第四十七話 家にい憑くモノ
バカンスから帰って来た僕たちは、女将さんに紹介された空き家を訪れた。ボロボロだった家だったが、浄化した結果、新品同様の立派な家に変わってしまったのだ。
「うわぁ!?凄い綺麗になりましたね!扉だってあんなに重かったのに軽く開きますし、室内も見違えるほど、っていうか全然違いますけど!?」
「ええ、さっきのお化け屋敷とは全く違う良い感じね。なんだかすっかり変わったわね」
「これ、女将さんが見たらビックリするんじゃないか?」
まあ、あれだけボロボロになるまで管理していたんだ。よっぽどの事が無ければここに来ることも無いだろう。
「よし!自分の部屋を決めて良いぞ。仲良くな!」
「「「わーい!」」」
ライオ君と魔物組は早速部屋を見て回り始めた。シャナは一番幼いが、
「このキッチン凄く良いですね!水回りが使いやすそうですし、洗濯もしやすそう。お庭も広いからいっぱい干せますね!」
「ああ、その辺はシャナに任せるよ。お前も自分の部屋を見て来て良いんだぞ?」
「え?私はフィズさんとセシリアさんと一緒ですよね?」
「え?そうなのかセシリア?」
「ええ、シャナだって貴方の妻なんだもん、良いんじゃないかしら?その方が都合が良いわよね♡」
「お、おう」
まあ、部屋は余っている見たいだし、一人になりたい時は自由に使って貰えばいいだろう。部屋が決まったらやる事は一つだな。
「魔道具屋に行って色々と買い物して来ようか?シャナ、ライオ君達を呼んで来てくれないか?」
「分かりました。お買い物ですね♪」
「ああ♪」
バカンスで行った先で、スタンピートや大量の海の魔物を狩ったお陰で報奨金をたんまりと貰った。新居に置く家具やアイテムを買おうと、久しぶりに魔道具屋に来てみれば、いつものお姉さんが出迎えてくれた。
「あら?随分久しぶりね」
「はい。昨日まで暫くこの町を離れてましたから」
「ふーん…見ない顔も増えちゃって…随分と賑やかになったわね」
「そ、そうですね…その、今日は家具とか色々見たいんですがありますか?」
「家具なら奥にあるわよ。ここは狭くて置けないのよ。着いて来て暮れるかしら?」
お姉さんに案内された倉庫の様な所には、ベッドやタンス、テーブルに椅子がずらっと並んでいた。僕らは思い思いに見て回ると、欲しい物をリストアップし、
「毎度あり♪届ける事で出来るけど?」
「ありがとうございます。マジックバックに入れて持って帰りますよ。じゃあ…」
「分かったわ!あら?今日はあっちに行かないの?」
帰ろうとした僕に、チラリとお姉さんの視線が『18禁』と書かれた垂れ幕を見る。あの奥はとても魅力的なアイテムが多いのだが、
「い、いや…今日は…」
「あの奥には何があるんです『18きん』…?」
「うふふ♪とっても良い物が置いてあるのよ?貴方達は初めてね?」
「そう。この町に来たのも今日が初めて」
「はい。入っても良いんですか?」
「そうね…そこのお兄さんが良いって言えば行けるはずよ?」
スーとシャナがキラキラとした目でこちらを見て来る。ああ、言わなければ良い物を…しかし、彼女達に見せて良い物だろうか…
「良いんじゃない?いつかは知る事だし、別にこの2人なら問題ないわよ」
「セシリアが良いって言うなら…」
「ヤッター!」
「シャナ、行こう!」
許可を出すとシャナとスーは駆け足で暖簾を潜り、禁断のエリアへ足を踏み入れた。追いかけて僕らも『18禁』の暖簾を潜ると、やはりエッチなアイテムが満載の如何わしい空間が広がっていた。
「はわわッ?!な、何ですかここ?!凄くエッチな形のアイテムがいっぱいッ!?」
「何これ?私の触手みたいな置物もある」
スーが手に取っているのは「異形触手地獄」と書かれたデカめのディルドだ。あんなのが入るのはかなりの上級者だろう。
「あ、このメイド服可愛いですね♪あれ…でも正面だけで後ろは何も無いですよ?作りかけですか?」
シャナが手に取っているのはメイド服なのだが、
「それはそういう服だよ。その…いつでもエッチな事が出来るように後ろが無いんだ…」
「そ、そんな服があるんですか///」
顔を赤く染めキョロキョロとするシャナは、他にもいろんな服を手に取ってはブツブツと呟いていた。スーも「これ、ライオ君に仕えるかも」とかブツブツ言いながらアイテムを見て目を輝かせていた。
「私もちょっと見て来るわね♪」
「ああ」
そう言うとセシリアもシャナと服選びに混ざって行った。こうなると女性陣の買い物は長い。僕は仕方なくお姉さんと世間話でもしながら時間を潰すことにした。
「へえ…南の海でもスタンピートが起こったのね?無事に解決するとは流石ね」
「ええ、まあ。こっちでは何か事件とかありました?」
「そうね…そう言えば、珍しく貴方達以外のお客さんが来てね。武器やアイテムを買い漁って行ったわね」
「へえ、こんな店にまで買いに来るなんて、よっぽどの事があったんですかね?」
「ちょ、ちょっと!こんな店って言うのは失礼じゃない?まあ、随分慌てた様子だったけどね。ここから殆ど出ない私には世間の事なんてこれっぽっちも分からないわよ」
「偶にはバカンスに行ったらどうです?気分転換になりますよ?」
「うーん…そうね…考えておくわ」
そんな話をしているとセシリア達の買い物も終えた様で、支払いをするとマジックバックに全部ぶち込み。早速家に帰った。買った家具や服をそれぞれの部屋に置き、購入したソファで休んでいると、
「ふう、疲れた」
「お疲れ様でした。お茶をどうぞ♪」
「お、シャナ!気が利くな…ってそのメイド服///」
「えへへ///似合います?」
お盆を持ちくるりと一回りするシャナは、先程購入したエロメイド服(前だけVer.)を早速来て給仕してくれた。背中から細い腰、お尻から脚まで丸見えのメイド服が揺れ、可愛らしい下着がお尻を隠している。恥ずかしそうにお盆で顔を隠しながらこちらを伺うシャナに、
「あ、ああ。凄く可愛いよ♡」
「やったー!可愛いって言われましたよセシリアさん!」
「でしょ?フィズが好きそうな恰好だもの、ね?」
「せ、セシリアもなかなかセクシーな装いだね?!」
「ええ?牛さんビキニって書いてあったわ♡どうかしら私の胸、牛みたいに垂れてないかしら?」
セシリアは牛柄の下着姿で、頭には牛の垂れた耳、首に大きめなベルが付いたチョーカー。ただでさえデカい乳が面積の小さい牛柄の布で押さえられている。足元はハイソックスで、ショーツも全てが牛柄だった。
「ムチムチしていてとんでもなくエロい牛だな♡」
「ありがとう♡」
「うむむ…やはりフィズさんはセシリアさんの様なムチムチした体が大好きなようですね…」
「ご、誤解だぞシャナ?!僕はシャナの体もセシリアと同じ位、大好きだからな!?」
「ううッ…本当ですか?嬉しいです///」
全く、女子は分からんのだろうか?巨乳には巨乳の、貧乳には貧乳の良さがあるってもんだ。しかし、昼間から目のやり場に困るな…そんな事を考えていると、
「ふぃ、フィズさ~んッ!!!」
「きゃッ///」
僕の名前を呼びながら、ライオ君がすっぽんぽんでリビングに走り込んで来た。帰って来てから魔物組と3人で自室に籠っていると思ったが、案の定セックスに勤しんでいた様だが、何かあったのか裸で駆け込んできたようだ。ライオ君の股間は縮こまり小さくなって皮を被った可愛いらしい姿をしていた。
「どうしたんだライオ君、そんな可愛らしい物を見せつけながら僕を呼ぶなんて?」
「え?あ///それは///その…ってそんな事よりも!出たんです!」
「出た?出たって、何が?」
「だから!お化け!お化けが出たんですよ!!!」
「え!?」
驚く僕と、お化けと聞いてさらに驚くセシリアとシャナは二人で抱き合い震えていた。うーん、ナイスお化け!っと、そんな冗談よりも、今は、
「案内して!」
「こっち!」
僕は裸のライオ君にタオルを投げながら案内させた。僕がその部屋に着くと、甘い香りが充満した部屋の中に、これまた裸で悪魔姿のサキュと、魔物姿で触手を生やしたスーが、壁を睨んで佇んでいた。
「サキュ、スー大丈夫か?」
「あ、フィズさん」
「これ見て」
「ん?コイツは?」
そこに居たのは蝶の羽が生えた妖精だった。緑色の髪に緑色のひらひらとしたワンピース姿で愛らしいが、
「おい!お前らが勇者一行だな?俺をこの家から出せ!」
「ん?俺?ちょっと待て、この家から出せってどういう事だ?それにお前は誰なんだ?」
「俺か?俺は魔王軍直属諜報部隊ピクシーズだ。魔王様が勇者の動向を気にして居たからな。この俺様がわざわざ出向いたんだぜ。お前らを追ってボロ屋に入ったはずなんだが…凄い光に包まれて気が付いたら、こんな妖精みたな格好になってたんだ!だから俺を元に戻してここから出せ!」
「え?魔王?魔王ってあの?」
「おう!」
「諜報部隊ですって?」
「おう!」
「ピクシーズって確か…」
「うん、魔王新聞に載ってた。確か、最近出来た人間達の動向を陰から調査する特殊部隊だって…」
ん?魔王新聞?魔王って新聞作ってんのかよ!?
「そうだぜ!俺がそのピクシーズだ。恐れ入ったか?ふはははッ…って何でお前らが魔王新聞の事を知っているんだ?人間じゃないのか?ってかその恰好、サキュバスにスキュラじゃねえか?!何で勇者や人間と一緒なんだ?それにさっきまでエロい事してたよな?お前らどういう関係だ?事によっちゃ魔王様にすぐに知らせて…」
「あ~、フィズさん、この子、魔族の、それも魔王の手先ですね」
「そうか…随分可愛い姿だけどな。元はピクシーって事か?」
「そうみたい。しかし、諜報員の癖に、敵に情報をペラペラと喋るようじゃ、ね…」
「おい!こそこそと何を話してるんだ!?いいか?いい加減俺をこの家から出せ!」
「あー、すまん。出て行くなら勝手に出て行ってくれるか?作戦は失敗したんだろ?さっさと帰れ。しッしッ」
僕は妖精姿のピクシー?に出て行くように促したが、
「な、お前が俺をこの家に縛り付けたんじゃないのか?」
「は?僕等はそんな事した覚えはないぞ?ちょっと家を綺麗にしようと『クリーン』の魔法で浄化しただけだぞ?」
「はぁッ?!『浄化』だ?!それだ!それ!」
「あー、分かった。貴方元々妖精だったのね?しかも家妖精。それがピクシーに落ちたって訳か」
「そういう事?」
「なあ、僕らに分かる様に説明してくれないか?」
サキュとスーによれば、この妖精は元々家に住まう家妖精との事だ。スーみたいに魔物に堕ちてピクシーになったが、僕の『クリーン』で浄化された結果、意識はそのまま、体は妖精に戻ったと言う訳だ。しかも、この新しくなった家と共に強制的に縛り付けられたらしい。
「つまりあれか?この可愛い妖精が家に居るって訳か?」
「そうみたいね。噛みつかなければ私は良いわよ」
「可愛いのにちょっと煩いのは、残念ですけどね…」
セシリアもシャナも問題は無い様だ。しかし、その本人はと言うと、
「そんな…俺様が人間のお世話を?またあの頃の様にか?」
「君、何かあったの?」
「ア?俺の話を聞いてくれるのか?」
「おう♪俺で良ければな」
「実は…」
ライオ君の優しさがピクシーに刺さったようで、ぽつりぽつりと魔物落ちする前の話をし始めた。僕たちはテーブルやベッドに腰かけ、その話をお茶を飲みながらゆっくりと聞いたのだった。




