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第11話 満月の夜だけ開くカフェ

今年も無事に稲刈りを終えた、あらぎ島。


その日は、みんなでキャンプ場に集まって、稲刈りお疲れ様会をしていた。


テーブルの上には、料理がずらりと並んでいる。


カレーに焼き物、あれやこれや。


稲刈りを頑張った分だけ、みんな遠慮なく食べた。


「……食べたなぁ」


レッドが、お腹をさする。


「食べすぎたんちゃう?」


イエローが笑う。


「もう動けん……」


ホワイトは椅子にもたれかかっている。


しばらくすると、イエローが空を見上げた。


「そうそう。知ってる?」


「何を?」


「満月の日しか開かんカフェがあるらしいよ」


「満月の日しか?」


グリーンが聞き返す。


「うん。しかも、晴れた満月の日しか開かんのやって」


「なんやそれ。都市伝説みたいやな」


レッドが笑う。


そのとき、ブルーが空を見上げたまま言った。


「……今日は満月やで」


みんなが空を見上げる。


山の向こうから、まん丸の月が顔を出していた。


「ほんまや」


イエローが嬉しそうに言う。


「そのカフェ、あらぎ島と満月が、ものすごく綺麗に見える場所にあるらしいよ」


「ほな、ちょうどええやん」


グリーンが立ち上がる。


「食べすぎたし、腹ごなしに探しに行こら」


「行ってみよ!」


イエローの声に、みんなも立ち上がった。


こうして、食後の腹ごなしを兼ねて、満月の夜のカフェを探すことになった。


山の中の道を、みんなで歩いていく。


しばらくすると、木々の向こうが開けてきた。


そこは、山の中にぽつんとある小高い丘だった。


そして丘の上には、小さな明かりが灯っている。


「あ……あれちゃう?」


近づいてみると、古い木の看板が見えてきた。


そこには、かわいらしい文字で、


『宇宙うさぎカフェ』


と書かれている。


「ほんまにあったんや!」


イエローが目を丸くする。


店は、古民家を改装したような小さなカフェだった。


昔ながらの木の柱や格子戸が残されている一方で、照明やテーブル、食器はおしゃれで、落ち着いた雰囲気にまとめられている。


こじんまりとした店なのに、なぜか懐かしさを感じる。


店の横には屋外席と小さなテラスもあった。


少し肌寒い夜のために、屋外用のストーブも置かれている。


「ええ雰囲気やなぁ」


ブルーが店を眺める。


入口では、一羽の白いうさぎが出迎えてくれた。


「いらっしゃいませ」


「……ほんまにウサギや」


ホワイトの目が、ぱっと輝いた。


「かわいい……!」


うさぎの店員は、にこにこと笑っている。


「ここ、ほんまに満月の日しか開かんの?」


イエローが尋ねる。


「はい。晴れた満月の日だけなんです」


「なんでなん?」


「せっかく月から来たうちらですから。満月と、この景色を楽しんでもらいたいんです」


「へぇー!」


イエローは店内を見回した。


「ほんまに月から来てるん?」


「はい」


「月には、うさぎ何匹くらいおるん?」


「みんな餅ついとるん?」


「月って寒いん?」


質問が次々と飛び出す。


うさぎの店員は、嫌な顔ひとつせず、笑顔で答えてくれた。


その横では、ホワイトが別のうさぎをじっと見つめている。


「かわいいなぁ……」


完全に夢中だった。


一方、レッドはテーブルに置かれたメニュー表とにらめっこしていた。


『白銀の赤い一点』


『星空の天の川』


『漆黒の彼方』


『銀河の向こう側』


「……これ、何や?」


「さぁ?」


イエローも首をかしげる。


「どれも美味しそうやけど、何が出てくるんか全然分からん……」


レッドは真剣な顔でメニューをめくっていく。


「普通にケーキとかコーヒーとか書いてくれたらええのになぁ」


「まあ、こういう名前も楽しみの一つなんやろ」


グリーンが笑った。


そのグリーンが、メニューの端で手を止める。


「……ぶどう山椒?」


そこには、地元のぶどう山椒を使った、この店オリジナルの一品が載っていた。


「和歌山のぶどう山椒を使っとるんです」


うさぎの店員が説明する。


「ほな、それにしよ」


グリーンは迷わず注文した。


ピンクとケロ助は、テラス席でアフタヌーンティーを楽しんでいる。


「こういうん、ええなぁ」


「うん。夜にこういうのもええもんやね」


ケロ助も嬉しそうに答える。


そしてブルーは、少し離れた席から夜空を見上げていた。


満月の光が山々を照らしている。


その下には、あらぎ島。


月明かりに照らされた田んぼが、静かに広がっている。


店内から聞こえてくる小さな話し声。


カップを置く音。


うさぎたちが静かに動く気配。


テラスでは、屋外用ストーブが静かに暖かさを届けている。


少し肌寒い夜だった。


けれど、誰も急いで帰ろうとはしなかった。


美味しいスイーツと飲み物を味わいながら、みんなそれぞれの時間を楽しんでいた。


やがて、夜もだいぶ更けてきた。


「そろそろ帰ろか」


レッドが言う。


ホワイトは名残惜しそうに、うさぎを見る。


「また来たいなぁ……」


すると、店のうさぎが笑顔で頭を下げた。


「また来月の満月の日、晴れたら来てくださいね」


「うん!」


イエローが元気よく答える。


みんなも手を振った。


丘を下りる前に、ブルーが一度だけ振り返る。


小さな古民家風のカフェ。


その向こうには、大きな満月。


さらにその下には、静かに眠るあらぎ島。


その景色を眺めながら、みんなはゆっくりとキャンプ場へ戻っていった。


満月の夜は、静かに更けていった。

あとがき


今回は、ちょっと静かな夜のお話です。


稲刈りを終えたあらぎ島で、満月を眺めながら見つけた小さなカフェ。


こんなお店が本当にあったら、ぜひ行ってみたいですね。


美味しいものを食べて、月を眺めて、のんびり過ごす。


たまには、そんな夜もいいものです。


また来月の満月に、会えるといいですね。

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