第四十六話 帰郷
昨晩は海の女神との対面を果たし、スーの誕生の秘密を知った。改めてスーを頼まれたフィズとセシリアは、お礼に女神が残した魔力水を堪能したのだった。
「で、コレがその魔力水ですか?確かに…この前に来た時に比べて魔力量が濃くなってますね!それに何だか…」
「フィズとセシリアの魔力も感じる」
「ん?スーちゃん、どう言う事?」
「ふ、ライオさんにはまだ早い。ね?ご主人様」
「うーん、早いと言うか鈍感というか…」
「なんだよサキュちゃんまでさ?!」
そのやり取りを傍目に見ていた僕は、サキュ達に魔力水の回収をお願いする。回収はあっという間に終わり、泉は空っぽになったがすぐにじわじわと魔力水が滲み出できていた。
「ん、やっぱり…これはいつもの魔力水。濃さが全然違う」
「よし。じゃあ一度街に戻ろうか。女将さんに挨拶をして、街を立つぞ?」
特に反対も無く、僕らはスーの呼び出した船で街まで戻ると、お世話になった女将さんに挨拶に行った。それは、シャナの新たな旅立ちでもあった。
「行ってきます!」
「ああ、体に気をつけるんだよ?何時でも帰って来て良いんだからね?」
「うん♪ありがとうお母さん♪」
「ああ。不束かな娘だけど宜しくね」
「はい。任せてください!」
やはり娘の旅立ちとなれば淋しいのだろう、女将さんの目にもじんわりと涙が溜まっている様だった。
僕達は、馬車に乗り込むと、来る時よりも増えた仲間達を連れて帰路についた。
・・・
・・
・
「さあ、ここがシャナの僕達の町だ」
「わぁ♪素敵な町ですね!」
半日もかからず町に帰ってきた僕達。馬車を走らせればすぐの距離にシャナも安心している様子だ。
観光地の南の街に比べれば賑やかさは無いが、ギルドや市場の賑わう僕等の町だ。
「気に入ってくれると良いんだが…」
「勿論です。それにどんな所だろうとフィズさんが居れば私は幸せですよ!」
「そうか♪なら何処にでも一緒に行けるな♪」
「ハイ!」
シャナをおばさんにあたる女将さんに合わせると、こっちの女将さんも驚いていた。まさか自分の姪っ子が僕らと帰ってきたのだ。
「へぇ~、まさかあのシャナちゃんが自分から選ぶだなんて、くれぐれも宜しく頼んだよ!」
「ああ、もちろんです!」
「しかしあれだね…貸してる部屋もこう人数が増えちゃ狭いだろうね…そうだ、町外れだけど空き家が有るんだ。そこを使うかい?」
「空き家、ですか?」
「ああ、昔の知り合いが使ってた家なんだが、今じゃ管理するのも大変でね。あんた達なら格安で貸してあげるよ。周りも広いから自由に使っていいよ」
「へえ、じゃあそうさせて貰おうか?」
「いいわね。楽しみだわ」
「じゃあ早速見に行こう!」
僕らは女将さんから空き家のカギを受け取ると、町外れに佇む家に向かった。宿からはギルドを挟んで丁度町の反対側にあるため、女将さんもたまにしか行かないとか、
「聞いていたけど、これは…」
「ボロボロね…」
「うわあ…お化けでも出そうですね」
「サキュちゃん?あんまり怖い事言わないでよ?!」
「ん?ライオさんはお化けが怖い?」
「そ、そんな事は無いよ!?」
しかし、ボロボロの家だけど、何とか使えるのかな?
「よ、よし、中を見てみるか…」
僕は硬い鍵をガチャっと開けると、建付けの悪い扉をギギギぎーっと開けて中に入る。埃っぽい空気が鼻につく。管理していたとは思えない程、薄汚れた家はあちらこちら痛んでいた。
「うわあ…本当にお化けが出そうだな」
「ちょっとフィズまでそんな事言わないでくれるかしら?」
「何だよ?勇者のセシリアもお化けが怖いのか?」
「うッ!?ま、魔物と幽霊は違うでしょ?!嫌な物は嫌なのよ」
「そういうもんか?なら浄化しておくか?」
僕は家全体に『クリーン』を掛けた。いつもより激しく光った『クリーン』の魔法。眩しい光が収まると、目の前には新品同様に綺麗になった家があった。
「ええ!?綺麗になりましたよ?!どういう事ですか?!」
「あははは…さすがフィズさんだよ…」
「ん…なんでもあり…」
「はあ…全く、女神の使徒様は何でも出来ちゃうのね…」
「みんなそんな目で見るなよ?!僕だって驚いてるんだからね!?」
一瞬で綺麗になった家と僕を交互に見て驚く皆の視線が刺さる。その視線から逃げるように、僕は改めて家を見て回るのであった。




