第四十五話 月夜
皆それぞれ、小島を満喫したようで、その日の夜は早々に眠ってしまった。唯一、睡眠を取らないスーだけは、暫く離れる小島を見回って来ると言い、1人で夜の闇に消えて行った。
「スーは出掛けたの?」
「あぁ。なんだ、起きてたのか?」
セシリアは乱れた髪を長い耳に掛けながら、天蓋から出てきた。僕達と別れて魔物狩りをしていたそうだが、大層な数の海の魔物と戦って来たそうで、一緒に付いて行ったサキュやライオ君はかなり疲弊して帰って来た。
「疲れたんじゃ無いか?」
「私は元気よ?それにサキュやライオだって、戦闘が早く終わったら早々に船の中で盛ってたのよ?スーも付き合わされちゃって大変そうだったわよ?」
「アハハハッ、そうか、元気で何よりだな♪ん?」
「あら?綺麗ね」
海岸に出て波の音を聞きながらそんな話をしていると、雲に隠れた満月が明るい光を放ちながら現れた。闇を切り裂く様に月明かりが僕らを照らす。
「覚えてる?最初に会った時も月が輝いて居たわね」
「ああ、覚えてるさ。裸のエロいエルフが自決しようとしてたからな。忘れられないさ」
「なっ///ちょっとデリカシーが無いんじゃない?!」
「ゴメンゴメン。でも僕にとっても忘れられない出来事だったさ。だから君には笑っていて欲しいんだけど、な!」
「ちょっ?!いはいわ!えぃ!」
「うがっ?!」
茶化す様なフィズは、ご機嫌斜めのセシリアの頬を引っ張り無理矢理口角を上げさせる。お返しとばかりにフィズの
頬を引っ張り、つねり合うと、
「「ぶっ、ハハハッ!」」
「今じゃ笑い話になって良かったわ。あの時は本当にありがとう♡」
「ぁあ、お互いにな。ありがとうセシリア♡」
2人の周りには、波の音と潮風がそよぐだけで、熱い抱擁を
邪魔するモノは何も無かった。
「そうだ!サキュ達に聞いたんだけど、この海岸近くの森の中に泉が有るそうよ。なんでも魔力が混ざっているらしいわ。見に行ってみない?」
「面白そうだな!行ってみようか」
手を繋ぎ夜道を月明かりを頼りに進む。森の中は薄暗いが所々、月の明かりが落ち、泉のある方へと足元を照らしている様だ。
「不思議ね。まるで私たちを案内しているみたい…」
「ああ…ん?あれか?」
暗い森を進んだ先に、水面に月明かりを湛えた泉が見えた。白銀に輝く泉に誘われるように靴を脱ぎ足を浸す。
「何だか擽ったいわ」
「水がトロっとしているんだ。本当に魔力が混ざってるみたいだね」
「でも、あなたの魔力液とは比べ物にならないわね。それでも自然に魔力が湧き出るなんて不思議ね…ん?」
「どうかしたのか?」
「あれ…」
セシリアの視線の先を見ると、泉の中に透明な女性が佇んでいた。月光が透き通るほど透明な女性はこちらを見ると、
「お二人が勇者と魔法使いですね。月の女神から話は伺っています。まさか、こんなに早くお会いできるとは…」
「そうですが、貴方は?」
「私は海の女神と申します。この海を創造主である月の女神様より預かっています」
「その女神様がわざわざ、僕達に何か御用ですか?」
「ええ、お願いがあってまいりました。この度、貴方達の仲間になったスキュラの事です」
「スー?」
「はい。あのスキュラは、今は魔物ですが以前は私に仕える従者でした。それが訳あって魔物に堕ちてしまい。持ち前の腕っぷしからこの辺りの海域を支配しておりました。私でも手が終えず困っておりましたが、勇者様のお陰で止める事が出来ました。ありがとうございます」
「は、はあ…」
海の女神の話はぶっ飛んでいて驚いたが、スーが元は女神様を守護する従者だったらしい。戦闘力はこの前のシーライオン戦を見れば明らかだろう。しかし、いったいどんな理由でスーは魔物落ちしたのだろうか…
「スキュラの事を今後もよろしくお願いします。彼女は元々繊細で大人しい子でしたから、いい縁談を用意したんですが…まさか彼女が百合だったとは露知らず。私からの縁談を無下にしないと無理をした結果…番の男神との子作り中に発狂しスキュラになってしまい…」
よよよよよ…と泣く海の女神に、僕とセシリアは空いた口が塞がらない思いだった。まさか良かれと思った事が裏目に出た上、最悪の結果を招く事態になってしまったとは…
「ま、任せてくれよ。僕達がスーを幸せにしてみせるからさ」
「ええ、もうすでに幸せそうですが、これからも宜しくお願いしますね」
ん?その言い草だとスーの現状を知っているみたいだな…。怒ってないって事は大丈夫って事だろう…
「この前もここで、あれだけ嫌って居た男性とあんなに楽しそうにまぐわって居ました。あの子のあんな顔が見られて私は安心しました。それでは」
「ははは…」
「ふう…帰ったみたいね」
海の女神はお礼を言うと泉に消えて行った。静かになった泉は女神の魔力が満ちていた。
「お礼のつもりかしらね?明日帰る前にサキュとスーを連れて回収して貰いましょうか」
「ああ、それが良いな」
「ねぇ。その前にちょっとだけ///」
女神の魔力に充てられたのか、体をモジモジとさせ顔を赤くするセシリア。僕の体に身を寄せて迫ってきた。
彼女を抱きしめて、キスをするセシリアも発情したメスの顔をしている。僕達は服を脱ぐと、生まれたままの姿になり、トロっとした泉に全身を浸かりお互いの体を感じ合った。
「こんなヌルヌル、魔道具屋のローション以上に気持ちが良いね」
水の中で頭まで浸かり全身手間魔力水を浴びる。口に侵入した魔力水ごと舌を絡め、指先で、体や足で、全身を溶け合う様に絡め合う。
熱い体を擦り合わせると増大した魔力をセシリアの勇者紋に注ぎ込む。赤く発光する勇者紋が彼女の体を焦がす。
「魔力の所為かな?ちょっとお腹が膨れた様な感じだね。セシリアとの子供が出来たらこんな感じなのかな?」
「本当だわ…赤ちゃん…私になれるのかな?」
「ん?きっと良いお母さんになるんじゃ無いかな?」
「もう///でもいつかはフィズの赤ちゃんが欲しいわ♡」
「ああ、その時はいっぱい赤ちゃんを作ろうな。よし。そろそろ帰るか」
「そうね♡」
泉の中から立ち上がると、新鮮な空気を肺に吸い込む。冷たい空気で肺を満たすと、陸地に帰ってきたことを実感した。
月は未だに明るく泉を照らしており、僕とセシリアを高い空から祝福している様だった。




