
そのニワトリが、レッドの頭の上へぴょんと飛び乗った。
「……なんでやねん」
レッドが固まる。
それを見たブルーが、ニヤリと笑った。
「レッド、そのままニワトリ乗せといて。写真撮っとこか?」
レッドの頭にニワトリを乗せた姿が、あまりにも滑稽だった。
「おい、ブルー!」
ブルーが笑いながらスマホを構えた、その瞬間――
「コケコッコーーーーッ!」
横から別のニワトリの大群が、ドドドドッ!と押し寄せてきた。
「うわっ!」
「なんやこれー!」
ブルーが逃げる間もなく、大群に巻き込まれる。
レッドもニワトリを頭に乗せたまま、まとめて吹っ飛ばされた。
「うわあああっ!」
羽が舞い、土ぼこりが上がる。
やがて大群が通り過ぎると――
レッドもブルーも、すっかり羽だらけになっていた。
「……ブルー」
「……なんや?」
「写真、撮れたか?」
「……撮れてへん」
「そうか」
「……残念やな」
二匹は無言でニワトリを追いかけ始めた。
そのころ、ピンクはみんなとは別行動。
黙々とニワトリ用の罠を仕掛けていた。
そして――
「……捕まった」
罠には、ちゃっかり一羽のニワトリが入っていた。
「さすがピンク……」
イエローが感心していると、
「こっち来たでー!」
グリーンの声が飛んできた。
またニワトリの群れが走ってくる。
「みんな逃げてー!」
六匹が一斉に散らばった。
レッドは走る。
ブルーも走る。
グリーンは必死に逃げる。
ホワイトは転びそうになりながら追いかける。
イエローは――
「うわっ!」
足を取られて、うつぶせに転んだ。
「イエロー、大丈夫!?」
返事をする間もなく、
ドドドドドドッ!
ニワトリの大群が、その背中を次々と踏んでいく。
「いたたたたたっ!」
ようやく大群が通り過ぎると、イエローの背中にはニワトリの足跡がいっぱい。
「……なんやねん、これ」
イエローが顔だけを上げる。
「イエロー、背中すごいよ」
ホワイトが思わず笑う。
「笑ってる場合ちゃうでー!」
その横を、また一羽のニワトリが走り抜けていく。
「あっ!」
全員が追いかける。
「待てー!」
「今度こそ捕まえるで!」
「コケコッコー!」
ニワトリは逃げる。
ソーリュージャーは追う。
追って、転んで、踏まれて、羽まみれになって。
気がつけば、六匹とも泥だらけで、息も絶え絶えだった。
「……もう、動けへん」
レッドが地面に座り込む。
「朝から何キロ走ったんや……」
ブルーも羽を払いながらぐったりする。
「これ……運動会より走ってるんちゃう?」
グリーンがつぶやく。
「運動会……?」
ホワイトが嫌な予感に顔を上げた。
そのときだった。
「あんたら、何してんの!」
聞き慣れた声が響いた。
やって来たのは、おやっさんの奥さんだった。
事情を聞いたおばちゃんは、六匹を見回してニヤリ。
「なるほどなぁ」
六匹が身構える。
おばちゃんは、元気よく言った。
「今日、運動会するで!」
「えええええーーーっ!?」
さらに、おばちゃんは六匹の泥だらけの姿を見て一言。
「準備運動はバッチリやろ」
「えええええーーーっ!?」
朝から始まったニワトリ大脱走。
六匹はまだ知らなかった。
本当の運動会は、これからだということを。
今回は、稲刈りお疲れ様会のキャンプから、宇宙うさぎカフェを経て、朝から大騒ぎ。
いつもの読み切りスタイルですが、今回はちょっとだけ次のお話へ続く形になりました。
さて、次はスポーツの秋。
ソーリュージャーたちの運動会です。
……ちゃんと無事に終わるんでしょうか(笑)




