第三十五話 支配者
行方不明のライオとシャナを探していたフィズ達は、街を襲う海からのスタンピートを知り、その対処にあたっていた。海賊や怪物が犇めく魔物の軍勢の中、敵として戦場に居たのは紛れも無いライオの姿だった。
スキュラは捕えたライオを再び支配下に置くと意識を刈り取り命令に従うようにした。
「うふふ♪さぁ、さっさと精液を出しちゃってよ!」
命令に忠実になった体は自然と絶頂を迎え、ライオの体がガクガクっと震えると同時に、零れ出る様に精液を吐き出たきた。青臭い匂いが立ち込め、スキュラは苦い顔で、
「うえッ…魔王様ってなんでこんなキモイのを集めるの?!信じられないんだけど…まあ、これは部下たちに回収させるとして…」
実験の結果として、この男の子が『支配』の呪いに掛かったのは、女の様に絶頂した事と関係がある様だ。果たして男全部がこうなるかは分からない。それに労力も考えると…
「男を捕らえて、支配した女に搾り取らせるのが楽だね…、もしくは、まあ、頼りたくないけど、セイレーンやマーメイドに頼むか…」
スキュラは、ブツブツと考えながらライオの拘束を解き、自分の体を綺麗にする。ぼんやりと佇むライオに蔑んだ目を向けると、
「もういいよ。暫くは何もないから休んでなさい。早くそのグロイのを治してよね!」
自分で痛めつけておいて、早く治せとは流石魔物。人間への慈悲など毛頭ないのだが、支配されているライオはそれを命令と受け取ると、
『ヒール』!
回復を唱えて体を完全い回復した。その様子に驚いたのは、スキュラだ。人間の冒険者でヒーラーを見たのは初めてだ。人間に居たら厄介な存在だが、今は自分の支配下…
「ヒーラーか…私の海賊団とこいつが居れば…!!!おい!者ども、狩りの時間だ!今から人間の街を蹂躙するぞ!出てこい!!」
「「「おおおおおおおお!!!!!」」」
深海の暗いそこから亡者達が這い出て来る。海賊の恰好をしたスケルトンにグールの軍勢に、巨大なクラーケンとお化けダコも追従してその姿を見せた。スキュラは船を浮上させると、魔物を率いて港街へと侵攻を開始したのだ。
・・・
・・
・
「ほら、出番だよ!私の仲間を回復させてきて」
「…」
海に現れた海賊軍団は街を蹂躙しようと浜辺から上陸を開始した。丁度フィズらが冒険者に混じり戦闘を開始したが、与えたダメージの殆どは、ライオにより回復され、魔物の軍勢は強化されたのだった。
「くそ…ライオ君がどうして?」
「フィズ!あそこにライオが居るわ!」
「ああ!でも、ここからじゃ僕の魔法は効かないだろうな…何とか接近してまた気絶でもさせないと…」
「…くッ!」
「あ?!おい?!サキュッ?!!」
サキュは険しい顔をしながら魔物が犇めく前線に単身突っ込んで行った。肉弾戦なんか普段は絶対に避ける彼女が、今や拳や尻尾で力任せに相手を甚振り海賊を圧倒しながら突き進んでいく。
「くうぅぅッ!ライオ君は私のモノなんだからッ!絶対に誰にも渡すもんですかぁぁぁーッ!!」
サキュの威圧に圧倒され倒された海賊たちに、ライオからの回復が飛んで来るが、
「フレイム」「セイント」「スピリット」!
再生されるならその前に消し炭にしてしまおうと、僕は魔法で後処理をする。セシリアもバッタバッタと魔物の首を堕としては、サキュの背後をしっかりと守っていた。
「ちッ!何なのあいつらは!もう、邪魔しないでよね!クラーケン!」
前線を押し上げている僕らに苛立ったように、スキュラは怪物を送り込んだ。10本足を巧みに操るイカの魔物が、海賊を飲み込みながらサキュへと迫る。無数の爪が生えた触手をこちらに向け振り下ろし、魔物諸共サキュを叩き潰すが、
「そうはさせないわよ!『ガードカウンター』!」
セシリアの大剣がそれを弾き、体に大きな傷を付ける。一瞬怯んだが、ライオから回復が飛んできて傷がゆっくりと塞がって行く。僕はそれを見逃さず、
『サンダー』×3!
塞がり始めた傷に特大の電撃をぶち込んだ。クラーケンの体を電撃が走り抜け回復が止まると、セシリアが剣を構え力を籠める。
「はああッ!『アンガーストライク』!」
受けたダメージ分攻撃倍率が上昇する一撃をクラーケンの胴体へと叩き込んだ。綺麗に真っ二つになったクラーケンは最早再生することも出来ず、海にその巨体を投げうった。お化けダコが援軍に回って来たが、コイツも周囲からの遠距離攻撃が仇となり、僕の多重魔法でこんがりと焼き上げた。
「なッ?!私のペットをよくもッ…ひぃ!??」
「私のペット?趣味が悪いですよ?」
「な?い、いつの間に゛ぃッ…」
サキュはスキュラの背後に忍び寄ると、長い爪で喉を切り裂いた。青い血が魔力と共に噴き出るが、触手を使いその場から何とか脱出する。首を抑え、サキュと距離を取ると、
「ヒュ~、ヒュ~ッ!!!」と声にならない音をライオに向けて吐き出し、困惑していた。『支配』の影響は声による命令でしか反映されないのだ。呆然と立ち尽くすライオは最早ただの抜け殻であった。
「ンンんんッ!!!!!……っひッ!?」
怒りを込めた表情で、ライオに触手を伸ばすが、
「はぁ…これ以上、彼を傷つけないで貰えます?」
「ひッ…!?がッ…!?」
殴りつけた触手を力強く握られ恐怖してしまった。悪魔の様な瞳がじっとこちらを見ている。怒りに満ちた視線が魂の奥底を支配するように体から力が抜けてしまうと、
「食らいなさい『支配』!」
「ヒュッ!?」
スキュラはサキュに寄って支配されてしまったのだ。
~サキュ レベルアップ~
種族:サキュバスLv3(低級)New!
名前:サキュ
年齢:不明
状態:健康、従属(セシリア > フィズ)
装備:猫耳、バトルメイド服、猫の尻尾
スキル:魅了、性奴隷化、ポーション作成(媚薬)、変化
エナジードレイン、サーチ、支配者 New!
サーチ:周囲の人間や魔物を索敵する。範囲小、精液貯蓄量表示
支配者:それは新たな生の始まり。支配下に置き、完全に命令に従わせる。魔力を全てを使用する
「…」
「や、やったッ…やったよライオ君…」
「サキュちゃん!」
サキュの視線には、意識を取り戻したライオの姿があった。魔力切れで立つのもままならない彼女に駆け寄ったライオはサキュをぎゅっと抱きしめた。
「あはははッ…大丈夫だった?」
「うん…サキュちゃんの方がボロボロだよ、『ヒール』!」
「ん、温かい…ありがとう♡そうだ…あの子も回復して上げて?」
「え?スキュラも?良いけど…『ヒール』!」
ぽわ~っと淡い光がスキュラを癒すと、喉から噴き出ていた血が止まり、傷が塞がる。サキュはその様子を見ると、
「スキュラ、海賊を退かせて船も海に沈めて」
「…」
コクンと頷くと、透き通った声が浜辺に響く。その声を聴いた海賊達は、一目散に海へと帰って行った。その様子に、勝利を確信した冒険者達の歓声が大きく響き渡った。
「サキュ!?ライオは無事?」
「あ、セシリアさん、はい。この通り…でもサキュちゃんが…」
「あははは…ちょっと無理しちゃいました…」
「全く、無茶するなよな。しかし、魔物をペットにしたのか?」
「…」
佇むスキュラを見ながらサキュに問う。まさか魅了を超えた支配まで手に入れてしまったサキュに驚きつつ、僕らはスキュラの船で海底へとやって来た。
「凄いわね…ここ海の底でしょ?」
「コクン…」
「そうだ、ライオ君。シャナちゃんを知っているか?君と同じで行方不明なんだけど…」
「あ。彼女ならそこに…、どうやら支配を受けた俺が連れて来ちゃったみたいで…ごめんなさい」
船の檻の中で眠る様に横たわって居たシャナを救助すると、怪我も無くスヤスヤと眠っている党だった。眠るシャナを優しく揺さ振り起こすと、
「…ん…あ、フィズさん?あれ…皆さんも?どうしたんです?」
「良かった。何ともないか?」
「はい、大丈夫です…あ、そう言えばライオさんが突然起き上がって…ライオさんは?」
「俺はここだよ…シャナちゃん、ごめんね、怖い思いをさせちゃったね…」
「ああ、良かった、あの時は急に起き上がってビックリしたけど、あれ?ここお家じゃないですよね?海の中?」
シャナちゃんは特段怖い思いはしなかったようで、神秘的な海の底から水面を見上げて燥いていた。
「良かったわね」
「ああ、ちょっと秘密が増えちゃったけど、シャナちゃんは口が堅そうだし…」
「でも流石にちょっと心配よね?契約しちゃう?」
「…仕方ないか…シャナ?」
「ハイ?!何ですか?」
「実は…」
秘密の保持を約束させるため、僕とセシリアはシャナに従属を掛けた。本人も致し方ないと了承してくれたのだが…
「本当に良いのか?」
「はい。フィズさんに契約してほしいんです」
少女は、セシリアに付き添われ、僕の魔力で従属化を望んだ。




