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冒険者編 ポルトー5:幽霊船の噂と夜の港警備

ひよりの冒険者編の始まりです。よろしくお願いします

学園を卒業したので、丁寧語ではお話ししません!

登場人物等も方言で物語が進んでいきます。

間違った方言も多数あると思いますのでごめんなさい!

これからもよろしくお願いします


途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。

作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。

これからもよろしくお願いします。


第1章:漆黒の波止場と冷え込む夜の警備


【22:00 | 港町ポルトー・東埠頭警備拠点】


「ひえぇぇ……なんねこの寒さは! 海からの風がぶち冷たいじゃん!」


満月の夜。昼間の活気ある暖かさが嘘のように冷え込んだポルトーの東埠頭で、ひよりは両腕を抱えてガタガタと震えていた。波が埠頭の石垣を洗う「バシャーン、バシャーン」という重い音だけが、闇の中に響いている。


今夜ひよりが受けているのは、冒険者ギルド「潮風の錨亭」からの緊急S級警備依頼——『満月の夜に現れる幻影の幽霊船および強奪魔物の討伐』であった。


「ひより様、あまり身体を冷やしてはなりませぬ。今夜の海上風速は毎秒六メートル、気温は四度まで低下しております」


リュックのサイドポケットで、竹定規の竹千代がカチリと音を立てて警告する。


「分かっとるけど寒いのよ! 息が真っ白じゃわ……」


「カッカッカ! ひより様、こんな事もあろうかと『あの御方』の出番ですぞ!」


木製しゃもじの飯蔵が叫ぶと同時に、リュックの中から『昭和レトロ・トタン金属製湯たんぽのぬくもり』が、ポカポカとした黄金色の光を放ちながらひよりの腕の中へと飛び込んできた。


「ぬくもりーっ! 待っとったよーっ!」


ひよりが抱きしめると、トタン独特の波状の金属肌から、まるで日だまりの中にいるような優しく深い熱がじんわりと身体の芯まで染み渡っていく。


「ふぁぁぁ……あったかいぁ……生き返るわぁ……。ぬくもり、あんたはほんまに最高の湯たんぽじゃね」


『ひより様、私めのお湯の温度はただいま七十八度。朝まで絶対に冷めませぬゆえ、心ゆくまで温まってくだされ』


ぬくもりからの頼もしい声に、ひよりは頬をすり寄せて幸せそうな息を漏らした。


第2章:『おみくじ箱』の不穏な託宣と濃霧の襲来


【23:30 | 満月の頂点】


夜空の真っ真ん中に、爛々と輝く満月が昇りつめた。 その瞬間、海の表情が一変した。穏やかだった波が急激に荒立ち、漆黒の海面からドロリとした不自然な紫色の濃霧が沸き立ち始めたのだ。


「ひより様、来ます……!」


朱色の袴を纏った神刀・紅緒が、鞘を固く握りしめて実体化した。その凛とした瞳が沖合を鋭く睨み据える。


ひよりは腰から『おみくじ箱』を取り出し、カコンと強く振った。


「おみくじ箱、今夜の戦い……どうなるかいね!?」


からからと乾いた音が響き、中から飛び出した木札には、漆黒の文字で不穏な御託宣が刻まれていた。


『ひより様、本日の御託宣は【末吉】! 『闇より来たる死せる者の船、実体なき幻影に刃は届かず。聖なる光と浄化の水をもって、歪みし因果を断ち切るべし』にございます!』


「実体がない……? 刀が効かんってことかいね!?」


文机の付喪神・硯水が空中を浮遊し、眼鏡を光らせて急ぎ解説に入る。


『ひより殿! 幽霊船(ゴーストシップ)の本体は、実体を持たない『怨念の集合体(アンデッド・ファントム)』です! 通常の物理攻撃や剣撃はすべて透き通ってしまい、ダメージを与えられませぬ!』


「じゃあどうやって倒すんよ!?」


『紅緒殿の『神聖な神気』と、洗三殿の『浄化の湧き水』を融合させるのです! 聖なる水で霊体を実体化させ、そこへ紅緒殿の一閃を叩き込む! これ以外に道はございませぬ!』


その直後、ゴオオオオ……という地鳴りのような汽笛の音が海一面に響き渡った。


濃霧を押し分けて現れたのは、腐ち果てた巨大な木造の帆船——『幻影の幽霊船』であった! 折れたマストには破れた黒い帆が揺れ、甲板には青白い光を放つ骨骸の海賊魔物(スケルトン・パイレーツ)たちがぎっしりと群がっている!


第3章:幽霊海賊団の襲来と付喪神たちの防衛戦


【24:00 | 埠頭の激突】


「ギシャアァァァァッ!」


幽霊船が埠頭に接岸すると同時に、数十匹のスケルトン兵たちがサビついた海賊刀と槍を手に、雪崩のように埠頭へ飛び降りてきた! その狙いは、埠頭の倉庫に保管されている港の物資や食料だ。


「港の荷物には指一本触れさせんよ! 竹千代! 糸吉!」


「敵群の突進速度、秒速三・五メートル! 左右からの挟み撃ち攻撃、間合い二・八メートルにて迎撃可能!」


竹定規の竹千代が素早い動きで敵の距離を完全計測する。


「チョキチョキ! 任せてチョキ! 粘着糸・束縛網!」


裁縫用糸切りバサミの糸吉が空を舞い、透明な粘着糸を網の目状に張り巡らせた! 突進してきたスケルトン兵たちが次々と糸に絡め取られ、身動きが取れなくなっていく。


「ギシャァ!? 動けん! 糸が切れぬ!」


「カッカッカ! 動きが止まったならワシの出番だばい! 特大木製しゃもじ・大ハリセン連打ぁぁぁ!」


巨大しゃもじを構えた飯蔵が疾風のように突進し、糸に引っかかった骨の海賊たちを豪快に叩き潰していく! ズガァン! ズガァン! と骨が砕け飛ぶ快音が夜の埠頭に響き渡る。


しかし、倒しても倒しても、幽霊船の船倉から不気味な青い光が放たれ、砕けた骨が磁石のように引き寄せ合って元通りに再生してしまう!


「ダメじゃ! 骨が何回でも元に戻ってしまうよ!」


『ひより殿、やはり幽霊船の船首にある『怨念の魔晶核』を破壊せねば、敵の再生は止まりませぬ!』


硯水が指し示した幽霊船の船首には、巨大な赤黒いドクロの形をした魔晶石が不気味に発光していた。


「あそこまで行くよ! 洗三、紅緒、うちの背中を守ってつかぁさい!」


第4章:洗三のドバドバ大洗浄&神刀紅緒の神聖一閃!


【24:30 | 幽霊船の甲板・決戦】


ひよりはリュックを担ぎ直し、幽霊船の甲板へと飛び移った! 甲板はぬめりけのある不気味な怨念の霧に包まれ、踏み込むだけで足元から冷気が忍び寄ってくる。


「ギシャアァァッ!」


船首を守る巨大な『怨念の船長(キャプテン・ゴースト)』が、三メートルを超える巨躯を起こし、巨大な幻影の錨(アンカー)を振りかざして襲いかかってきた!


「ひより様、お任せください!」


紅緒が朱色の袴を翻して前に躍り出、神刀を振り下ろす!


ズバァッ!


しかし、神刀の刃は船長の透ける身体をむなしくスリ抜け、甲板の板を斬り裂くだけに終わった。


「くっ……! やはり手応えがない……! 攻撃が透過してしまう!」


「紅緒、どいて! 僕が実体化させるよ!」


三つ仕切りバケツの付喪神・洗三が元気よく躍り出た。手にした三つ仕切りバケツから、溢れんばかりの聖なる湧き水が噴き出す。


「洗三の特製・聖なる浄化水、ドバドバ大洗浄ーッ!!」


バケツから解き放たれた清らかな水が、光の濁流となってキャプテン・ゴーストと船首のドクロ魔晶核へ直撃した!


バシャァァァァァン!!


「ギギャアアアアアッ!? 身体が……冷たい水で重くなるぅぅぅ!?」


洗三の浄化水を浴びた幽霊船長と魔晶核から、ドロリとした黒い怨念の霧が洗い流され、実体を持った粘土のような実体へと変化した!


『今です、ひより殿! 竹千代殿、切断角度の算出を!』


「目標、船首ドクロ核の中心点! 角度右四十二度、刀身の踏み込み八十センチ! 誤差ゼロ!」


竹千代の精密な計算が赤く光る!


「紅緒ぉぉぉ! いけぇぇぇぇッ!」


ひよりの大声援を受け、神刀・紅緒の目が鋭く輝いた。


「我が主に仇なす死霊の船よ……神聖なる光とともに、永遠の眠りにつくがよい!」


紅緒が全身から眩いばかりの神聖な光のオーラを解き放つ。


「神刀・紅緒——絶対切断・神聖浄化破ぁぁぁぁッ!!」


朱色の光芒が、暗闇の海を真昼のように照らし出した。


シューーーーーッ!


紅緒の一刀が、キャプテン・ゴーストと巨船の心臓部であるドクロ魔晶核を寸分の狂いもなく真っ二つに一閃!


ドカァァァァンッ!!


魔晶核が砕け散ると同時に、幽霊船全体が聖なる光に包まれ、まるで泥が水に溶けるように、ガラガラと崩壊を始めた。


「やったぁぁぁぁ! 斬れたぁぁぁぁ!」


「ひより様、船が崩れます! 埠頭へ飛び移ってください!」


ひよりは紅緒の手を固く握り、崩れ去る幽霊船の甲板から埠頭へと飛び降りたのだった。


第5章:港の平穏と湯たんぽの温もりに抱かれて


【02:00 | 警備完了と宿屋への帰還】


ドカン……ゴオオォォ……。


『幻影の幽霊船』は、聖なる光の粒子となって波間へと消え去り、港を覆っていた不気味な濃霧も嘘のように晴れ渡った。雲の切れ間から、美しい満月の光が港全体を優しく照らし出している。


駆けつけた冒険者ギルド警備隊とギルドマスターは、崩壊した幽霊船の残骸(海に浮かぶ大量の高級交易品や宝箱)と、無傷のひよりたちを見て言葉を失っていた。


「す、凄すぎる……! あの何年間もポルトーの港を苦しめていた幽霊船を、たった一人(と道具たち)で完全に消滅させてしまうとは……! ひよりちゃん、君は港町の救世主だ!」


ギルドマスターから感謝の言葉とともに、緊急S級依頼の特別報酬として「金貨五枚(約百二十万円相当)」が手渡された。


「ぎ、金貨五枚……!? ぶち大金じゃん! みんな、またすごいお金が入ったよ!」


ひよりの叫びに、リュックの中の付喪神たちが「カチリ」「チョキッ」「からから」と嬉しそうに音を奏でた。


【03:30 | 宿屋「海猫亭」・ひよりの部屋】


激しい戦いを終え、宿屋「海猫亭」の客室に戻ってきたひより。


ベッドに倒れ込み、安堵の大きな息をつく。


「ふぅぅぅ……今夜は本当にハラハラしたねぇ。でも、みんなのおかげで港を守れて良かったわぁ」


ひよりは、今夜一番の防寒の立役者である『トタン湯たんぽのぬくもり』をギューッと抱きしめた。


「ぬくもり、あんたの温もりがあったけぇ、最後まで元気に戦えたよ。ほんまにありがとね」


ぬくもりがポカポカとした優しい熱を放ち、ひよりの全身を温かい幸福感で満たしていく。


『ひより様、私めはいつでもひより様を温めるために存在しております。どうぞ、ごゆっくりお休みくだされ』


「うん……おやすみ、ぬくもり。おやすみ、みんな……」


神刀の紅緒、木製しゃもじの飯蔵、竹定規の竹千代、糸切りバサミの糸吉、バケツの洗三、文机の硯水、おみくじ箱、天球儀のステラ。


頼もしくも愛おしい八百万の付喪神たちに見守られながら、呉弁の少女・ひよりは、潮騒の歌を子守唄に深い深い眠りについたのだった。

今回は学園を卒業してからのお話です。


励みになりますので、☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。

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