第ニ話 最弱勇者のレベルアップ
転生した矢先、世界に新たな生を受け文字通り産み落とされたフィズは、自らの運命に嫌気が差した少女と出会った。
セシリアと名乗った少女は投げ付けられたタオルで体を隠すと、
「ここじゃあ落ち着いて話が出来ないわ。着いてきて?」
「ああ…」
そう言うと寝静まり帰った宿へと僕を案内してくれた。薄暗い建物の中はロウソクやランプの灯で最低限の視界を確保している様だ。
ギィギィとなる板張りの廊下を歩くセシリアを追いかける。
「ここよ、入って」
急に振り返った彼女に、今まで下を向いていた視線を上げると、幼さの残る顔が赤く染まっていた。
「き、着替えてくるわ。椅子にでも座ってて」
そう言い残し、暗い部屋へと消えていった。残された僕は木の椅子に腰掛けて辺りを見渡す。
シワ寄ったのベッドに、テーブルと椅子。明かり取りの窓からは月の明かりが部屋を彩っていた。
「何にも無いな…」
「それはそうよ。この辺に来たのはレベル上げの為だもん。余計なものは極力持ち歩かない主義なの!」
声のする方を向くと、色気のない着古した白いシャツ1枚のセシリアが居た。何度も洗って着ているのだろう。シミが残り首周りはヨレヨレだ。
そんなペラペラな生地を押し伸ばして、胸の膨らみは彼女が巨乳である事をしっかり主張している。
空いている椅子にドカっと座ると、胡坐を組むように座面に収まった。肉が程よくのった白い足が露わとなり、僕は目のやり場を探して、彼女の顔を見るほか無かった。
「待たせたわね。改めて、さっきは止めてくれてありがとう。あの時はどうかしていたの。綺麗な月を見てたら無性に自分が嫌になっちゃってね…」
「うん、君みたいな可愛い女の子が目の前で死ななくて良かったよ。この際だから聞くけど、何かあったの?」
僕の質問に、腕を組んで考え込んでしまったセシリアは、意を決したように頷くと、
「初めて会う君にこんな話をするのもどうかと思うけど、見ての通り、私はエルフの村で生まれたんだ。エルフはさ異性と繋がりを得て一人前に成れるの。変だよね、それでも繋がりが出来ないエルフは居なかったから誰も疑問にも思わないんだ。ただ…」
「ただ?」
「私だけは違ったの。何度もチャレンジしたけれど、繋がりは得られなかった。初めは皆優しくて大丈夫だよ。次は出来るよ!って声を掛けてくれたけど、何度も何度も繰り返すうちに私の周りには誰も居なくなっちゃってさ…この剣を担いで村を飛び出したって訳」
「そうだったのか。辛かったね…それで強くなるために此処へ?」
「そうなんだ!ここはレベル上げに良いって聞いてたからやって来たんだ。昨日、やっとゴブリンを討伐出来てさ。上機嫌で帰って来たら何処かにお金を落としたらしくて…」
椅子の上で体育座りをすると、膝に顔を伏せる。
「実はさ、ここの店主に襲われちゃって、汚されちゃった所だったの」
「なんだって!?」
「あ、此処に来てからツケで飲み食いさせて貰ってたし、宿代もツケて貰ってたからさ。払えなかった私が悪いんだ。それに…」
「…」
「あわよくば繋がりを得られるかなって、ちょっとした期待もあったの。コレまでも色んな場所で試してみたんだけ上手く行かなくて、今回もそうなるように仕向けったって訳…最低でしょ?」
「セシリア…」
何が彼女をそこまで追い詰めるのだろうか。冒険者にならなくても他の生き方もあったはずだが、彼女は本能的に強くなる事を望んでいるようだ。
「あははは、ゴメンね。助けて貰ったのにこんなつまらない事を聞いて貰って。でも何だかスッキリしたよ。そうだ、今度はフィズの話を聞かせてよ?」
「え?僕の?」
「うん!乙女の秘密を聞けたんだよ?今度は君の番!」
「ウ~ン、信じてもらえるか分からないけど、それでもいいなら…」
「ウンウン、聞くよ。夜は長いんだ。いっぱい聞かせてよ」
身を乗り出して興味津々なセシリアは、何処からか取り出したエールを僕に渡しながら、軽く一杯を飲み干した。僕も生ぬるいそれを喉に流し込むと、
「僕は生まれ変わったんだ」
「はぁ?それは生き方を変えたって事?」
「いゃ、僕は一度死んで、今のこの体へと転生させられたんだ。前の記憶は殆ど無いんだけど、僕を転生させた女神様から魔王を討伐するように使命を与えられたんだ」
突拍子も無い僕の話に、驚くセシリアだったが、魔王と言う単語は彼女の興味を刺激したようだ。
「魔王!?魔王ってあの魔王なの?」
「正直僕には魔王がどんな奴かは分からないんだけど、皆を困らせている存在ならそいつが魔王なのかな。その為に、僕は勇者を見つける必要が有るんだ」
「勇者…ん?!」
「ん!?」
彼女が呟いた瞬間、セシリアの腹部が眩く光る。暗い部屋を照らす光は太陽の様に暖かい。恐る恐る自分の服をたくし上げると、花の様な下腹部に模様が現れていた。生命に満ち溢れているが、セシリア自身は自分の胸が邪魔をして良く見えていない様だ。
「何にこれ?!私のお腹にこんな模様無かったわよ?」
「もしかしてセシリア、君が勇者なのかも…」
「私が?生まれから全然レベルの上がらない私が勇者無わけないでしょ?」
「いや、僕が探しているのが当に、君のような勇者なんだ。その証拠に、ほら…」
「ちょっ、ちょっと!」
女神に嵌められた下半身の拘束具が反応しズボンを押し上げている。その反応はキツく僕の性欲を減退させ魔力へと変換している様だ。次第に落ち着きを取り戻すと、変換され濃縮された魔力の塊が右手に集まる。
「セシリア、これが僕の魔力だ。見た所、君には魔力が全くない。これを受け入れれば確実に強く成れるっはずだ。試してみるかい?」
ゴクンっと息を飲み込むセシリア。未知のチカラに、体が反応しているのだ。強く成れる。今まで全く強く成れなかった私が強くなれる?欲しい!その魔力が欲しい!
「フィズ!頼む。私にお前の魔力を注ぎ込んでくれ!」
「分かった・・・行くよ!」
光を放つ下腹部の勇者紋にゆっくりと魔力を吸わせる。僕の体とセシリアの体に繋がりが完成すると、
「ん?ん?体が、体が熱い!?くうっ!」
「ちょっと、セシリア大丈夫!?」
悶える彼女の勇者紋が赤く光ると、セシリアの体に変化があった。これまでレベルアップした事の無い彼女であったが、勇者紋が徐々に真っ赤に満たされ、僕の目にはステータス表記が現れた。
~セシリア レベルアップ~
性別:女性 (年齢:不詳)
職業:勇者 (称号:最弱)
Lv0 →Lv1
体力 12 → 15
魔力 0 → 1
力 15 → 17
硬さ 8 → 9
素早さ 9 → 11
器用さ 6 → 7
「ふああ!?れ、レベルアップした!なんで!?これまで魔物を幾ら倒しても全然上がらなかったのに!」
「セシリア!やっぱり君が僕の探して居た勇者みたいだね」
「へ?」
セシリアの運命を変えたのは最高の相棒との出会いだった。




