7 魔鏡炬燵 前編
新作 第3弾目の投稿です。
題名 転生したらしいけどスキルデッドストックって何???
今回の主人公は海軍さんの街呉からの転生した女子高生のお話です
はちゃめちゃのスキルで異世界を乗り越えます。
誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。
途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。
作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。
パラレルワールド編 ダビンチは世界遺産のナスカから謎の大陸ムーのお話です!
当初から作品を見ていただき本当にありがとうございます。
大変励みになっております。
これからもよろしくお願いします。
では、参ります!!
## 第一章:
異端審問騎士団の「黄金の天秤」を雨乞いのビートで叩き割り、大天使の絶技を野菊の一輪挿しで花吹雪へと変えてから数週間。
ルミナス魔法学院の、今や完全に天照ひよりの専用ラウンジと化した図書室の片隅には、ある奇妙な光景が広がっていた。
「……ねえ、硯水さん。これ、どう思う?」
ひよりが呆れたような、それでいてどこか楽しそうな声を上げながら指差したのは、図書室の床に山積みにされた、眩いばかりの『異世界の魔貨(純金製のエルフ金貨やドワーフ銀貨)』の山だった。
前回の戦いで金蔵(お賽銭箱)ががっぽりと貯め込んだ教会の魔力を、生徒会長のセリアが国の機関を通じて正式な通貨へと鋳潰し、ひよりの元へと届けてくれたのである。
「素晴らしいではないか、ひより。これだけの資産があれば、このルミナスの街に『天照神社・異世界分社』を建立することだって夢ではないぞ。本殿を建て、鳥居を構え、お主がその初代・最高巫女に就任する。実に見事なサクセスストーリー(プロット)だ」
ー
私は依り代である文机を実体化させ、上質な羊皮紙にさらさらと万年筆を走らせながら応えた。私の名は『硯水』。千年の歴史を持つあの超ど田舎の神社で、人間の業と物語を見つめ続けてきた文机の付喪神だ。
「異世界分社って! 私、まだ十六歳の女子高生(見習い召喚士)だよ!? そんな大層なもの建てたら、今度はこの国の王様とかに『天照家は国家転覆を狙っている』とか怪しまれちゃうでしょ! あーあ、実家のパパとママ、今頃は呉の港で潜水艦でも眺めながら、美味しいあぶらあげでも齧ってるのかなぁ。娘はこっちで金貨の山に埋もれてるっていうのに」
ひよりが金貨を一枚、パチンと指で弾いた、その時だった。
図書室の防音壁を突き破るほどの、凄まじい「咆哮」が街の彼方から響き渡った。
地響きがルミナス魔法学院を揺らし、窓ガラスがビリビリと悲鳴を上げる。
「ひっ!? な、何、今の地鳴り!? 魔王軍はもうスープの匂いに怯えて近づかないはずだし、迷宮のヒュドラも灰にしたのに!」
ひよりが慌てて窓を開け、外の景色を見下ろす。
セリアが血相を変えて図書室に飛び込んできたのは、まさにその直後だった。
「ひよりさん! 大変です、大変なことが起きました!」
「セリア様! 落ち着いてください、今回は何ですか!? また教会の偉い人がお説教に来たんですか!?」
「違います! この大陸の最北の地、永久凍土の奥深くに千年間封印されていたとされる、伝説の災厄――『狂乱の古龍』が目覚めました! 魔王軍の残党が、神の天秤が壊れて地脈が緩んだ隙を突き、禁忌の儀式でその封印を解いてしまったのです! 今、古龍は凄まじい吹雪を纏いながら、このルミナスの街へ向かって直線的に進撃しています!」
セリアが提示した魔法のホログラム地図には、街へ向かって移動する「巨大な赤い光点」と、それを中心に大陸の半分を巻き込みながら拡大する、凄まじい寒波の渦が映し出されていた。
「あの古龍が放つ【絶望の凍土】は、生物の肉体だけでなく、大気、魔力、そして『時間(概念)』さえも凍りつかせると言われています! 騎士団の偵察部隊も、古龍の姿を見る前に、その絶対零度の波動に触れて氷の像になってしまいました……。現代のどんな防壁魔法も、あの冷気の前には紙屑同然です!」
「時間まで凍らせる絶対零度……!?」
ひよりの顔からスーッと血の気が引いていく。
私は万年筆の動きを止め、ふっと煙管の煙を吐き出した。
「なるほど。万物を停止させる、文字通りの『冬の時代』の到来か。私の現実改変執筆で『春が来た』と書くには、あまりにも世界の法則そのものを覆す長文が必要になる。お主の魔力タンクがどれだけ巨大化していようと、書き終える前に我らの魂ごと凍結させられるのがオチだな」
「そんな……じゃあ、どうすればいいの!? 紅緒姉さんの剣でも、冷気そのものは斬れないし、雷轟くんの雷だって凍っちゃうよ!」
「慌てるな、ひより。相手が『絶対零度の冷気』なら、我が神社が誇る『極上の暖』をもって対抗するまでだ。幸いにも、東の第二蔵の最奥、歴代の神主たちが冬の寒さを凌ぐために、それこそ命がけで愛用し、執念を注ぎ込んできた『あの最強の暖房器具』が、お主のデッドストックの底で目を覚ましているぞ」
「最強の暖房器具……? うちの神社に、そんな大層なものあったっけ……?」
「あるとも。千年の間、人間の下半身を、その強烈な怠惰の魔力で骨抜きにしてきた、日本固有の『悪魔の防具』だ」
## 第二章:寒波襲来と「炬燵のうたた寝」
古龍の接近に伴い、ルミナスの街は急速にその熱を失っていった。
つい一時間前まで初夏の陽気だったはずの街に、大粒の雪が降り始め、建物や街路樹がまたたく間に白い氷に覆われていく。防壁門の前に集まった学院の魔術師たちも、寒さに歯をガタガタと鳴らし、魔法の呪文を唱えることすらままならない状態だった。
「あ、熱が……街の熱が奪われていく……。このままでは、古龍がここに到達する前に、全員が凍死してしまうわ……!」
セリアが防寒ローブに身を包みながら、紫色の唇を震わせる。
「オラオラオラ! 何が古龍だ、寒っ苦しい真似しやがって! ワシの雷で消し飛ばして――ぶえっくしゅん!! あ、あかん、バチを持つ手が悴んで動かねえ……!」
青髪の雷轟(雨乞い太鼓)が、自身の太鼓の横でガタガタと震えている。自然の雷雲を操る彼でさえ、概念を凍らせる絶対零度の前には、その出力が極端に低下してしまっていた。
「ひより、今だ。デッドストックを。あの教会の連中から巻き上げた金貨を、すべて『燃料(魔力)』として奴に注ぎ込め!」
私は文机を盾にしながら叫んだ。
「分かった! 来て、私たちの冬の命綱! 人間のやる気を根こそぎ奪う、お宝の中のお宝!」
ひよりは正門前の広場に、山積みの金貨を敷き詰め、その中心に両手を叩きつけた。
「デッドストック、最大出力!! 我が実家の東の蔵に眠りし、千年の怠惰の神よ、ここに降臨せよ!」
ゴゴゴゴゴ、ゴゴゴゴゴ……!
と、敷き詰められた数万枚の金貨が、一瞬にして真っ赤な熱エネルギーへと変換され、ドロドロと地中へ吸い込まれていった。
そして、光の中から現れたのは――正方形の形をした、色褪せた唐草模様の布団を四方に垂らした、古びた『木製こたつ(炬燵)』だった。
「……ふぁぁぁ。うぅ、さむさむ。誰や、こんな極寒の戦場にワシを引っ張り出したんは。……おや、ひよりの嬢ちゃんやないか。大きくなったなぁ」
こたつの天板からぬっと顔を出したのは、どてらを羽織り、頭にみかんを載せた、いかにも気怠げな、しかし妙に色気のあるお姉さんの姿をした付喪神――名を『炬燵猫』という。千年の間、厳冬の神社で神主や氏子たちをその内部へと誘い込み、「一度入ったら二度と出られない」という強烈な温もりと、人間の怠惰のエネルギーを吸い尽くして神格を得た、こたつの付喪神だ。
「炬燵猫さん! 挨拶は後! 今、ものすごい冷気のトカゲがこっちに向かってきてるの! このままだと街ごとみんな氷漬けになっちゃう!」
「あ~、あの北のトカゲな。昔、日本の山奥でも似たようなんが暴れとったわ。……ええよ、ワシの布団の中に入り。ワシの温もりはな、神様だろうが龍神だろうが、全員を『うたた寝の天国』へ連れていくんやから。――【魔境炬燵・絶対怠惰】!」
炬燵猫が天板をポンと叩くと、こたつの敷布団と掛布団が、まるで生き物のようにズルズルと広がり始めた。
それは十メートル、五十メートル、百メートルと瞬く間に巨大化し、ルミナスの街の正門前広場全体を覆い尽くす「超巨大な唐草模様の結界」へと変貌した。
その布団の内部(結界の中)に足を踏み入れた瞬間、セリアや騎士たち、そして寒さに震えていた雷轟までもが、「はふぅ……」と間の抜けた声を上げて、その場にへたり込んだ。
「な、何ですか、この信じられないほどの温かさは……。もう戦うのなんて、どうでもよくなってきました……。お布団、最高です……」
王女であるはずのセリアが、完全に緊張感を失い、巨大化したこたつの縁に顎を乗せて目をトロンとさせている。
「ガハハ、これアカンわ……。骨が、ワシの骨が溶ける……。雷とか叩いてる場合ちゃう、みかん、みかん持ってきてぇな……」
雷轟もバチを放り出し、布団の中に潜り込んで丸くなっていた。
みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?
少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。
励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
今回は女子高生のお話です。
よろしくお願いします。




