第九十五話 奴隷と聖女
うっかりシャナの名前を聞かれてしまった僕達は、兵士に連れられて人気の無い場所へと案内された。ギロリとこちらを睨む兵士に、いつでも倒せる様に戦闘体勢を取った。
「ちょっと待ってくれ!?別にあんた達をどうこうするつもりは無いんだ!俺はシャナ様から伝言を頼まれててな!」
「シャナ様?」
「伝言?」
僕とセシリアの疑問に兵士は、
「そうだ!お前達シャナ様の仲間だろ?俺も、いや、俺を含め、魔物に改造された人間達の多くがシャナ様に助けられたんだ。こんななりだが、どうか信じ欲しい!」
「信じろって言われてもな…何か証拠は無いのか?」
「証拠か…証拠ならあるぞ!シャナ様から教えてもらったんだよ!勇者の体には紋様が浮かんでるってな」
僕たちしか知らない秘密だが、もし拷問されてシャナから情報が漏れてしまった可能性もある…
「他には?何か下らない事を言っていなかったか?」
「う~ん…そう言えばちょっと自虐的に、セイジョであってセイジョじゃ無いとか、理由のわからないことを言っていたような…」
「分かった。信じるよ!」
「それで良いのか?」
「ああ、それでシャナからの伝言って?シャナは無事なのか?」
疑っていた僕があっさり信じた事に困惑した様だが、ば兵士の彼はしっかりと役目を果たしてくれた。彼にお礼を言うと、可能ならこちらからの伝言を伝えて欲しいとお願いし、一言託した。
「分かった。本当に伝える事はこれだけで良いんだな?」
「うん。宜しく頼むよ。じゃあ僕達は仕事に戻るね」
「あ、ああ…」
仕事場に向かう途中、僕達は兵士から聞いた伝言を思い出していた。
「『ゆっくり準備して下さい』か…シャナが無事なのは分かったがゆっくりって一体どういうつもりだ?」
「元気なのは確かみたいだし、シャナはシャナで何か考えてるようだし、向こうは心配無いんじゃない?」
「ん、きっと大丈夫」
「そうですね。私達は私達の出来ることをやりましょう」
「それもそうだな。まぁ、上で何かあればルルが何とかしてくれるだろ。ライオ君、ルルからの連絡は?」
「特には何も…」
「分かった。お、そろそろこの話は終わりにしよう。じゃあろまた後でな」
僕達は別の仕事場に着くと、また普通の奴隷として仕事に従事した。
「ふぅ…ここは暑いな…」
カンカンカンと金属を打ち付ける音が響く。炉から溢れ出る熱気と熱く熱せられた容器が目の前に運ばれてくると、
「フィズさん、早くして下さいよ!」
「ハイハイ、よッ、と…熱ッ…」
溶けた金属が入った容器を傾けると、ドロドロ赤い液体
を金型に流し込んだ。終われば次、また次と、同じ作業を繰り返す。
「でもこの奴隷服が無かったらすぐに倒れちゃいそうだな…」
「ホントですよ…これを着てても暑いんてますからね…皆よく頑張って働いてますよ」
僕等の周りでも奴隷達が同じ作業を行っているが、あまりの暑さに休憩を取りながら作業している。
「兄さんたち、頑張るのは良いが倒れるなよ?」
「ありがとう。気をつけるよ。そうだ。なあ、ここでは他に何を作ってるのか知っているか?」
僕は話しかけて来た奴隷の男性と雑談しつつ、ライオ君と息の合った作業を続けた。
「見ない顔だが新人か?それにしては手慣れてるな…、ここでは武器を作ってるぞ。最近では魔物退治に使う武器が多いみたいだ」
「魔物退治用?ここで?」
「ああ、何でも神聖な魔力が手に入ったとかで、大量生産を開始したって話だ」
「へえ…そうなんだね。ありがとう。ライオ君。少し休憩しようか?」
「ん?了解です」
少し離れた所で休憩すると、
「さっきの話なんですけど、どう思います?シャナちゃんと関係がありそうですけど…」
「間違い無いだろうな。シャナを聖女として攫ったんだ。そのシャナを使って魔物に対抗する武器を作ってるだろう」
「問題は何で魔物がそんな武器を作ってるかって事ですね」
「ああ。でもそれならそれで使い道があるな…よし、もっと武器を作っておこう!」
その日は夜まで武器造りを行った。充てがわれた部屋に戻り、煤で汚れた体を『クリーン』で綺麗にすると、
「あ!ズルい!私も浄化してください!」
「ん、私も」
「私もお願い。午後の作業場はちょっと大変だったわ」
「そら、『クリーン』!お疲れさん。こっちは肉体労働だったぞ。ソッチは?」
帰って来たサキュ達からも情報を貰いながら、晩飯を食べる。彼女達の方は奴隷の子供達と一緒に掃除や洗濯など雑務を行っていたそうだ。
「子供まで居るのか…」
「ええ、何処かの街ごと奴隷にされたそうよ…シャナを攫ったドラキュラって、随分とやり手のようね」
「成程な、占領した街で奴隷を確保。戦力になる男達は人質の家族と一緒に地下に放り込まれるって訳か」
「他にも恋人やパーティメンバーと一緒に連れてこられた冒険者も多いみたいですよ」
「簡単には反抗できない訳だな…しかし、これはこれで…」
「ええ、人質の心配と、この枷さえ無くなれば…」
「ん、戦力は十分!」
「それにあの兵士さんみたいな味方も居ますからね」
「ゆっくり準備して、か。よし、大体の目的は決まったな。僕達は奴隷達の解放と武器の調達だ。足元からドラキュラを切り崩すぞ!」
・・・
・・
・
フィズ達が目的を定めたころ、外から支援しているルルは地上の屋敷を空から監視していた。スキル『千里眼』で見透す風景にはシャナの姿が映っていた。
「へぇ、あのシャナがサキュちゃんみたいな事をするとは…あれがフィズさんの話していた性女の影響なのか?それにしてもあんなに多くの相手をするなんて…」
ルルの目には結界を張り次々に送り込まれる改造人間達を正気に戻そうと奮闘する少女の姿があった。
「ぐがアァ…」
「皆さん、我慢せず悪意を出し尽くして下さい!あ♡いっぱい出たぁ♡」
真性結界を利用した同時自動手淫にて一斉に搾り取られる悪意に満ちた男達の精液。それを回収するシャナだが、魔力回復を伴う行為は彼女の頑張りの成果だ。
「エヘヘッ♡魔力も回復できて、皆さんを正気に戻せるなんて一石二鳥ですね…はぁ…でも早くフィズさん達に会いたいな」
「失礼します」
そんな事を考えていると、丁寧に扉を開けた改造人間が部屋に入ってきた。彼らは最初に正気戻したグループだが、こうやって時折部屋を訪ねてくれる。そんな彼らから、
「シャナ様、実は…」
「やっぱり来ていましたか!それにこんな言葉をくれるだなんて、フィズさん、嬉しいです♡」
「じゃあ俺たちはまた任務に戻るぜ。しかし、『待ってろ』だなんて、もう少し気の利いた言葉があるんじゃ…」
「おい、不敬だぞ。シャナ様の仲間だ。信頼してるんだろ?」
「そうだぜ。それにシャナ様の安全を守るのは俺たちにしか出来ないんだ」
「いや俺はそんなつもりじゃ…スマン」
「謝らないで下さい。この言葉を届けてくれただけでもありがたいです。勇気を貰えた気がします♡」
「シャナ様…、くっ…」
「あら♡また悪意が溜まっちゃったんですかね?♡」
シャナの屈託のない笑顔に当てられたのか、男達の男根が布越しに前に張り出した。それを見逃さなかったシャナは、
「うふふ♡溜まると体に毒ですから、スッキリしちゃいましょう♡」
そう言うと、妖艶な笑みを浮かべて男達の腰布に手を掛けるのであった。




