第五十五話 ダンジョンの悪魔
行方不明者の捜索のため、ダンジョンに潜った僕達は早々に彼らを発見した。スライムに取り込まれ魔力を失っていた彼らの為に、サキュとライオ君の頑張りで?無事に魔力ポーションを作成する事が出来た。
「セシリア。そっちの子たちにも飲ませてやってくれ」
「分かったわ。スー手伝って」
「ん、任せて」
手分けして助け出した男女5人に魔力ポーションを飲ませる。すぐに効果が出たのだろう、瞼を開き辺りを見回している。
「あ、助かったのか!?」
「ああ、気分はどう?」
「最悪な気分だ。でも命が有るだけマシさ」
「良かった。目覚めて早々で済まないが、ここに居るので全員か?」
男の冒険者は介抱されている者達を見て、焦った様子で、
「いや、俺の相方が居ない!彼女を見てないか?黒い長い髪をしているんだ」
助け出された冒険者の中にその様な髪の長い女性は居ない。目を覚ました他の冒険者も分からないと首を横に振っている。
「クソッ!俺も探して…ッく…」
「まだ全快してないんだ。ここは俺達に任せて」
「しかし…」
「ライオ君の言う通りだ。僕達が創作して来るから、貴方達はここで待って居て欲しい」
見たところ装備も壊れ、戦える様子では無かったので、僕は防音の天蓋を取り出すと彼らをそこに避難させた。
「じゃあ大人しくしてて下さいね」
「ああ、済まない。宜しく頼む…」
僕達は彼らと別れると、スライム状の液体を『クリーン』で除去しながらダンジョンの奥を目指した。
「しかし厄介ね。フィズが居るから安心だけど、彼らの話だと、スライムの中を移動していたらいつの間にか身動きが取れなくなったそうよ?」
「魔力に反応するのかな?これ自体が魔物って事は無さそうだけど」
試しに魔法を放つが魔法を吸収して逆に増えた。それに驚いたライオ君が持っていた魔力ポーションを地面に落とし、スライムの近くで割ってしまった。
魔法の源である魔力を直接食ったスライムは一瞬輝きを増すと増えるかに見えたが、急激に萎んで消えてしまった。
「魔法は良くて、魔力ポーションはダメなのか?」
「多分、濃度の問題ですね。吸収しきれない分、魔力がスライムを破壊したんでしょう。元々耐性は低いみたいですし」
「ふーん。まぁ浄化しちゃった方が楽だよね」
幽霊ダンジョンであるが、この階層ではそれらしい魔物は全く見かけない。全てがスライムに飲み込まれたように、とても静かだ。
「あ!この先に強い魔力反応が有りますね…1つ、2つかな?」
「スライさんかな?もう1つは、魔物か?」
「行ってみましょう」
「おい!気を付けろよ!」
セシリアはそう言うと自分にバフを掛けて一足先に飛び出した。地面を覆うスライムに足を取られる事無く、猛スピードで走り抜けるセシリアを、僕らは浄化した道を急いで追った。
「ん?あれか…お姉さん?」
セシリアの目に は、広い空間に佇む女性の姿が見えた。黒く長い髪の女性、彼女が最後の行方不明者だろう。セシリアの呼びかけにこちらを振り向いた彼女は、
「ごぼぼぼッ…」
「なにあれッ?!」
「ごぼッ…ごぼごぼごぼッ!…」
虚ろな表情で口から緑色のスライムを吐き出す様子がセシリアの目に飛び込んで来た。そればかりか、どこからともなく女性とは思えない声が響いた。
「ああ?お前、冒険者か?それにしちゃ随分魔力が少ねえな」
「誰?どこに隠れているの?出て来なさい!」
「くくく、どこにだって?目の前に居るじゃねえか。俺はここだぜ?」
「えっ?!」
声の主は。彼女の口から溢れ出ているスライムそのものだった。ズロズロと蠢くスライムに、顔が現れ此方を見て話しかけている。
「お前、冒険者だろ?コイツを助けに来たのか?」
「そうよ。彼女を解放しなさい!さもないと、」
「俺を斬るってか?アハハハッ、無理だぜエルフのお嬢ちゃん。何せコイツの腹の中に居るんだ。この女ごと俺を斬るっていうなら話は別だがな?」
「くっ、卑怯者っ!」
「アハハハッ、賢いだろ?しかもコイツはなかなかイィ魔力を持って居たからな。暫くはコイツを養分にしてやるさ」
くっ…体内に魔核が有るんじゃ手出しが出来ないわね…
「セシリア!」
「フィズ!遅かったじゃない」
「悪いな。それで状況は?僕の目は良い様には見えないぞ?」
「おうおう!ぞろぞろとお仲間も!そこそこ魔力を持ってるじゃねえか。俺様の為にこんな奥まで来てくれたのか?」
「成程…最悪な状況って事か」
「ええ…」
本体が彼女の中に居るのなら、フィズの浄化でも無理ね…何とかして本体を取り除かないと…
「ククク、俺様をどうにかしようと考えているみたいだな冒険者!ムリムリ、その前にこの女が死んじまうぜ!」
こちらの焦りを逆撫でするように煽るスライムは、口から女冒険者の体内に隠れてしまった。ぽっこりと妊婦の様に膨れた腹部から体内のスライムの大きさを伺える。
「サキュ。魔力ポーションは?」
「さっきライオ君が割ったのが最後ですね…」
「はわわわわッ、す、スミマセン!」
「いや、魔力ポーションじゃあのスライムを破壊する事は出来ないだろうな…」
「くっ、そんな…じゃあどうやって…」
「ん、ポーションでダメなら、もっと強力なやつがあるじゃない」
スーは僕を見ながら、
「いや、そうだけど…」
「ん、このままじゃどうせあの子は助からない」
「そうね…フィズに賭けるしか無いわね」
こうなったら腹をくくるか
「皆、アイツが動かないように彼女を抑えてくれ。アイツを外に引っ張り出してやる」
僕の指示のもと、皆は一斉に冒険者に近づいた。スーは触手で四肢を拘束し、セシリアとサキュは口から暴れ出るスライムを斬り伏せ、ライオ君は『リジェネ』『ガードアップ』で回復と耐久性を向上させた。
「ン?、なんだ。俺にはそんな事しても無駄だぞ」
「あぁ、お前にはな!」
「ああ?!」
しかし、今はそんな事よりも彼女からスライムを取り除かなければ…僕は魔力を捻出すると、
「いくよ」




