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お出かけ

休暇の中期、瑞穂は母親に頼まれて千代田と買い物に出かける事になった。


(軍人になれたのは嬉しいんだけど、外出で私服禁止・軍服着用が義務は厳しいな。)


そんなことを思いながら軍服を着て、外出の準備をする。


(いやぁ、自分で言うのもなんだけど俺って軍服似合うな。…身長を除いたら。)


鏡を見ながらそんなことを思う瑞穂であった。


「お兄ちゃん、準備できた?」


「あぁ、できたよ。」


軍服姿の兄をみるに千代田は、


「…その身長で軍服は子供が遊んで着ているみたいね。」


瑞穂の弱点を綺麗に突いていた。


「僕一応少尉なんだけど!意外と高いところにたってるんだけど!」


瑞穂、そんなこと言ってると本当に子供に見えてくるからやめるんだ。


「はいはい、そうなんですね。とりあえず早く行くよ。」


「千代田が始めた事だろうが!」


そんなことを話しながら出かける二人であった。


―――――――――


出かけ始めて数分後、瑞穂は困っていた。


(数少ない千代田とのお出かけだっていうのに、敬礼ばっかで大変だよ。)


呉は四大軍港の一つなので海軍人がたくさんいる。つまり瑞穂は自分より階級が下の者には敬礼を返して、上の者には敬礼をしなければならない。


「…お兄ちゃんっていつもはだらしないのに、ちゃんとする時はちゃんとするのね。」


「失礼な、僕は外では真面目で優秀なんだからな。」


そしてまたもや前から海軍人がくる。瑞穂は相手が二等飛行兵なことを確認し、敬礼され、敬礼を返す。それで終わりかと思ったその時、


「し、失礼ですが、小林少尉殿で間違いないでしょうか?」


敬礼して終わりだと思っていた瑞穂は話しかけられた事に少々びっくりしていた。


「あぁ、その通りだが。」


その返答を聞き、二等飛行兵は憧れと尊敬の顔になった。


「それではっ!霞ヶ浦をわずか3ヶ月で卒業されたというのは本当でしょうか⁉」


「え、あぁ、紛れもない事実だが。どうしてそれを…」


「どうしても何も、貴方は海軍内でとんでもない噂になっていますよ!」


「そ、そうだったのか。」


当たり前といえば当たり前だ。本来は7ヶ月以上はかかるものを3ヶ月で終わらせたのだから。

…その後は少しばかり雑談を挟み、


「それでは、自分も少尉殿のような搭乗員を目指して精進いたします。」


「あぁ、でも自分が言えたことではないが、無茶せず真面目に訓練に励めよ。」


そう言い、瑞穂と二等飛行兵は別れた。

その出来事を見ていた千代田は、


「やっぱり、お兄ちゃんって凄いのね。」


瑞穂に感心していた。


「ふっふっふ、そうだろう、凄いだろう‼」


瑞穂のその言葉を聞き、千代田は「やっぱり、すごくないわ」と思った。

…瑞穂は千代田に好かれたいと思っているんだけど、やっている事の大体は逆効果なんだよね。

そんな事もありながら、瑞穂達は買い物を済ませる。


―――――――――


買物を済ませ、家に帰っている途中。軍人の瑞穂を見た千代田は、心配そうに瑞穂に質問する。


「お兄ちゃんって軍人よね?ということは、やっぱり戦場に行ってしまうの?…戦場に行くってことは、死んでしまうのかもしれないの?」


千代田は聞かない方がいいと分かっていながら、どうしても返答が聞きたくて、聞いてしまった。


「え?あ、あぁ。あははは!」


「ちょっ、ちょっと!真面目な話をしているのになに笑ってるのよ‼」


千代田は真面目な話をしているのに笑われ、ムカッときていた。


「いゃ、いやね。親子同士似たようなことを言うんだなと。」


「え?」


瑞穂はいつも通りの顔で会話を続ける。


「僕が2歳の頃かな、海軍搭乗員になるって言ったらね。お母さんに同じような事を心配されてね、その時僕はこう言ったんだ。「まだ猶予はある、その猶予を使って生きるためのことを考えるから」って。もう猶予は少ないけど、生きるためのことは今でもちゃんと考えているよ。」


「…本当に?」


「うん、本当に。…僕は早死にしたくないし、まだまだ家族と生きていたいか…ら……。」


その時、瑞穂は改めて未来のことを考えた。…考えたくない未来を。


(ここは呉、僕や父さんは仕事でいない時間はたくさんある。でも母さんと千代田は常にいることになる。呉…呉、四大軍港の一つ、重要軍事基地。太平洋戦争、無差別空襲、呉市街地空襲、死者は2000人以上、死ぬかもしれない…家族が死ぬかもしれない。)


そう考えると瑞穂はいつの間にか過呼吸になっていた。


「はっ…はっ…はっ…はっ…」


「ちょっと、お兄ちゃん?大丈夫⁉」


その千代田の言葉で瑞穂は正気を取り戻した。


「あ、あぁ、ごめん。…もう大丈夫。」


「本当に?」


「…うん、本当だよ。」


そして、瑞穂は決心する。


(家族に別の場所に引っ越そうというのは怪しまれる。最悪生まれ変わりがバレて、世界が良くない方向に進むかもしれない。…なら、なら?あれ、これ詰んでいないか?いや、空襲が本格化すると国も流石に国民を地方へ避難させるから、家族が死ぬ可能性は低くなる…じゃあ国に任せるか!)


……決心、じゃないわこれ。

真面目な瑞穂が出てくると思われたが、いつものふざけた瑞穂でした。ふざけんな!

…そんなこんなあったが、瑞穂達は家に帰りついた。そして今日のことを千代田が両親に言い、恥ずかしくなる瑞穂であった。

読んでいただきありがとうございました。

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