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魔力ゼロの勇者 〜最弱勇者の最強育成に必要なのは僕との繋がり〜  作者: アオネコ


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第一話 その男、勇者と出会う

 ここは魔獣と魔物が闊歩する世界。以前は、凶暴な魔物こそ居たが、人間や魔物に対立する勢力は魔物と適度な均衡を保っていた。


 しかし、数百年前に生じた異次元との衝突によって、この世界に魔王が現れ、突如としてその均衡は魔王の操る魔物勢へと傾いた。各地で魔物の被害が拡大し、世界は疲弊していった。


 美しかった世界が変貌していく姿を憂いた女神は世界に最強の勇者を生み出すのだが、それらは悉く魔王によって阻まれてしまった。


 女神は仕方なく最弱の勇者を生み出すのだが、魔王はそれさえも見逃すはずが無い。抵抗した女神はあらゆるチカラを注ぎ込み、辛うじて最弱の勇者を地上へと産み落とした。



・・・

・・



「オンギャ~、オンギャ~…」

「おお~生まれました。可愛らしい女の子ですよ。よく頑張りましたね」

「こ、これが私の愛しい我が子…ああ、なんて可愛らしい…」


 生まれたての娘を抱きかかえようと、手を伸ばすエルフの女性だったが、赤ん坊を受け渡される寸前ですべての時が止まってしまった。静寂に包まれた部屋に、空間が罅割れ異次元が現れると、その闇の中から黒いフードを被った人物が姿を現した。


「チッ…遅かったか…生まれる前なら女ごと始末する予定だったが…フム…女神め、強力な加護を与えているのか。この突破は今の私でも不可能か…ならば…」


 魔王である彼は、その赤子に手を翳すとまだ小さく柔らかい、握り潰せそうな体に向けて魔法陣を刻み込む。女神にとっては誤算であったが、魔王は彼女に祝福を与えた。祝福は女神の保護を難なく通過し、彼女へと定着したのだった。


「最弱の勇者よ、自らの出生を恨み、その弱さを永劫に憎しめ」


 満足した様子で魔王が空間の歪へと姿を消すと、止まっていた時が再び動き出し、彼らは何事も無かったように子の誕生を祝福した。


 この祝福がこの子にとっての悲劇の始まりとは夢にも思わなかっただろう。



・・・

・・



「うふふふ、うちの子ったらもう好きな子と繋がりを得たって私に自慢して来たのよ」

「あら、まだお若いのに。お盛んね。うちの息子も早く一人前になって欲しいわね」

「ねえねえ、うちの娘、おすすめよ?確か息子君と仲が良かったわよね?どうかしら?」

「あら良いわね。ちょっと詳しくお話しません?」


 季節は春。あちらこちらで成人の儀の話題で持ちきりの村を下を向きとぼとぼと歩く少女は、聞きたくも無い話を無視しながら家路に着いた。


 家の中はお母様と、妹達の賑やかな声が響いている。私は返り血で汚れた服を脱ぎ、汚れた手を洗いながら洗濯を始めた。魔物の血が生臭い。その匂いに気付いたエルフ母親が洗濯場を覗き込むと、少女は、


「ただいま…」

「あら、お帰り…帰って来たのね。夕食は部屋に置いてあるわ。食べたら自分で片付けてね。全く、同い年の子は無事に成人したって言うのに、何で貴方には恋のこの字の話も無いのかしら」

「ちょっとお母様~?どっちの服が良いかしら?」

「はいはーい♪あら~♪どっちも素敵よ。これならあの子もいちころよ」


 私の事なんて気にもせず、妹たちの世話を焼く母親の声を聴きながら、自分の事を蔑んだ。生まれてこの方、村の男の子と結ばれても繋がりを築く事は出来ず。出来損ないのレッテルを張られた私を相手にする子は居なくなった。代わりに男達に混ざって魔物討伐に自分の居場所を探したが、それも女の私の出番は少ないし、大人からはやっかみを受ける始末。


「ここは私の居場所じゃないのかな…」


 誰に聞かせる訳でも無いのに、なぜだか自然と口から零れ落ちた自分の言葉に、大粒の涙が止まらない。拭っても拭っても溢れ出た涙がついに枯れると、少女は父親の形見の剣を背負い、生まれたエルフの村を静かに出て行くのであった。


 誰にも気付かれず、誰も彼女が居なくなった事を気にしなかった。



・・・

・・



 それから幾年月が流れ、彼女はとある町の酒場で飲んだくれていた。


「おい店主~!酒を持ってこい!今日のクエストは簡単だったぜ!」

「おいおい、ゴブリン退治に何を粋がってやがる。ったく、ほれエールだぜ。全く金はしっかり払って帰れよ?」

「ふふふ、安心しな。金ならここに…、…、あれ?どこに行った私の財布?!あれ?あれ?」

「おいおい勘弁してくれよ。もうツケは勘弁だぜ…そうだな、金がねえなら仕方ねえ、その体で支払って貰おうか」

「へえ?!そ、そんな。待って待って。確かにここに入れたんだ。全財産、私のお金どこ!?」


 慌てくためく少女は店主に土下座して許しを請うが、野獣のように鼻息とズボンを荒らげて迫る男を宥められそうにない。そのまま彼女は店主に捕まると、男の部屋で性欲のはけ口に使われたのだった。


「ふう、エルフはエロくて最高だって噂だったが、そうでもねえな。これならまだ自分でした方が気持ちが良いぜ。ったく、ほれさっさと服を着て出てけ」

「キャ!?言われなくても出てってやるよ!まったく好き勝手やっておいてなんて言い草だよ。私だって全然良くなかったし!なんでこんな行為を好き好んでやるのか意味がわからないぜ」


 汚れた体を洗う為に、外の井戸へトボトボと歩き、冷たい水を汲み上げると体を清めた。男の吐き出した精を洗い流すと、冷たく光る月を見上げた。何千、何万回と見上げた月はいつも自分を照らしてくれるが、今日の月は自分を矮小に感じさせた。自分の運命を憎んだ彼女は、剣を抜くと自らの喉に切先を向け、力を込めた。


 剣が皮膚を刺し赤い雫が喉を伝うが、それ以上は侵入を許さなかった。


「そんな事をしたら危ないよ?」


 突然掛けられた声に驚き、冷静さを取り戻した彼女は、自らの愚かな行為を恥じると声のする方を振り返った。



・・・

・・



 とある場所に糸目の男が暮らしていた。仲間たちと冒険者稼業で日銭を稼いでは、更なる高みへと瀬在琢磨して日々を過ごしていた。彼らのパーティは彼以外は女性という言わばハーレムパーティであったが、彼が望んだ訳では無い。並みの男の冒険者では、彼女らの欲求を満たすことが出来ず。自信を無くしたり、体力を使い果たしてリタイアするなど、様々であるが自然と彼のパーティから男が消えて行った結果だ。


「あは♡やぱり○○のが一番よ。ほらほら、もっと激しく!」

「くっ…」

「♡♡♡ゾクゾクしちゃうわ♡♡♡」

「はいはい。次は私ですから、そこ退いてくださーい。うふふ、えいえい…やぱり○○君のは絶倫ですね。さっき出したばっかりなのに、まだこんなに…ちゅ♡」

「うっ…」

「ちょっと、次は私でしょ?さあ、○○、私のを堪能してよね」

「ちょっと、急に顔にのっかってくるなって…うわあ、ぷ!!」


 絶倫の彼であったが所詮は酸素を吸ってい生きている人間。彼の事などお構いなしに快楽を貪る女達の波状攻撃の前に、デカい尻に顔面を圧迫されて呆気なく息を引き取った。彼のいきり立った男根は死んだ後も生前の硬さを保った事が、彼の死を発見を送らせてしまった誘因の一つであった。


 しかし、幸か不幸か、愚かしい死を遂げた逸材に女神は勝機を見出した。世界の輪に流れゆく彼の魂を拾い上げると、女神の祝福にて新たな生を彼に与えた。最弱の勇者を最強にするために、彼は打って付けだった。魔王に与えられた偽りの祝福を突破する為、彼の力が必要だった。やっと見つけた鍵に命を吹き込むと、彼は目を覚ました。


「う…ここは…?僕はあの後どうなって…」


 困惑する彼にどこからか声が響く


…あなたは一度死に生まれ変わりました。貴方の力が必要なのです…


「だ、誰だ?僕が死んだ?生まれ変わったってどういう事?」


…魔王を倒す為、貴方に女神のチカラを分け与えます…


「魔王を倒す?貴方は女神様?」


…お願いです。勇者を、貴方のチカラで最強の勇者に導いて下さい…


「最強の勇者に?僕なんかが一体どうやって…?」


…貴方に名前を授けましょう。フィズ。これが貴方の新しい名です。勇者には貴方に宿る魔力が必要となります。フィズよ、制約を授けます。貴方に取って辛い事かも知れませんが、魔王を倒す為、どうか力を貸して下さい…


 僕の前に現れた光が、下半身に纏わりつくと、イチモツの根元を金属の輪っかがキュッと締め付ける。幾何学模様の様な複雑なデザインが彫り込まれた拘束具からチカラが伝わって来るが、


「くっ…きついよ!これ以上食い込まないで!!」


…これは貴方の精を魔力へと変換する制約を具現化した特別な魔道具。魔王討伐の暁には、この制約が成就します。それまで苦しみと快楽の両極を同時に味わう事でしょう…


「はあ、はあ、そ、そんな…」


…魔力の放出が一時的な助けになるでしょう。地上に居る勇者を成長させるため、彼女と繋がりを築いて下さい…


 女神を名乗った光は、ボクにそう告げると、視界から消えた。いままで居た白い空間も姿を消し、急に浮遊感が僕の体を襲う。背後から強烈な風を受け、目の前には明るく輝く月が見える。夜空を正面にして空を落ちていると悟った僕は、体勢を変え地上へと目をやる。


 何処だここ!?あれは湖か?このまま落ちて死なないよね?女神様あああああああ!?!?!?!?


ドボンッ!!!!!!


 盛大な水しぶきを上げて、水の中に落ちた僕は水面へと泳ぎ着く。凄まじい衝撃であったが怪我所か痛みも感じていない。不思議に感じつつも、近くの岸へと泳ぎ着くと、その場で大の字に倒れ込んだ。


「随分と頑丈な体だな。どこも痛くないけど、流石に疲れた」


 ぐううう~と鳴く腹を抱えて、何か食べる物が無いか辺りを見渡すと、灯りがポツンと目に入った。


「取り合えず、向かってみるか」


 何か食べ物か、近くの町の情報でも得られればと、灯りを頼りに岸辺を歩くと、草臥れた宿屋が見えた。良かったと安心した矢先、建物の傍の井戸で何かが動く気配がした。月明かりに照らされた姿は、金色の長い髪に、白い肌、魅力的な肢体を曝け出した一糸纏わぬ少女が、剣を逆手に喉に突き立てようとしているではないか!


 考えるより先に素早く動いた体は、剣を掴みそれ以上の侵攻を妨害した。


「そんな事をしたら危ないよ?」


 彼女に注意を促すと、驚いた表情でこちらを振り向いた。整った可愛らしい顔に、ずっしりと重そうに揺れ動く双丘が目に入る。前世の記憶では恥じらいなど無かったが、あまりの突然の出来事に目を逸らしてしまった。


「あ、貴方誰?!此処で何をしてるの!?」


 まるで不審者を咎めるような彼女の発言であったが、怒る訳にも行かず、


「助けたつもりだったけど、お節介だったかな?」


 タオルを投げ付けながらそう言い返すのが精一杯だっだが、自分の先ほどまでの行いを思い出した彼女は、顔と体を隠しながら、


「あ、あのあれは…ちょっと自暴自棄になっただけよ…でも、助けてくれてありがとう」

「うん。それなら良かった。僕はフィズ。初めてこの場所に来たんだけど、ここって宿屋かな?」

「…ええ、お世辞にもいい宿とは言えないけど、ご飯は美味しいわよ。私の名前はセシリア。アランスタークのセシリアよ」


 これが、僕と勇者の最初の出会いであった。




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