冒険者編 1:徒歩での街道野宿旅
冒険者編の始まりです。よろしくお願いします
学園を卒業したので、丁寧語ではお話ししません!
登場人物等も方言で物語が進んでいきます。
間違った方言も多数あると思いますのでごめんなさい!
第1章:旅立ちの刻とおみくじの託宣
【14:00 | ギルド裏手・西門前】
冒険者ギルド「銀翼の翼亭」で薬草採集の報酬を受け取ったひよりは、西門へ向かって歩いていた。隣街「ポルトー」への街道は、陽光を反射する緑の樹々がどこまでも連なっている。馬車の御者からは「大人しく乗っていけ」と呆れ顔で言われたが、手持ちの銅貨を眺めてひよりは決断したのだった。
「馬車代に銀貨三枚も払うたら、今日のごはん代がのうなってしまうけぇね。足があるんじゃけぇ、歩いて行けばええんよ!」
背中のリュックを「よっこいしょ」と背負い直す。そのサイドポケットで、竹定規の竹千代がカチリと音を立てた。
「ひより様、徒歩での行程は約四十キロ。日没までに中継地点の『モルテン村』に辿り着くのは時間的に不可能と推測いたします」
「ぶち遠いなぁ……まぁ、野宿すりゃあええよ! うちにはみんながおるしね」
ひよりは腰の『おみくじ箱』を両手で包み込み、シャカシャカと景気よく振った。からからと乾いた音が響き、上部の小さな穴から木札が一本、飛び出してひよりの手のひらに落ちる。
「えーっと、本日の運勢は……『半吉』? なん中途半端な……『東に進めば珍味に逢う。ただし足元に影迫る時は、静かに待つべし』。うち、西に向かって歩いとるんじゃけど、大丈夫かいね?」
リュックの角から文机の硯水がそっと顔を出し、呆れたような声を漏らす。
『ひより殿、おみくじの言葉を額面通りに受け取ってはなりませぬ。東とは“昇る太陽”、つまり午前中の運気を指しているのかもしれませぬぞ。それより、そろそろ出発せねば日没に間に合いませぬ』
「あいよ! ほいじゃあ、出発じゃー!」
ひよりは呉弁の威勢のいい声を響かせ、未舗装の街道へと一歩を踏み出した。
第2章:南州の行商人と『黄昏の峠』
【16:30 | 街道沿い・風鳴りの丘】
ふくらはぎに程よい疲労感が溜まり始めた頃、街道は緩やかな上り坂へと差し掛かっていた。両脇には背の高い黄金色のススキが群生し、風が吹くたびに波のように揺れている。
「ふぅー……ちぃと疲れたなぁ。ここらで一休みせん?」
ひよりが街道脇の丸太に腰を下ろそうとしたその時、前方からゴトゴトと重い車輪の音を立てて、一台の引き車がやってきた。車を引いているのは、日焼けした肌に色鮮やかな布を巻き付けた小柄な男だ。
「やあやあ、お嬢さん! こんな時間に徒歩で峠越えかい? 命知らずだねぇ!」
男の声は、語尾が異様に跳ね上がる独特の南州なまり(薩摩弁風)だった。
「おんしゃ、どっから来たとか? この先の峠はな、『影走り』が出るっち言われてて、夜に歩いたら骨も残らんぞ!」
「えっ、影走り……? なんなんそれ、ぶち恐ろしい名前じゃね」
ひよりが怯えると、硯水が瞬時に知識を披露する。
『影走り(シャドウランナー)……体長一メートルほどの二足歩行型小型魔物。影に紛れて群れで襲いかかる習性があります。ですが、ひより殿。おみくじの「足元に影迫る時」という言葉……これのことでは?』
「ほんまじゃ! おみくじ当たっとるじゃん!」
行商人の男は笑いながら、引き車の中から干し肉の塊を取り出した。
「おいどんは商人のおいどん。名をボルドっち言う。これでも食べて、疾走って逃げなさい! チェストー!」
「チェスト……? よくわからんけど、ありがとねボルドさん!」
ボルドから干し肉を受け取ったひよりは、夕闇が迫る峠道を急ぐことにした。
第3章:モルテン村の廃屋と夜の準備
【19:00 | 廃村・モルテン村】
陽が完全に落ち、周囲が深い藍色に包まれる頃、ひよりはかつて村だったと思われる廃墟群に辿り着いた。崩れかけた石造りの家屋が数軒、不気味に立ち並んでいる。
「ここなら風もしのげるし、今夜の宿はここに決め警!」
ひよりは比較的壁が残っている一軒の廃屋に入り、背中の荷物を下ろした。
「さぁて、夜の警戒網を張るよ。糸吉、頼めるかい?」
リュックから跳び出したのは、レトロな裁縫用糸切りバサミの付喪神・糸吉だ。チョキチョキと軽快な刃音を立てながら、半透明の付喪神の姿となって壁から壁へと目に見えないほど細く頑丈な「因果の粘着糸」を張り巡らせていく。
「チョキチョキ! ひよりちゃん、これで網にかかったやつは一発でピンチだよ!」
「ありがとね、糸吉。これで安心してご飯が食べられるわ」
続いて、三つ仕切りバケツの洗三が小さな男の子の姿で実体化した。手にしたバケツには、近くの沢で汲んできたばかりの清らかで透明な水が満ちている。
「ひよりお姉ちゃん、お水汲んできたよ! 泥汚れも全部綺麗に洗っておいたからね!」
「うわぁ、洗三、仕事が早いのう! 助かるわぁ」
第4章:豪快! 飯蔵の巨大食材ディナー
【20:30 | 廃屋の中庭】
「カッカッカ! ひより様、お待ちかねの夕食の刻でございますぞ!」
大きな木製しゃもじの付喪神・飯蔵が、腹の底から響く大声で顕現した。飯蔵の手には、道中でひよりが偶然拾った(というか、足に引っかかった)「大角イノシシ」の太もも肉が抱えられている。
「飯蔵、その肉ぶち大きくない? どうやって料理するん?」
「案ずるなひより様! この飯蔵のしゃもじ捌き、とくとご覧あれ!」
飯蔵が巨大なしゃもじを振りかざすと、豪快な打撃音とともに肉の繊維が柔らかく叩きほぐされていく。さらに、洗三が汲んだ水と、ボルドからもらった干し肉の出汁、ひよりが道中で摘んだ野草が大きな鍋に投入された。
「仕上げは……神刀・紅緒殿の「絶対切断」による、極細ミジン切り野菜!」
短時間だけ実体化した紅緒が、凛とした表情で刀を振るう。一瞬にして野草が細かく刻まれ、鍋へと舞い落ちた。
「ひより様、あまり私を包丁代わりに使わないでいただきたいのですが……」
「あはは、ごめんね紅緒! でもぶち助かる!」
ぐつぐつと煮込まれた特製イノシシ鍋から、甘辛い香ばしい匂いが立ち上る。ひよりが木製のスプーンで一口すすると、濃厚な肉汁と野草の苦味が絶妙に絡み合い、口いっぱいに広がった。
「うまぁぁぁい! 飯蔵、天才じゃね! ほっぺたが落ちそうじゃわ!」
「カッカッカ! 料理人の冥利に尽きますぞ!」
第5章:影走りの襲撃とぬくもりの温もりに包まれて
【23:30 | 深夜の警報】
食事が終わり、昭和レトロなトタン金属製湯たんぽの「ぬくもり」を抱えて眠りにつこうとしたその時——。
ピンッ!
糸吉が張り巡らせた糸が、甲高い音を立てて弾けた。
『ひより殿、起きなされ!「影走り」の群れです!』
硯水の叫び声と同時に、廃屋の窓や天井の隙間から、赤い目を光らせた小鬼のような魔物が十数匹、雪崩のように侵入してきた。
「ひえええ! ほんまに出たぁぁぁ!」
「ひより様、お下がりを! 三十センチの範囲内、我が制圧領域なり!」
竹定規の竹千代が実体化し、素早い足さばきで魔物たちの間合いを正確に測定する。
「右三〇センチ、敵二! 糸吉殿、捕獲を!」
「了解チョキ! 粘着糸、発射!」
糸吉の糸に絡め取られた影走りたちが、ギャアギャアと悲鳴を上げる。しかし、数が多すぎる。壁を越えてひよりの頭上から飛びかかってくる一匹がいた。
「ひより様ッ!」
朱色の袴を翻し、紅緒が顕現した。神刀の一閃が暗闇を切り裂き、神聖な光の刃が影走りを一刀両断する。
「おみくじの『静かに待つべし』とは、このことです! 慌てて外に逃げ出せば、暗闇の中で群れの餌食になっていました!」
「そうか! 廃屋の中で引きつけて叩くのが正解じゃったんじゃね!」
紅緒の絶対切断と、飯蔵の巨大しゃもじによる豪快なハリセン叩き、竹千代の精密な牽制により、影走りの群れは一網打尽にされたのだった。
【03:00 | 沈寂】
激しい戦闘が終わり、静寂が戻った廃屋。付喪神たちは実体化の限界を迎え、それぞれの道具の姿へと戻っていった。
「ふぅ……みんな、ほんまにお疲れ様……」
ひよりはリュックの横に並んだ道具たちを優しく撫でた。
トタン湯たんぽの「ぬくもり」が、ポカポカとした優しい熱を放っている。ひよりはその温もりに包まれながら、毛布にくるまった。
「あたたかいなぁ……ぬくもり、ありがとね……」
冷え込む夜の廃墟の中で、ひよりは泥のように深い眠りについた。
第6章:朝焼けの旅立ちとポルトーへの道
【06:00 | モルテン村の朝】
廃屋の隙間から、差し込む金色の光。鳥のさえずりが静かに響き渡る。
「んん〜〜っ! よく寝たぁ!」
ひよりは大きく伸びをした。身体の疲れは綺麗に取れている。「ぬくもり」の保温力と、飯蔵のスタミナ料理のおかげだ。
洗三が用意してくれた冷たい水で顔を洗い、ひよりは再びおみくじ箱を取り出した。
シャカシャカシャカ……トン。
「本日の運勢は……『大吉』! 『目の前に広がる青空、目的地にて良縁あり』! よっしゃぁ!」
「ひより様、ポルトーまではあと残り十五キロほど。正午までには到達可能でございます」
竹千代の声が心地よく耳に届く。
「よし! ほいじゃあみんな、今日も一日よろしくね! ポルトーに向けて、出発進行じゃー!」
朝日に照らされた街道を、ひよりと愉快な付喪神たちは、元気に歩き出したのだった。
みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?
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今回は女子高生のお話です。
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