第12話フシギナクスリ
昼前に散々な目に合わされた俺は、朝食を食べれなかったこともあり、お昼はやけ食いをしていた。
「って事があってさ。ミルフィーナって何者なんだよ」
「あれでも私の幼馴染なのよ? どうしてあんな風になったのかは分からないけど」
「お前でも分からないって、どんだけだよ」
先程のことをルチリアに話をすると、どうやら彼女もミルフィーナについては分からないことが多いらしい。幼馴染にも分からないって、どれだけ奥深いんだよ。
「それでカエデ君は、逃げて来たの?」
「逃げて来たっていうか、帰らさせてもらった。この先何をされるか怖かったし」
「でも今日特訓してくれるの、ミルフィーナよ?」
「そうなんだよぉぉ」
さっき気がついたのだが、今日の訓練相手はミルフィーナだ。つまりさっきのは単なる余興に過ぎないということだ。そう考えると全身に寒気がする。
「大丈夫よ、加減くらいはてまさかるから。きっと」
「加減って何? 本気だともっと怖いの?」
「さ、さあ」
「何だその意味深な言い方は。俺死ぬの? 死んでしまうのか?」
「心配しなくて大丈夫よ。私が命の保障くらいはしてあげるか」
「マジでシャレにならないからなそれ!」
結局この昼も、余計な事ばかりが頭から抜けず、落ち着いた食事が取れずに午後の訓練を迎えることになった。
(あー不安だ、間違って命なんか落としたら大問題だ)
俺は果たして夜を向かえられるのだろうか?
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「という事で〜、今日は私が教える番です」
「よ、よろしくお願いします」
訓練の為に呼び出されたのは、再び彼女の家。明かりがほとんどない為、かなり不気味な雰囲気の中でミルフィーナの授業が始まった。
「まずはカエデさんには〜、これを飲んでもらいます」
と言って彼女が渡してきたのは、いかにも怪しげな液体。
はい、早速アウト。
「ちょっと、どこへ行くんですか〜。まだ始まっていませんよ〜」
「無理無理、こんなの飲めないって」
「これはカエデさんの体内に、魔力を宿らす為のものなんですよ〜。これがなければ、黒魔術は〜使えません」
「もう覚えなくていいから、勘弁してくれマジで。遺跡の謎を解く前に死ぬのは嫌だ」
「文句を〜言わないでください〜。ほら〜、飲んでくださいよ〜」
「来るな、来ないでくれ」
暗闇の中から一歩ずつ寄ってくるミルフィーナ。逃げようにも、扉を見つけ出せず、なかなか逃げ出せない。
(まるで幽霊から逃げているみたいだな)
って、何呑気な事考えているんだよ俺。
「さあ一緒に、黒魔術を学びましょう〜、カエデさ〜ん」
「嫌だぁぁぁ」
この日ポカリミ村には、二度か三度大きな叫び声が響き渡ったらしい。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「ルチリア……俺人間やめちゃったのかな」
「そんな事ないって。カエデ君はちゃんとした人間よ」
「だって俺、あの薬飲まされてから生きている感じがしないんだ」
「き、気のせいよ。きっと」
結局その後、あの液体を飲まされてしまった俺は、その場で気絶。気がついたら自分の部屋で眠っていた。しかも日付も変わっていて、今はルチリアとの訓練の最中だった。
「でもこれで、カエデ君も使えるようになってよかったじゃない」
「黒魔術をか? 怖くて使えやしないよ」
「黒魔術じゃなくても、体に魔力が宿ったなら、使うことができるじゃない、魔法」
「そんな簡単にできる物じゃないだろ、魔法は」
よく漫画や小説とかで魔法とか登場するが、ああいうのを使えるのって、才能がある人くらいしかいない。それに比べて俺は、至って普通の人間なので、当然だけど使えるなんて微塵も思わない。
「そんな事言って、興味あるんじゃないの?」
「あるわけないだろ。そもそも薬だって強制的に飲まされたんだし、気分は最悪だよ」
「じゃあ訓練やめる?」
「いや、続けるけどさ」
二度目となるルチリアの訓練は、前回に引き続いて基礎的な事を何度も繰り返すような形だった。そのおかげもあってか、最初は苦戦していた動きも、ぎこちないながらも少しずつ身になってきた。
「うん、いい動きになってきたね。カエデ君もやろうと思えばできるじゃない」
「そうか? 俺的にはまだまだな感じがするんなけど」
「ううん。二日目にしてすごい成長よ。これならきっと、ポチの剣術もすぐに身につくし、黒魔術は……うん、大丈夫」
「その大丈夫って言葉が、安全とは全然思えないけどな」
逆に不安を煽られている気がしてならない。
「よし、カエデ君の動きも良くなってきた所だし、そろそろいいんじゃないかな」
「良いって何が?」
「いつまでも隠れてないで、そろそろ出てきなさい」
ルチリアが俺の背後に向けて言う。後ろに誰か隠れていたのだろうか?
「全く、怪我治ったからってすぐに戦いを申し込もうとするなんて、どれだけ恨まれてるのよ」
「怪我? まさか」
振り向くと案の定そこにはフォルナがいた。そういえば気がつかない間に怪我は治っていたらしく、いつでも倒せるとか言っていたな。
いや、そうじゃなくて、
「おいルチリア、まさかとは思うけど、今からフォルナと戦えとか言うんじゃないだろうな」
「そのまさかよカエデ君。今のカエデ君なら一矢くらい報いれるわよ」
「いや、いくらなんでも無理があるだろ」
そんな事を言っていると、頬を何かがかすめた。おいおいマジかよ。
「ほらカエデ君、戦闘態勢に入らないと、死ぬよ?」
「その言葉を今言われるとシャレにならないからやめてくれ!」




