第八十九話 夢のなかで
眠りについたフィズは気が付くと白く何も無い空間に居た。白く汚れの無い平らな床と、同じ様に白い1色のの空が何処までも続いていた。
「ここは…女神様の所か?」
見覚えのある景色を口にすると、澄んだ声が響いた。
『お久しぶりです導く者よ』
「女神様…」
『ええ。私の思った通り、貴女のお陰で勇者が覚醒しました。これからも仲間達と共に世界の安寧を取り戻して下さい』
「はい…それなんですが、仲間が行方不明に、そうだ!こうしちゃ居られないんです!早く戻らないと!」
焦る僕に女神様は優しく微笑み、
『大丈夫です。貴女の大切な少女は私の祝福で守られています。暫くは彼女を守ってくれるはずです』
「ほ、本当ですか!?でも、早く探さないと…」
『彼女の行方ならきっと隣で寝ている家妖精が知っています。彼女にも私の祝福が届いているはず。彼女と共に、性女を救ってください』
女神様はそう言うと、僕の額に指先を伸ばした。暖かい光に包まれると、次に目を覚ましたのは見慣れた部屋だった。
「あ!フィズさんも起きたんですね!」
「ん?ん~…おはようライオ君、ルルは?」
「ルルちゃんなら少し前に起きましたよ!フィズさんを起こそうとしたんですが、全く起きなくて…心配しましたよ…」
そうか…女神様の所に行っていた所為か…
「心配かけたね…、皆の所に行こうか?」
「はい!」
ライオ君に連れられて、みんなが待つリビングへと移動する。テーブルにはガツガツと食事を取るルルの…ん?…
「あ!フィズさん!おはようございます!」
「ん?ああ、サキュおはよう…なあ、もしかしてそこに居るのはルルか?」
「お!フィズさんも起きたのか?随分とお寝坊なんだな」
「ルルッ!良かった、姿はちょっと変わったけど、いつも通りのルルで安心したよ」
「わあああッ?!フィズさん?!どうしたんだよ?わーーーッ、そんなに強く掴まないでくれぇぇッ」
ちょっとだけスタイルが良くなったルルに驚きながらも、フィズは彼女を両手で掴むとくるくると回った。ちょっとだけ重くなった妖精は緑色の羽が白く透き通り、儚い光を発していた。
「ルル…進化したのか?」
「ああ、そうみたいだぜ。いつの間にかこの姿になってて、その所為かお腹が減って大変だったぜ…」
「はあ?そうなのか?」
僕の問いにその場に居たセシリアも、
「貴方が起きる前にルルが目を覚ましたんだけど、急に『お腹減った~』ってリビングに出て行ったと思ったら、ご飯を今みたいに食べ始めたのよ。そしたら…」
「姿が変わったって訳さ。自分でも驚いたぜ」
「ああ…これが女神様の言っていた…」
僕が一人納得していると、スーが不思議そうな顔でのぞき込んできた。
「ん?どうかした?」
「あ、いや、何でもないよ…そうだ!ルル、シャナが居ないんだ!何か知らないか?」
「あ!そうだよ!シャナが連れ去られたんだ!アイツは確か魔王の側近でドラキュラ嬢だった。それにメデューサの奴もいたぞ?確かフィズ達にやられて相当恨んでるって噂があったけど…」
「そんな、シャナ…」
「大丈夫!オレの新しいチカラでシャナの場所に導いてやるぜ!」
「!?」
ルルは自信満々に僕等にそう告げてくれたのだった。
・・・
・・
・
「あのさルル?」
「ん?なんだ?」
「どうして僕達裸でベッドに寝てるんだ?」
ルルは僕を寝室に連れ込むと、ニヤリと笑い僕を裸にひん剥くと、小さい体を使って奉仕し始めた。うっすらと光る肌を滑らせ、肌を重ねるルルのお陰で、僕の性欲は魔力へと変換された。
「おお!凄い魔力が出来上がったぞ?」
「えへへッ。じゃあオレに魔力を注ぎ込んでくれ」
白い羽を羽ばたかせ浮かぶルルの白いお腹に手を当てると、彼女と作り上げた魔力を存分に注ぐ。
「これで良いか?」
「うん♪見てて。すうぅ…シャナの場所を教えて『神託』!」
神々しい光がルルを照らす。進化したスキルで情報を得ているようだ。
「どれ、ルルの状態はと…」
~ルル 進化後~
種族:家妖精→女神の巫女Lv1
名前:ルル
年齢:不明
状態:健康、ふたなり
装備:月光の衣
スキル:重力操作→重力魔法New!、家の守り→守護New!、監視→千里眼New!、菜園→豊穣New!、家事→使徒召喚New!、神託New!
重力魔法:重力、重量を操作
守護:結界を生成する
千里眼:レベルに応じてより遠くを見通せる。限界距離100m。
豊穣:植えた作物に豊穣を齎す
使徒召喚:家事に戦闘に従事する使徒を生む。生成数1体。
神託:女神様から断片的な情報を得る。女神様の目は常にこの世を見通す。(魔王の支配権は精度が極端に低下する)
「視えたよ…シャナちゃんはやっぱりドラキュラの所に居るみたい…ここは、魔王領から少し離れた人間の街?…」
「人間の?何か目印は無いか?」
「うーん…大きな白い建物…教会?多くの人が集まってるよ…」
「交易が盛んな、大きな教会のある街…ギルドに聞けば何か分かるか…他には?」
「…うーん、これ以上は…あ、奴隷が沢山売り買いされているみたいだけど…」
「奴隷…分かった。ありがとうルル」
魔力を極端に消費したのか、ゆっくりと降りて来たルルを両手で支えるように受け止めると、『クリーン』を体にかけ綺麗にする。新しくなった真っ白い衣を着させるとみんなの待つリビングへと戻った。
「終わったの?」
「ああ、シャナの居場所の手掛かりが掴めた。でも正確な場所までは…」
「そう…当てはあるの?」
「いや…取り合えずギルドに行ってみようかと思う。セシリアも一緒に来てくれないか?」
「もちろんよ。サキュとスーはルルをお願い。ライオは少し休んでおいてね」
「よし、行こうか」
「ええ」
皆を家で待たせ、セシリアと僕はギルドへ向かった。ルルから情報をギルドのお姉さんに伝えてみたが、
「すみません。その情報だけでは数か所まで絞ることしか…」
「そうですか…いえ、ありがとうございます」
ギルドを出た僕たちはカレンさんから聞けた情報を手に、もう一つの場所に移動した。いつもお世話になっている魔道具屋だ。ここの店主ならもっと絞り込めるかも知れないという期待を胸に、相変わらず人気の無い店の扉を開ける。
「すみませーん」
「あら!フィズさんとセシリアさんじゃない。この前は魔石をありがとう。お陰で作りたかった魔道具が沢山作成できたわ」
「それは良かった…今日はちょっと相談に伺ったんですが…」
「相談?何かあったの?」
「ええ、実は…」
僕は事のあらましを店主のお姉さんに伝えた。話を聞いたお姉さんは、
「ドラキュラ…ドミニク・ラウローズ・キュ・ラミーが支配する街が一つあるわね…」
「ドミニク・ラウローズ・キュ・ラミーですか?その、彼女がドラキュラ?」
「ええ。ドラキュラ族のお姫様よ。ラミー嬢は現在の魔王の側近として力を付けていると商人の間でも噂よ」
「商人が?」
「ええ、衰退した教会と交易の街ラウローズ。きっと連れ去られた仲間はそこに居るはずよ」




