第九十九話 因縁との再会
満身創痍の状態でも剣を向け立ちはだかる改造人間の男を、ラミーは情け容赦なく鋭い爪で斬り裂いた。
筈だった…
「ぐッ…!?何です?!この結界は!」
「おお…」
黄金に輝く暖かな光が2人の間を隔て、凶悪な爪を柔らかく、力強く受け止めていた。日の光の様な輝きを放つ結界がラミーを押し返しながら前へ進むと、男の後から少女の声が聞こえた。
「もうやめて下さい!これ以上彼らを傷付けないで下さい!」
「せ、聖女様…」
「くッ!たかが人間が何を言っているんですか!黙って私に使われてれば良いものを!」
くッ…何ですかこの力は?まるで太陽に焼かれるような嫌な感じ、それに私が押し負けるなんてッ?!
「お前達!さっさと聖女を取り押さえて下さい!」
「はっ!あ、いや…でも…」
周りの兵士に加勢を促すが、彼らもまた結界になす術なく、剣をやたらに振り回すだけだった。
「厄介ですね…こうなったら…後退よ、下がりなさい!」
ラミーは兵士と共に前線を下げた。結果に焼かれた腕から彼女の血が倒れた兵士や床に零れ落ちる。
「あ!待って!」
「ふふ…」
シャナは逃げようとするラミーを追い結界ごと前と進んだ。シャナから一定の距離を取る結界が抵抗する兵士を押し退ける。
同時に、地面に転がる石や死体は何の抵抗もなく通り過ぎるのを確認していたラミーは、結界内に彼女の血にまみれた死体が中に入ると、
「あは♪『デェッドリーボム』!」
「キャアッ!?」
床に染み込んだ血液を媒介に繋がったままラミーの魔力が血塗れの死体を爆発させたのだ。床を抉る爆発によって兵士の血飛沫と肉片がシャナを襲う。
「あぁ唆る悲鳴ですね♪」
「くっ…酷い…な、仲間を、何だと思っているんですかッ!?」
「仲間?敵を倒せれば多少の被害なんてどうでも良いんですよ♪私魔族ですから♪」
「…しません…」
「は?」
「貴方だけは絶対に許しません!」
シャナの宣言と共に、ずしゃーーーッん!!!!と爆発が起こる。屋根を突き破って現れたセシリアは、
「よく言ったわねシャナ!流石私の仲間ね」
「せ、セシリアさん!」
セシリアに続き、屋根に開いた穴から次々に人影が降りてきた。
「待たせたなシャナ!」
「お待たせ~♪」
「ん、待たせた。元気そうで良かった」
「ちょっと皆さん待ってくださいよ~」
「ほら。ライオさんも早く来るんだぜ!」
「皆さん…!」
「奴隷?次から次にと…」
フィズ達の登場に狼狽するラミーだが、結界が消えた今が好機と、兵士を差し向けたのだが、
「ん。邪魔」
「ぐあッ?!」
「あは♪『エナジードレイン』!」
「ガっ…」
スーとサキュが、それらをいとも簡単に制圧してしまった。
「なッ?!」
「あ~、悪いな、あとは君だけだ。シャナを攫った事をしっかりと後悔するんだな」
「くッ…」
・・・
・・
・
遡る事数時間前、僕等は地下で行動を開始した。この日の為に、地下の奴隷達の枷を浄化し無効化した。そしてここから抜け出す為に協力を願い出たのだ。
もともと強制的に連れてこられた彼らに特に反対する理由は無く、全員の同意が偉えた。幸い、武器は地下に山程あるし、協力してくれる改造人間も居た。
お陰で特に被害もなく地下を占拠すると、僕達は地下から脱出したのだった。
「よし。取り敢えずこの廃教会周囲は確保したな。皆さん、もう少しここで頑張ってください。その内に、援軍が来てくれますから」
「分かった。君たちはどうするんだ?」
「僕等にはやる事が…」
「フィズさん!お待たせ!」
「ルル。久しぶりだね♪早速向こうの状況を教えてくれるか?」
「ハイ!」
解放した奴隷と改造人間にこの場を任せると、僕達はシャナの様子を伺いながら、屋敷へと向かった。
「へぇ、シャナも進化したみたいだな。強力な結界か…良いタンクが増えたな」
「ええ…でもまだ戦闘経験が無いのよ…あっ?!追いかけちゃダメ!」
「ルル!連絡は?」
「無理です!やっぱり妨害されて…」
ルルの『千里眼』を通してシャナを監視していたが、どうやら罠に掛かって負傷した様だ。
「クソッ…急ごう!」
「待て!ここは通さんぞ!」
「こんな時に…」
屋敷に近づくと兵士が多く警戒していた。倒せなくは無いが時間が無い。
「オレに任せるんだぜ!『重力操作』!飛ぶぜ、皆掴まって!」
「お、おう…うわぁ?!」
ふわりと体が軽くなると、ルルに掴まった体が宙に浮き空に飛び立った。一瞬で空高く舞い上がると、そのままシャナが居る所まで急降下する。
「この下にシャナが!」
「分かったわ。私に任せて『ブレイブ』『メテオスラッシュ』!」
スキルとともに飛び降りたセシリアは屋根を突き破り突破口を開いたのだった。
・・・
・・
・
そして、狭い屋敷の中で僕等に追い詰められたドラキュラは、悔しそうに此方を睨んでいた。天井に開いた穴から注ぐ光が、日が高く昇った事を教えてくれる。
これじゃあ外に逃げても遠くへは逃げられない…どうしたら…
「なんだい?随分と苦戦しているじゃないか?」
ラミーが思案しているとやはり天井の穴から声が聞こえてきた。ラミーの前に立ちはだかり、無数の目が此方を睨んでいた。
「お前は…不味い『クエイク』!」
僕は警戒していたメデューサの登場に、すぐに土壁を作り出し石化光線を防いだ。
「チッ…でも今なら、ほらここじゃ不利だ。一旦地下に逃げるよ」
「私が逃げるなどと…」
「はぁ…追い込まれてるのに何言ってるんだい?さっさと来な!」
その場から遠ざかる2人を逃がすまいと、
「ルル!追跡お願い!」
「やってるぜ!あのヘビめ!今まで居なかったのに…フィズさん、アイツらはこの先の階段で地下に降りてるみたい」
「また地下か…よし、追いかけるぞ!」
僕達は自分達の因縁と決着を付けるために再び地下へと戻って行った。




