初飛行で?
1936年末。
(お父さん、お母さん。ぼくは今初めて、空を自分の意思で飛んでいます。)
瑞穂は今、後ろに教官を乗せて赤とんぼで初の飛行訓練をしている。
今は水平直進飛行中。
(久しぶりのコックピット目線だ。この時代はまだゲームなんて無いから戦闘機ゲームができないんだよ。…でも長年やっていたから20年ちょっとじゃ忘れないよ!一人称視点だったから視界の悪さも慣れているしね!)
そう思いながら瑞穂は赤とんぼで綺麗な水平直進飛行をしていた。
それを見ていた教官は、
(普通なら、蛇行してもおかしくないんだけどな。こいつには素質があるのか。それにしても初めてだぞ!初めてでこんだけできるってどうなってるんだ!)
普通なら緊張と恐怖で力が入り過ぎて蛇行飛行してもおかしくないらしいが、瑞穂は緊張と恐怖より本物の飛行機を操縦しているという感動が勝ってしまっているようだ。あとは反トルクや操縦桿の重さなど色々な問題があるのだが。反トルク等の飛行特性はゲームでなれており、鍛えている為操縦桿の重さなんてあまり感じてないと言えば嘘になるが、問題ないレベルだった。
(それにしてもこれが本当の飛行か……ゲームと違って操縦ミス=死と思った方がいいな。うわこわっ!)
おっと、やはり恐怖があったのか!…と思ったが、これはあれだ、ちょっとふざけた「うわこわっ!」だ、全然怖がってない。
「小林、左緩旋回。」
教官からの左緩旋回の指示。
(左緩旋回ね、つまり左ラダーを踏みながら左ロール。正直言ってロールでラダー使うなんてここにきて初めて知ったよ。)
そういいながら左緩旋回を実行する瑞穂。こっちは普通にできてはいるが、綺麗と言える程ではない。
(ふっ、緩旋回はまだ改善の余地があるな。焦らせやがって!)
なにを怒っているんだこの教官は。別にいいじゃないか、初飛行で上出来でも。
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そして、飛行訓練は最終局面の着地に差し掛かっていた。瑞穂は着地で難しいとされる3点着地を決めようとしていた。初飛行で!
(1937年7月7日には実戦配備に行きたいんだ!だからここで教官に実力を見せつけてやる!)
瑞穂は覚悟を決め、アプローチに入る。
滑走路が見え始めた頃、瑞穂は教官にとある提案をする。
「…教官。ここで完璧に近い3点着地を決めたら、訓練期間を少し短縮してもらえますか?」
「……は?」
教官の呆気にとられた声が聞こえてくる。
無理もない、初飛行で完璧に近い成果をだしたパイロットだとしても、初飛行で3点着地は危険すぎるし無理があるからだ。しかし、瑞穂の凄さを間近で見ていた教官は興味が湧いてきた。
「…いいだろう。本当に短縮できるかはわからないが、評価は高くつけてやる。…しかし、もし一度でも俺が危険だと思ったら操縦を変わり通常か、それ以上の訓練量にするからな。」
「いいですよ、どちらに行っても僕にはメリットしかないのでね。」
自信満々の声で瑞穂はそういい放った。しかし心情は、
(3点着地はね、ゲームでやってるんだよ。だから失速タイミングや侵入角度はある程度わかる。でも問題は横風や振動などのゲームにはないシステム。ここは勘で乗り越えるしかない。)
不安要素がたくさんあった。しかし提案したからにはやらねばならない。
瑞穂はスロットルを絞り、失速ギリギリの速度に調整する。そして機首を上にあげ、主脚と尾輪が地面と平行になるであろう角度にする。その後は重力に任せ落下するだけ。
ガッッ!!
…大きな衝撃はその一回だけだった。その後は滑走する振動のみ感じられ。その時、瑞穂は実感した。
(せ…成功したぁ。)
いくら飛行が楽しいとはいえ、この瞬間は達成感に満たされていた。
そして機体が停止してから、すぐさま瑞穂は後ろを振り向く。
「きょ…教官!やりましたよ!」
その瑞穂のやってやったという顔を見て教官は、
「…あぁ、あっぱれだよ。こんなに綺麗な3点着地は見たことない。ましては初飛行の奴がな。」
教官の脳内は驚きと喜びに満ちていた。初飛行の奴が完璧な3点着地を決めたという驚きと、こんな逸材が帝国海軍にいるという喜びに。
…この教官、嫉妬ではなく喜びになるところ、愛国心高いな。
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その後の瑞穂は、とりあえず一通りの飛行を教えられた後。一人乗り訓練に移り。1937年3月初期に修了。1937年3月末に横須賀海軍航空隊の九六式艦上戦闘機の訓練に移ることとなる。
読んでいただきありがとうございました。
おそらく5話から模擬空戦などの戦記っぽいことをやっと書くことになると思います!




