第二十八話 夜の散歩
ギルドからの依頼で、オーガ討伐のために山の麓の村へとやって来た一行の目に飛び込んで来たのは、荒れ果てた村だった。その村の唯一の生き残りだった少女から、犯人はオーガでは無く、仮面を付けた人物だと聞いたフィズ達は、山へと続く痕跡を追い、魔物が集まる砦へと辿り着いた。
魔物が犇めく砦の中で、仮面を付けた人物は今回の戦火に酔いしれていた。これまでオーガ達と共に山の麓の村々を襲撃し、人間を掻っ攫ってきたが、今回の村は大当たりだった。質のいい冒険者や男達が多く、これまで集めた精液の量がすでに限界まで達していたのだ。
「くくく、これで計画が進められる…あの方に褒めて貰わねば…」
オーガや山に居た魔物を支配下に置いた仮面の人物は、自身の成果をあのお方に報告する姿を想像しながら、酒を口に運んで空を眺めていた。今日は天候にも恵まれ、朝から人間の精液を搾り取ってすでに夕方。日が沈みかけた空には、星や月が光を放ち始めている。そんな空をうっとりと眺めていると、
「はて…あんな大きな星はあったかしら…」
明るい星が段々と大きくなる。酒が回り霞んだ瞳に、火の玉が轟々と落ちて来たのが目に入ると、やっとそれが星では無いことに気が付いた。
「はッ!嘘でしょ!?お前!逃げぇえ・・・・・・」
チュド~~~~ンッ!!!!!!
砦内に落ちた火の玉は着弾と同時に小爆発を起こした。直撃を受ける者、爆発で吹き飛ばされる者、荒れ狂う稲妻に貫かれる者、熱と光によって炭になる者…その威力は凄まじい物だった。
「な?!ちょっと…やり過ぎじゃない?」
「え?あははは…僕もそう思う…」
「凄い!(ひえ…フィズさんが敵じゃ無くて良かった)」
「わ~…(フィズさんの仲間になって良かった)」
呆然とする仲間たちであったが、それぞれの役目を全うすべく、砦内に強襲した。サキュは捕らえられた人間達の元へ急ぎ、フィズ、セシリア魔物の元へと爆心地付近はすでに多くの魔物が倒れていたが、その中で一体だけ動いている姿が見えた。
「あいつ、仮面を付けているぞ?」
「ええ、じゃあ、あいつが首謀者かしら?」
仮面を付けた人物はこちらに気付いたようで、掠れた声を張り上げて、
「き、貴様らかッ、よくも私の計画を邪魔してくれたなッ!!!!」
黒焦げたオーガの巨体をこちらに蹴り飛ばして姿を見せた姿は、ウネウネと蠢く髪の毛を生やした女性であった。仮面から覗く目から僕達に向け光線を放つ。急な攻撃を何とか避けたがその光線があったった魔物の遺体が石に変化したのだ。
「…あなたメデューサね?」
「あら、私の事を知っているの?」
「ええ、かなり昔に耳にしたことがあるのよ…あの魔物の様に光線を当てられた人達が石になって命を失ったそうよ」
「メデューサ…」
よく見ればウネウネと蠢く髪は太い蛇のようで、小さな赤い目と舌をチロチロと出し、此方を無数の瞳が睨んでいた。
「懐かしいわ、そんな事もあったわね。でも今は全部石にしちゃうなんて愚かな事はしなくてよ?」
「え?」
「うふふ♡だって生きてないと人間から魔力も精液も搾り取れないでしょ?勿体ないじゃない♡アハハハッ♡」
口角を高く上げ高らかに笑うと、足元を狙って再び光線を放ってきた。
先程まで、ボロボロだったとは思えない身のこなしと攻撃に、警戒しつつ、僕とセシリアは遠距離、近距離からの攻撃を繰り返す。ついにセシリアの大剣がメデューサの首に添えられたが、
「さぁ、観念しなさい!」
「くっ…なかなかやるじゃない…チっ…」
「キャッあッ!?」
魔力の昂りを感じると、メデューサの周りには魔力が溢れ出していた。みるみる内にこれまでのダメージが回復し、体が大きくなる。
「アハハハッ!これがあの方に捧げる筈だったチカラさ!殺られるくらいなら、出し惜しみは無しだぁ!!」
巨大な蛇の胴体にメデューサの上半身がくっついた様な姿で、その巨体を振るう。先程とは違い、物量に任せた重い攻撃が襲いかかる。
「セシリア!僕が隙を作る!『クエイク』!」
「分かった!」
「ほらこっちだぞ!」
「シャアァァァーーーッ!!!」
地面を這うメデューサの蛇の体に、地面から石槍が襲いかかる。僕に狙いを定め、光線を放とうと身構えるメデューサに、
「これでも喰らえ!『アクア』!」
「ふん!こんな霧ごときで私の目から逃れられると思ったのか!?」
水の霧をメデューサの目の前に発生させたが、それを物ともせず光線を放とうとするヤツに、
「そうだ!よく見ろよ!」
『サンダー』『フレイム』『セイント』×3
水を一気に沸騰させる勢いで多重魔法を霧に向け放つ。体積が急激に膨張して大爆発を起こすと、上半身が焼け爛れたメデューサ。回復を使用と魔力を込めたが、
「く、だがこれしきの怪我…はぁッ!…っが!?」
「今日は空から星がよく降るみたいだから気をつけないとダメよ?」
「そ、そんな…こんな小娘に…ブハッ!!?」
空に飛び上がったセシリアの『メテオスラッシュ』がメデューサの背後を大きく斬りつけた。その衝撃で爆散するメデューサにセシリアは巻き込まれたのだが、
「おおおッ!『ガードアップ』!『プラスアーマー』!『リジェネ』!」
サキュと共に駆け付けたライオ君のサポートが間一髪間に合ったお陰で、掠り傷一つ無く生還したのだった。
「ライオ!やるじゃない!ありがとう♪」
「はいッ!無事で良かった…」
「例の魔物は倒したんですか?」
「ああ、あれだけのダメージだ。きっと大丈夫だろう。皆、悪いけど手分けして魔物の死骸を回収してくれるか?」
「あ、フィズはこっちに来て、捕まった人は無事なんだけど、石化しちゃってるから治して欲しいの!」
「分かった、直ぐに行くよ」
僕は『クリーン』でその場に居た多くの人を浄化した。ライオ君の回復もあり、彼らは何とか自分達の村へ帰ることが出来る様だ。その中に、
「アリス!」
「無事だったのね!」
「パパ、ママ!」
地下に隠れていた少女アリスもまた、ご両親と再会した様だ。僕らもその様子にほっとしていた。
「よし、僕らも町に戻ってギルドへ報告しようか」
「そうね。流石に魔力を使い果たしたわ…」チラ…
「あははは…じゃあ、今日はたっぷり時間を取ってあげるよ♡」
「今日も熱い夜になりそうだね」
「はい♡じゃあ、私も頑張ったからフィズさんに魔力を貰おうかな?」
「うぐッ…お、俺がフィズさんの分も頑張るよ!」
「ホント?うふふ♡期待してるねライオ君♡」
アリスや村人達と一緒に、荒れ果てた村に戻ると、ギルドからの救援部隊がおり、彼らに引き継いだ。僕らはそのまま、アリス達に別れを告げ、馬車に揺られ町へと戻った。
・・・
・・
・
「く、糞…、この私をこんな目に遭わせるなんて…」
地面から小さなヘビがニョロリと姿を現した。瀕死の重傷を負ったメデューサは、爆死寸前に魂を切り離し、この姿で難を逃れた。弱体化してしまい、以前の様な力は無いが、
「絶対に許さないわ…あの勇者と、魔法使い…魔王様に伝えないと…」
蛇はにょろにょろと魔王の拠点を目指し、その姿を消したのだった。
・・・
・・
・
「ええッ!?オーガじゃ無かったんですか?!」
「はい。オーガも居たようですが、メデューサという魔物がそれらを率いていたんです。村人を捕らえて何でも精液を集めて居たようです」
「はッ?!せ、精液ですかッ?!そ、そ、それはどういう…///」
「理由は分かりません。本人はすでに討伐しちゃいましたし…ですが、サキュバスの様に精液から魔力を得ていたのは確かですよ」
「むむむ…それは心配ですね・・・、他のギルドでもこのような事が無いか、調べておきますね///」
僕らはたっぷりの報酬を貰ったので、僕の装備を更新するために魔道具屋に立ち寄ることにした。
「いらっしゃい♪今日も一杯買って行ってね♪」
「はい。でも今日は僕の装備からお願いします」
「はいは~い、この前用意して置いたとっておきがあるわよ」
お姉さんがそう言って見せてくれたのは、白いシャツに、黒いズボンという至ってシンプルな装備だ。上質な布をふんだんに使った様で、防御力は見た目より高い。アクセントの赤いベルトが気に入ったので、
「買います!」
「毎度あり~♪そう言えば、今回はどんな魔物と戦ったのかしら?」
「?なんでそんな事を聴きたいのよ?」
「いいじゃない♪ここに居ると情報に疎くてね。世間の動きを知りたいのよ」
「ふーん、そういうものかしら…今回はオーガの討伐だと言われていたんだけど、実際はメデューサが首謀者だったのよ。あいつの石化光線は厄介だったわ」
「あ~ぁ、あの子ね・・・厄介よね、ただ、目を隠しちゃえばどうって事無いのよ?あ、丁度良いものがあるわ!」
ガサゴソと、ボックスを漁るお姉さんが取り出したのは、黒い布だった。
「はいコレ!」
「この布が?」
「そう、『魔力の放出を封印する目隠し』よ。それと、この首輪ね。こっちは服従の首輪よ。どんな命令でも意思に反して従っちゃうわ」
どうしてこんなアイテムを持っているのだろうか?その疑問にお姉さんは笑顔で答えるのだった。
「買います?」
「買います!」
「ありがとうございます♪」
こうして装備とアイテムを買った僕に、セシリアは、
「全く、散財し過ぎよ?どうしてこうも簡単に大金を・・・」
「まあまあ、良い物が買えたしさ。この目隠しなんて魔力を封印できるんだよ。強い魔物との戦いにも役に立つだろ?」
「そ、そうね…」
そんなこんなで僕たちは宿へと帰って来ると、
「ねえ♡じゃあ、今日は頑張ったご褒美一杯頂戴♡」
「おう、いいぞ♡じゃあ、まずこれを付けようか?はい♡」
ガチャリ・・・
「へ?これって?」
「うん、使用感を確かめてみようかなって♡じゃあ、命令するよ?この目隠しを自分でつけろ」
期待していたセシリアの首に、服従の首輪をつける。ガチャリと首に嵌った首輪はキュッと、彼女の細い首を絞めつけた。
「ちょっと、フィズこれ外しなさいよ!」
「ふふふ、そうは言っても、体はほら?」
僕の命令に従う様に、目隠しで目を隠したセシリアに、
「ライオ君、これ凄いアイテムだね!ねえ、私にも付けてみてよ♪」
「え?良いけど…ガチャリ・・・はい出来だよ?」
「んん~ん///なんだか興奮するね。あっちの部屋で色々試そうよ。ほら行くよ!」
「え?あ、うん?」
従属関係が逆の様だが、ライオ君とサキュは自分達の部屋へと移動していったので、
「じゃあ、僕達も楽しもうか?」
「う…変な事しないでよね///」
「うん♪」
宿に帰って来たのは、かなり遅い時間であった。多くの人は寝静まり、町は人気の無い不気味さがあった。そんな夜の町をひたひたと足音だけが響いていた。
「ほら、早く歩けよ」
「ちょっと待って///こんな姿を見られたら///」
もじもじと歩くセシリアを急かす僕は、彼女の首輪に繋がったリードをクイっと引っ張った。素っ裸で、目隠しと首輪を付けた彼女は、必死に巨乳と下半身を手足で隠そうと必死だった。
「逆だ、早く歩いてお散歩を終えないと、時期に早起きの住人にセシリアの恥ずかしいエッチな姿を見られるぞ?」
「///!?!?嫌よ、もう///勇者になんて事させるのよ///」
服従の首輪の所為で、命令には忠実に従ってしまう様だ。大きな胸と尻を揺らして歩く姿を観察しながら、次はどうしようかと考えていると、目の前を何かが横切った。
「きゃッ!?」
「ワン!わん!」
「犬?・・・はぁ良かったわ・・・」
「犬・・・なあ、セシリア、犬になれ!」
「ちょッ!?そんな命令嫌よ!取り消して!」
悲しいかな、命令を口では拒むも、体は自然と足を折り、四つん這いへとなる。舌を出し、はッはッはッと犬そのものになったようだ。
「おお!可愛いワンコロだな♡よしよし♡」
「ちょっとやめ///わん♡」
「よし、行こうか♡」
「わん♡」
トコトコを僕の前を四つ這いで歩くセシリアを恥ずかしめると、僕らは満足して宿へと帰った。




