冒険者編 ポルトー8【後編】:嵐の夜の大決戦! 港の光を守り抜け(暴風雨バトル・大団円編)
第1章:漆黒の暴風雨とガーゴイルの大群襲来
【PM 10:15 | ポルトー大灯台・最上階レンズ室外壁】
バシャアァァァァンッ!! ゴオオォォォォッ!!
猛烈な台風『深淵の爪痕』が巻き起こす暴風雨が叩きつける断崖絶壁。 灯台が放つ聖なる光の筋を切り裂くように、数奇な紫色の目を光らせた数百匹の『翼手竜』が、漆黒の空から雪崩のように押し寄せてきた!
「光ヲ消セ! 街ヲ喰ライ尽クセ!」
「ひええぇぇぇ! ぶち凄いいっぱい飛んどるよ! ほんまに岩みたいな顔しとるじゃん!」
激しい風圧と雨に前髪を乱されながらも、ひよりは身を乗り出した。
「ひより様、危険です! お下がりを!」
朱色の袴を纏った神刀の紅緒が実体化し、神聖なオーラを放つ刃を解き放つ! しかし、猛烈な暴風雨が容赦なく襲いかかり、空中を舞うガーゴイルたちへの足場を奪っていた。
「風速毎秒三二メートル! 風向は北北西より激しく旋回! 通常の跳躍では風に煽られます!」
竹定規の竹千代が、竹尺を突き出してミリ単位で風力数値を弾き出す。
『ひより殿! ガーゴイルは岩石のような皮膚を持っています! 単純な攻撃では弾かれますが、風圧で体勢を崩した瞬間なら『絶対切断』が通りますぞ!』
文机の硯水が浮遊しながら知的な声で分析する。
「よし! まずは糸吉の網で動きを止めるんじゃ! 糸吉、いけるかい!?」
「任せてチョキ! 前編で張っておいた『防空クモの巣ネット』、作動チョッキンーッ!」
裁縫用糸切りバサミの糸吉がハサミを軽快に鳴らした! 前編で灯台の外壁全体に張り巡らせておいた透明な「因果の粘着糸」が、暴風雨の中でパッと黄金色に発光する。
バシバシバシィッ!!
急降下してきた先頭のガーゴイル数拾匹が、目に見えない糸の網に次々と引っかかり、翼を絡め取られて「ギギャアァァ!?」と空中で身動きが取れなくなった!
第2章:総力戦! ポルトーの光を守る付喪神たち
【PM 10:45 | 最上階での攻防】
「カッカッカ! 動きが止まったならワシの出番だばい! 特大木製しゃもじ・暴風撃退ハリセン連打ぁぁぁ!」
大童の姿となった飯蔵が、巨大な木製しゃもじをぶんぶんと振り回す! 風圧を逆に利用した強力な打撃が、糸に引っかかったガーゴイルたちをゴカァン! と叩き潰し、断崖の波間へと撃ち落としていく。
「洗三も負けないよ! 浄化のドバドバ大洗浄&防水コーティング!」
三つ仕切りバケツの洗三が、聖なる湧き水を灯台の窓や壁へ向けて豪快に噴射! 魔物の吐き捨てる黒い毒液や嵐の濁流を一瞬で洗い流し、灯台の石造りの壁をピカピカに強化していく。
しかし、ガーゴイルの数はあまりにも多すぎた。 糸の網を力ずくで引きちぎり、数匹の大型ガーゴイルが灯台の要である「心臓部の魔導水晶」へと手を伸ばす!
「ヒヒヒ! 光ノ水晶ヲ壊セバ、我ラノ天下ダ!」
「させるかだばい! この灯台は港の命だばい!」
老灯台守のハインツが身を挺して立ちはだかろうとするが、ガーゴイルの鋭い爪が迫る!
「ハインツのおじさんっ! ステラ、光を!」
『はい! ひより様! わたしに任せてください!』
手のひらサイズの天球儀の付喪神・ステラが、灯台の魔導水晶の上にふわりと舞い降りた。 ステラの透き通るような青い瞳が輝き、古代の星図が美しく旋回する。
『古代の星々よ……暗闇を照らす聖なる光となりて、この港を守りたまえ……! 星光増幅・グラン・クロノメーター!!』
キィィィィィン……ッ!!
ステラの身体から、真昼の太陽をも超える眩いばかりの「黄金の星光」が解き放たれた! 灯台の光量が三倍に跳ね上がり、光を嫌うガーゴイルたちは「ギャアアアアッ!? 目が、目がぁぁぁっ!?」と絶叫して空中でのたうち回った。
第3章:神刀・紅緒の「絶対切断・嵐断ち」と決着
【PM 11:30 | 暴風雨の中の一閃】
「今じゃ! 紅緒ぉぉぉっ! 港の光を守ってつかぁさい!」
ひよりの呉弁の大声援が、暴風雨を突き抜けて響き渡った!
「おみくじ箱、最後の御託宣を!」
『ひより様! 本日の運勢は【大吉】! 『嵐を切り裂く一筋の光、絆の刃に断てぬものなし』にございます!』
おみくじ箱が力強く跳ね、ひよりの手の中で金色の木札を叩き出す。
ひよりの膝の上で、朱色と黄色のモコモコカバーを着たトタン湯たんぽの『ぬくもり』が、情熱的な熱を全身に送り込んでくれる。
『ひより様……私めの熱を、紅緒殿の刀身へ伝えくだされ!』
「うん! 紅緒、ぬくもりの熱も持っていってぇ!」
「謹んでお受けいたします……! ひより様の温もり、そして皆の想い……この一撃に込めさせていただきます!」
朱色の袴を纏った神刀の紅緒が、灯台の最上階から嵐の夜空へと大きく躍り出た!
洗三の水膜が紅緒の足を支え、竹千代の「風軌道補正ゼロ」の計算が頭の中に走る。 紅緒の手にする神刀が、ぬくもりの情熱の熱とステラの星光を纏い、黄金色に激しく燃え上がった。
「我は神刀・紅緒! 天照ひより様が主なり! ポルトーの港を脅かす不吉なる影よ……疾風とともに散るがよい!」
空中で一瞬、時間が止まったかのような静寂。
「絶対切断——神聖・風嵐大断ち……っ!!」
轟!!!!!
朱色と黄金の巨大な光の刃が、台風の渦巻く夜空を真っ二つに切り裂いた!
一閃。
灯台を包んでいた数百匹のガーゴイルの群れが一瞬にして光の粒子となって雲散霧消し、さらに上空を覆っていた分厚い暗雲までもが、刀身の放つ神聖な光によって一気に吹き飛ばされたのだった!
第4章:嵐が去った朝と、美しき七色の虹
【AM 06:00 | 嵐のあとのポルトー大灯台】
激しい台風とガーゴイルの群れが去り、ポルトーの港に静かな朝が訪れた。
東の地平線から澄み切った金色の太陽が昇り、青い海と濡れた白壁の街並みを優しく照らし出していく。 そして、大灯台の真上には、海から街へと架かる大きな「七色の美しい虹」が鮮やかに浮かび上がっていた。
「うわぁぁぁぁぁ……! ぶち綺麗じゃねぇ……!」
ひよりは大灯台の展望台に立ち、心地よい朝風に前髪を揺らせながら感嘆の声を上げた。
老灯台守のハインツが、涙ぐみながらひよりの手を両手で固く握りしめた。
「ひよりちゃん……! 灯台も、港も、みんな無事だばい! あんたたちのおかげだばい! 本当に、本当にありがとうだばい!」
「あはは、ハインツのおじさん、無事で良かったねぇ!」
ギルドへ報告に向かうと、港中の人々や冒険者たちが大波のように押し寄せてきた。
「見たかよあの灯台の光と一閃! ガーゴイルの群れを一瞬で吹き飛ばしちまった!」 「ひよりちゃんたちは、本当にポルトーの守護神だばい!」
ギルドマスターから、約束通りの特別報酬「金貨五枚(約百万円相当)」と、港町ポルトーの最高名誉である「ポルトー名誉市民章」の金メダルが授与された。
「金貨五枚に、金メダル……!? ぶち凄いの貰ってしもーたわぁ!」
ひよりの叫びに、リュックの横で付喪神たちが一斉にカチリ、チョキッ、カコンと誇らしげに音を奏でた。
第5章:宿屋での温かい朝食と未来への笑顔
【AM 09:30 | 宿屋「海猫亭」・ひよりの客室】
激しい大防衛戦を終え、宿屋「海猫亭」の部屋に戻ってきたひよりたち。
テーブルの上には、名誉市民となったひよりのために宿の女将が特別に準備してくれた、豪華な朝食——焼きたてのパンと、港の新鮮な魚料理、そして温かいスープが並べられていた。
「いやぁ〜、昨日の嵐は凄かったけど、みんなが無事でほんまに良かったわぁ」
ひよりがスープを一口すすると、温かい旨味が疲れきった身体に染み渡る。
膝の上では、昭和レトロなトタン湯たんぽの「ぬくもり」が、モコモコカバー越しにぽかぽかと心地よい温もりを届けてくれていた。
『ひより様、私めのお湯も無事に大役を果たせて光栄にございます』
「ぬくもり、ほんまにありがとね。紅緒も、飯蔵も、竹千代も、糸吉も、洗三も、硯水も、おみくじ箱も、ステラも……みんなみんな、うちの最高の家族じゃけぇね!」
ひよりが呉弁で心を込めて言うと、神刀の紅緒が頬を染めて優しく微笑んだ。
「はい、ひより様。私どもはどこまでも、ひより様と共におります」
ひよりは、今日買った新しい和紙と松煙墨を取り出し、パパとママへの日記を大切に書き始めた。
【ひよりの日記】
パパ、ママへ。 昨日の夜、ぶちでっかい台風と悪魔の群れが来たけど、みんなで力を合わせてポルトーの大灯台を守り抜いたよ! 紅緒の一閃がぶち格好良くて、今朝は海に綺麗な虹がかかったんよ。 ギルドから金メダルも貰って、うちはポルトーの名誉市民になったよ! これからもみんなで仲良く冒険を頑張るけぇね! ひよりより
日記帳を大切に仕舞い、ひよりは窓の外の透き通るような青い海を見つめた。
「さーて、今日はこれからみんなで何をして遊ぼうかいねぇ!」
広島呉弁の少女・天照ひよりと、愛おしくも頼もしい八百万の付喪神たちの愉快な冒険旅行は、港町ポルトーの心地よい潮風とともに、これからもどこまでも続いていくのだった。




