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26 拍子技と大太鼓

十二月を迎え、ルミナス魔法学院を取り巻く広大な学園都市は、白い粉雪が舞い散る本格的な冬の到来を迎えていた。

九月のグルメ・ダンジョン収穫祭、十月の街中料理鉄人対決、そして十一月の大学園祭における感動の四十人組体操を、実家の蔵のバールや熊手、藁縄や真田紐といった日常道具の付喪神たちの知恵と力で見事に乗り越えてきた天照ひより。


彼女の旺盛な日常防衛本能と、最高に美味しい冬休みを迎えたいという純粋な願いは、この十二月、進級と冬休みの帰省手形を賭けた最大の難関である『冬休み前・魔導実技総合定期試験』の舞台へと向けられていた。


今年の試験科目の大トリとして発表されたのは、驚くべきことに、古代の暗黒魔導書から発掘された奇怪なる死霊のステップを完全に再現する、前代未聞の『魔導表現ダンス実技試験・課題曲:古代呪術魔奏【スリラー】』であった。


「みんな、おはよう! 十一月が終わって十二月だよ、十二月! カレンダーはいよいよ最後のページになって、街の広場には巨大な聖夜の魔導ツリーがキラキラ輝いて、すっごくロマンチックだけど、私たちの前には冬休み前の地獄の定期試験が立ち塞がっているよ!

しかもね、今年のダンス実技試験の課題曲が、あの大スターのマイケルが踊るみたいな、ゾンビたちがカクカク動いて墓場から這い上がってくる不気味な【スリラー】になっちゃうなんて誰が予想したの!


でもね、この試験で最高得点の『S評価』を取ったクラスには、なんと王宮の特級パティシエが総力を挙げて作り出す『十二月限定・純白魔導イチゴと黄金カスタードの特大十段重ねクリスマス・特製デコレーションケーキ・食べ放題フリーパス』が贈られるんだよ!

これはもう、広島県立女子高生としての私のすべての甘味センサーと、我が実家の蔵のお宝たちの力を合わせて、絶対にA組全員で最高に華麗なゾンビダンスを踊って、ハッピーエンドのクリスマスケーキを胃袋に叩き込むしかないよね!」


冷え込みが厳しくなった十二月の朝風を吹き飛ばすように、ひよりはサンタ風の赤いボアがついた魔導和装の体操着に身を包み、両手に木製の拍子木を構えながら、熱い鼻息を荒くして教室の教卓を叩いていた。


「おいおい、天照! 朝っぱらからクリスマスケーキへの執念が濃厚な魔力となって教室のストーブを異常過熱させてんぞ! 今回のダンス試験は、ただ手足を不気味に動かすような生易しい代物じゃないんだ。

僕たち二年A組のライバルである、あの冷徹極まるエリート集団の二年B組の連中は、今回のために『王宮禁忌・完全死霊死体硬直制御数式(リガーモルティス・コントロール)』を全員の筋肉に組み込んで、寸分の狂いもない、まるで本物の動く屍のような『絶対的な恐怖と統率の暗黒スリラーダンス』を完成させて高得点を狙ってくるらしいんだ!

もし彼らに負けて僕たちの平均点が赤点に届かなかったら、僕のヴァルカン家がこの冬休みのために予約しておいた『王宮特選・最高級魔導カニ味噌ロースト七面鳥・十羽山分け手形』が、教頭先生たちに完全に永久没収されちまうんだぞ!」


ツンツン頭の少年――ルファスが、背中に何十冊もの暗黒舞踏魔導書と、ゾンビのポーズを矯正するための魔導ギプスを背負いながら、顔を真っ青にしてハチマキを締め直していた。


「ひよりさん、ルファスさん! B組の皆さんは、ホラーの恐怖感と精密さだけを重視して、クラスの全員の心臓の鼓動を魔法で一時的に停止させて、本当に『アンデッド(不死者)』の肉体に変形して踊る作戦みたいですぅ!

そんなことをしたら、試験が終わった後にみんなの身体が本当に冷たくなっちゃうか、楽しいはずの十二月の学園が呪いの墓場に変わっちゃいます! 尻尾の毛が恐怖と寒さで凍りついてピーンってなっちゃいそうです!」


犬耳の少女ミーナが、ふさふさの尻尾を細かく震わせながら、寒さと恐怖に震える自らの耳を押さえていた。


「ふむ。人間の生きた感情や楽しさを完全に排除し、ただ死霊の呪いと恐怖のプロット(記述)だけで冷徹な暗黒の舞踏を構築せんとするB組の記述か。

だが、あの伝説の【スリラー】というダンスは、不気味なホラーの裏側に、人間の『死をも吹き飛ばすほどの圧倒的なリズムの躍動感』や『みんなで同じステップを踏み鳴らして、恐怖を最高にエキサイティングなエンターテインメントに変えてしまう弾けるポップな喜び』があって初めて、見る者の魂を揺さぶる至高の芸術へと収束するもの。ただの冷たい死体の硬直だけで本当のダンスの情熱を記述できると思うなよ、ひより」


私はひよりの帯に差し込まれた竹定規の竹千代の裏側の影に、依り代である文机を精神体として小さく出現させ、滑らかな万年筆の先から透明なインクを走らせながら静かに告げた。


私の名は『硯水(けんすい)』。千年の歴史を持つあの蔵の中で、人間の様々なる「冬の寒さを吹き飛ばす熱い踊りの宴」「一人では出せない大きな足音を、みんなで一斉に揃えて大地を踏み鳴らす轟音の喜び」「厳しい冬の夜を、誰もが笑顔のダンスで温め合う心のぬくもり」の歴史を見つめ続けてきた、文机の付喪神だ。


「そうだよ、硯水さん! 呉の学校のダンスの授業でもね、最初は恥ずかしくてカクカク変な動きになっちゃう子も、みんなでリズムに合わせて『ジャン! ジャン!』って足を踏み鳴らしているうちに、すっごく楽しくなって最後は全員で大爆笑しながらポーズを決めるのが一番最高だったんだもん!

魔法で本当に死体になるなんて絶対に間違ってる! だからね、この異世界の十二月の試験でも、一人一人の生きたビートの大切さと、世界一華麗で最高にエキサイティングな四十人のハッピーエンド・スリラーを教えてあげるんだ!」


ひよりが力強く拳を握りしめ、クラス四十人全員と共に、紫色の怪しい死霊の炎が揺らめく巨大な地下実技試験スタジアムの黒い演台へと、堂々たる足取りで一歩を踏み出した。


第二章:激突! B組の死冷なるアンデッド・ダンス


「さあさあ、集まった哀れなる審査員ども、そして恐怖に慄く生徒たちよ! 我が二年B組が誇る、最先端暗黒魔導の結晶、一切の生命活動を停止させた絶対なる死の美をご覧あれ! ――【禁忌魔導・完全死霊硬直暗黒舞踏(ホラー・スリラー)】!!」


スタジアムの反対側、暗黒のパイプオルガンが不気味な重低音を響かせる中、B組のリーダーであるエリート魔導師の声が響き渡った。


彼らが一斉に呪文を唱えると、B組の生徒四十人の身体から一瞬にして体温が消え去り、その瞳が怪しい赤紫色の死霊の光へと書き換えられた。


彼らは完全に心臓の鼓動を停止させ、冷徹な数式によって筋肉の収縮を完全制御された『本物の動く屍』と化し、寸分の狂いもない、まるで地獄の底から這い上がってきたゾンビ軍団のような、完璧にシンクロしたカクカクとした首の動きと、一糸乱れぬ爪を立てるポーズを披露してみせたのだ。


「おおおおおっ!! 凄い、冷気がここまで伝ってくるぞ! まるで本物の高級なリビングデッドが軍隊のように踊っているようだ! これが現代暗黒魔導の最高峰、寸分の狂いもない完全硬直のダンスか!」


審査員席の魔法学者や上級貴族たちから、その圧倒的な恐怖感に対して、背筋を凍らせながらも高い点数が次々と付けられていく。


しかし、そのB組のピラミッドのようなダンスの内部では、本来ダンスが大好きだった優しい生徒たちが、暗黒魔導の強制制御ルーンの圧力によって意識を希薄にされ、ただの「動く肉体の部品」として苦しそうに冷たい息を吐いていた。


さらに、自分たちの『死の芸術』こそが絶対であると盲信するB組の元悪徳貴族の息がかかった一部の生徒たちが、後から演技を行うA組の『生きたリズム』を完全に破壊するため、スタジアムの床一面に『絶対静寂・魔導音響消滅結界(デッド・サイレンス)』の卑劣な罠を起動させた。


バリバリバリッ!!!


「うわああかっ!? 音が、スタジアムに響き渡る課題曲の【スリラー】のベース音が、一瞬にして音量ゼロの『完全な真空の静寂』に書き換えられちゃったぞ! これじゃあ、リズムが一切聞こえないから、みんなが次のステップを踏み出すタイミングがバラバラになっちゃうし、ダンス試験なんて絶対に不合格だ! 一体どうやって全員で同時に足を踏み鳴らせばいいんだ!」


ルファスが暗黒舞踏魔導書を抱えながら悲鳴を上げる。目の前の広大なダンスフロアは、どんな楽器の音も、生きた人間の声も一瞬で吸い尽くして消滅させる、絶対的な音の絶望のプロットへと変形してしまっていた。


「みんなのビートを奪い去って、せっかく一生懸命練習してきた【スリラー】の楽しいダンスをめちゃくちゃにしようとするなんて……みんなが心臓の鼓動を響かせて、最高の冬休みを迎えるための学園祭の一大試験を、そんな卑怯な罠で台無しにされてたまるかぁぁぁーーーッッ!!」


ひよりの純情と、美味しいクリスマスケーキを絶対にみんなで切り分けて突っ突くという猛烈な日常防衛本能が、極限の出力で爆発した


「ひより,その通りだ。相手が『音を完全に奪い去った絶対の静寂空間』を盾にして、お主たちの美しい四十人のリズムのプロットを絶望の消滅で塗りつぶそうとするなら……我が神社の西の第二蔵の棚の底――

………千年の間、人間のありとあらゆる『どんなに深い雪に包まれて音が聞こえなくなった冬の祭りの合図』や『大嵐の雷鳴の中でも全員の動きを一瞬で同期させる最強の打楽器の響き』、 trenches、そしてどれほど激しい呪いの静寂が遮ろうとも『大地の底まで届く圧倒的な振動のビジョンとして、人間のステップのタイミングを完全に固定する驚異の伝達力』、

そして『バラバラになりそうな四十人のダンスのキレを、一本の強固な躍動の軸として最高にかっこよく束ね上げる』という二つの日常の道具を呼び出すしかないようだな」


「西の第二蔵の、消えた音を大きな響きで蘇らせて、みんなの動きをかっこよく束ねる道具……あ! おじいちゃんが昔、大晦日の深夜の猛吹雪でツルツルになった境内で、カチーン! カチーン! って打ち鳴らすだけで、一瞬で何百人もの参拝客の足元がシャキッとして全員が同じリズムで歩き出した、あの魔法みたいな木製の……

…それに、お母さんがお祭りの太鼓の演奏を指揮する時に、どれほど周囲が騒がしくても、お腹の底までズドン! ズドン! って響き渡って、一瞬で完璧に全員の拍子を揃えていた、あの美しい漆塗りの……!」


「そうだ。あれらは、大破壊の爆破魔法ではない。だが、人間の『どんなに音が聞こえない絶望の闇であっても、知恵を絞って足元からリズムを響かせ、お互いの鼓動をシンクロさせれば、必ずそこには新しい生命のダンスが立ち上がる』という、あまりにも力強い生活の知恵から生まれた道具たちだ。……

……ひより、彼らを呼び出して、その暴走する静寂の記述を、最高にポップでエキサイティングなダンスのステージへと正しく上書きしてやれ!」


第三章:新付喪神現る!「拍子木の絶対同期と大太鼓の共鳴結界」


「デッドストック、最大出力起動! 我が実家の蔵の奥、千年の間、どんな音響消滅の絶望も絶対に許さず、みんなのハートの団結をガチッと同期して一本の力強いファンキーなリズムに叩き上げてきた、最強の舞踏コンボ、おいで!」


実家の蔵の奥から、カチーーーン!!! と


冬の冷たい夜空を切り裂くような硬質で心地よい木音と、


ズドォォォォォン!!! と


大地のマグマを根元から揺さぶるような重厚で熱い打撃音が、スタジアム全体に響き渡った。


光の中から出現したのは――長年の使用によって角が丸くなりながらも、叩き合わせることで周囲のあらゆる迷いのノイズを一瞬で消し去り、人間の意識を強制的に一つの規則正しいビートへと集中させる伝統的な『火の用心・特製サクラ材の拍子木(ひょうしぎ)』と、表面に神聖な金色の三つ巴の紋様を持ち、叩き込まれたエネルギーを空気ではなく『大地の振動(骨伝導ビート)』として一寸の誤差もなく周囲に伝達する巨大な『お祭り用・特選ケヤキ造り大太鼓(おおだいこ)』の一対だった。


「おやおや、随分と冷え切った、音が聞こえない不気味な墓場のような床が、お嬢さんたちの元気なステップを邪魔しようとしているねぇ。……これじゃあ、せっかくの十二月の楽しい課題曲が、ただの死体の硬直になっちまって台無しだよ」


拍子木の表面から立ち上る、どこか懐かしい冬の夜の残り香と、整えられた空間の煙の中から現れたのは、すっきりと引き締まった身体を江戸前の火消し半纏に包み、目元をキリッと引き締めながらも、その指先に「完全なる拍子の同期数式」を宿した職人の姿をした付喪神――


……名を『拍子丸(ひょうしまる)』という。千年の間、神社の境内で発生したあらゆる「大雪の夜の安全見回りの足並み揃え」や「深夜の神聖な儀式における全神官の同時一礼」の最前線に担ぎ出され、どんなに音が消滅した空間であっても「我が木片が交わる音は、すなわち全ての生命の動きを一つに揃える『絶対同期の規律』である」という、強烈な『拍子同期』の執念から神格を得た、拍子木の付喪神だ。


「そしてそしてぇ! タイミングが揃うだけじゃ、四十人のスリラーはかっこよく弾けないからね! ボクがお腹の底からズドンと響く最高にファンキーな低音を、みんなの靴の裏に直接届けてあげるよ、ひよりちゃん!」


大太鼓のどっしりとした胴の周りから、ドンドコと楽しげな太鼓の妖精の粒子をまとって飛び出してきたのは、頭にねじりハチマキをきりりと締め、両手に巨大なバチを抱えて空中を軽快に飛び跳ねる、いかにも活発で力強い少年の姿をした付喪神――


……名を『轟太(ごうた)』という。彼は、伝統的な秋祭りや新年のカウントダウンが爆発的に栄えた時代から、何万人もの踊り手たちの足音を一瞬の誤差もなく「一つの巨大な熱気(大地の共鳴)」へと収束させてきた、大太鼓の付喪神であった。


「拍子丸さん、轟太君! あのB組の卑怯な静寂魔法のせいで、課題曲の【スリラー】の音が全然聞こえないの! みんなの心臓の鼓動を最高に熱く響かせて、四十人の身体をあのゾンビダンスの完璧なリズムで躍動させて!」


「おう、合点承知の助だ、ひよりのお嬢さん! 僕たちの打音を受け止める因果はね、悪魔の静寂だろうが氷の結界だろうが、絶対に消し去りなんてさせやしないのさ!……ただ『すべての生命よ、我が拍子に合わせて一斉に動き出せ』。――【神域同期・金剛拍子木一閃】!」


拍子丸が、自らの本体である特製サクラ材の拍子木をステージの中央で天高く掲げ、カチーーーン!!! と猛烈な力で叩き合わせた。


その瞬間、どんな音も吸い尽くして消滅させていたはずの絶対静寂結界の空間に、目に見える『白い音波の規律のプロット』が走り、消えていた課題曲【スリラー】のあの有名な不気味で最高にかっこいいベースラインが、何倍もの鮮明さを持ってスタジアム全体の空気に強制的に再記述されてしまったのだ。


「な……何だと……!? 我が方の放った、すべての音響を消滅させてダンスを不可能にするはずの絶対静寂が、ただの『火の用心の拍子木』のような道具によって、完全に一つのまろやかなリズムの波動へと復元されているというのか……!?」


遠くの魔導通信機からB組の生徒たちの悲鳴が響き渡り、静寂の呪いがみるみるうちに中和されていく。


「それだけじゃないよ! はい、ボクの番! ズドン! ズドズドン! ドンドコドンドコッ!! ――【神域共鳴・四十人地響き骨伝導ビート】!」


轟太が、驚異的なスピードで巨大なバチを大太鼓の皮へと叩き込み、拍子丸が蘇らせた【スリラー】のベース音のエネルギーを、スタジアムの床を通じて、A組四十人の生徒たちの靴の裏へと『直接響く振動のリズム』として完璧に送り込み始めた。


不思議なことに、轟太の太鼓がズドンと鳴るたびに、ゲテモノのように不気味だったゾンビの動きが、お宝のように洗練された最高にポップでファンキーなストリートダンスのキレへと昇華され、課題曲の持つ恐怖のイメージが、一瞬にして会場全体を巻き込む「最高にエキサイティングなエンターテインメントの記述」へと変形し、四十人の身体が一寸のズレもなく完璧なタイミングで、カクカク、カシャッ! と最高のポーズを連続で決め始めたのである。


「ああっ!? バカな、我が方の罠としての静寂が、ただの『大太鼓』によって、完璧に計算された『全種族が心拍数を跳ね上げて大興奮する究極のポップス・メニュー』へと上書きされていく……!? 止めてくれ、これではただの最高に楽しいダンスの発表会になってしまう!」


犯人たちが絶叫するが、轟太のバチ捌きは止まらない。静寂の呪いが完全に最高のハッピーエンドのビートへと整えられたダンス実技試験の特設ステージには、あと数分で、歴史上見たこともない「完璧な引き分け」の奇跡の光景が幕を開けようとしていた。


第四章:全員がマイケルになった夜と「完璧な引き分けの奇跡」


「さあ、クラスのみんな、お待たせしました! 天照ひより特製、我が実家の蔵の道具たちの愛によって生まれた『奇跡の骨伝導ファンキー・スリラー』の開始だよ! 心臓を止めて踊るなんて冷たい真似は全部やめて、この生きた人間の最高に熱いステップを、フロア全体に響かせちゃおう!」


ひよりの声と共に、A組四十人の生徒たちが、フロアの床を同時に『ドン!!!』と激しく踏み鳴らした。


客席の最前列にいた、ホラー専門の上級暗黒魔導師と、綺麗なダンスを好んでいた王宮の老貴族が、お互いに顔を見合わせながら、あまりの身体の奥から湧き上がるリズムに、思わず同時に席を立って腰を振り始めた。


ドン! パッ! カクカクカシャッ!

「「…………っっっ!!!!」」


その瞬間、二人の、いや、会場にいる何万人もの審査員、人間、エルフ、亜人、魔物たちの脳裏に、十二月の冷たい雪を瞬時に溶かし尽くすような、凄まじいまでの「圧倒的なダンスの幸福のビジョン」が直接上書きされた。


「う……美しい……そして、最高にエキサイティングだぁぁぁーーーッッ!!!

……なんだこれは! ゾンビの不気味な首の傾げや手の動きが、大太鼓の熱い地響きビートによって完全に手なづけられ、フロアの中で最高にかっこいいポップスの爆弾となって弾ける!

それでいて、拍子木の最高にシャープな規律が、死体の硬直のような動きを、一流のダンサーのような洗練されたキレへと引き上げている! 恐怖でもない、ただの運動でもない……


これぞ、これぞ全ての種族の心臓の鼓動が一つに溶け合う


『真の魔導ダンスの奇跡の味わい』だぁぁぁーーーッッ!!」


審査員たちも、一般生徒も、魔物の子供たちも、全員がダラダラと感動の涙と汗を流しながら、自分たちもゾンビの真似をしてフロアで踊り狂った。


「さあ、演技の終了です! これより、A組とB組、どちらのダンスが課題曲【スリラー】の真髄を表現できていたか、最終得点の集計を行います!」


教頭先生が興奮で声を枯らしながら告げ、特大の魔導集計盤の数字が急激に跳ね上がり始めた。


カチカチカチカチカチカチカチ……!!!


左側のB組が表現した『絶対秩序の死霊硬直スリラー』の得点――『九万九千九百九十九点』。


右側のA組が表現した『生命躍動のファンキー共鳴スリラー』の得点――『九万九千九百九十九点』。


ピピーーーン!!!


「な、何ということだ……!? 集計結果は、一点の狂いもなく、完全に『同点・引き分け』です!! どちらのクラスも満点であり、課題曲の持つ『死の恐怖』と『生の躍動』の二つの側面を完全に満たした、歴史上初の『大完全舞踏調停』の達成だぁぁぁーーーッッ!!」


教頭先生が大絶叫し、集計盤が七色のまばゆい聖夜の光を放ったその瞬間、スタジアムからは、これまでの対立が嘘のような、地鳴りのような大歓声とバンザイの嵐が沸き起こった。


「バ、バカな……! 我が連合の放った絶対の静寂が、完璧な『引き分け』という、誰も傷つかない最も美しいハッピーエンドへと上書きされたというのか……!?」


ステージの裏で呪導装置を操作していた犯人たちは、爆発した融合の共鳴魔力と会場のあまりの幸福な笑顔の圧力に完全に叩きのめされ、近衛魔導師たちによって一網打尽に逮捕されていった。


「やった、やったよルファス君! ミーナちゃん! みんなが、みんなが同じステップを踏んで笑顔になってるよ!」


「ああ……! 天照、君は本当に、僕たちの想像を超える最高の定期試験のプロットを接着してくれたよ!」

「ひよりさん、最高ですぅ! 得点が完全に同じなんて、神様でも作れない最高の奇跡ですぅ!」


夜空から降り注ぐ、温かい十二月の聖夜の光の粉を浴びながら、B組のリーダーもA組のメンバーとお互いの健闘を称えてガッチリと握手を交わし、何万人もの異なる種族たちが、肩を組んでスリラーのステップを歌いながら、いつまでも、いつまでも奇跡の引き分けを祝い続けていたのだった。


第五章:聖夜のケーキと、冬休みの帰省約束


こうして、十二月の冬休み前定期試験における「魔導表現ダンス・スリラー対決」の最大の危機は、実家の蔵のすべての付喪神たちの調停の知恵と絆によって、一人の脱落者も出さない完璧な『引き分けハッピーエンド』として解決された。


お祭りのような賑やかな演奏が遠くで響く、満月に照らされた深夜の中央広場の特等席。


ひよりはテーブルの上で、ついに守り抜いた最高の報酬――教頭先生たちから引き分けの特例として両クラスにプレゼントされた、黄金に輝く『十二月限定・純白魔導イチゴと黄金カスタードの特大十段重ねクリスマス・特製デコレーションケーキ』を前に、至福の時間を過ごしていた。


「おいしーーーい!!! 何これ、生クリームが全然重くなくて、口の中で淡雪みたいに滑らかに溶けて、最高級のイチゴの甘酸っぱさと黄金カスタードの優しいコクが合体して、広島の呉の港を見ながら食べるどんなクリスマススイーツより身体の芯までハッピーが染み渡るよ!」


ひよりは特大のケーキの切れ端をこれでもかと頬張り、頬をリスのようにパンパンに膨らませながら、満面の笑みを浮かべていた。


「フ、フン、当然さ。今回のダンス試験では、君のその『よく分からない実家の古い楽器や道具たちの調和の力』に、クラス全体の冬休みどころか僕のヴァルカン家の家門の誇りまで救われちゃったわけだからね。……まぁ、その、天照さん。一月に始まる新学期の最初の初詣のお祭りも、僕が君の隣で一緒に美味しいお雑煮や甘酒を食べながら過ごしてあげてもいいぞ」


ルファスはすっかり胸元の二本線章を誇らしげに揺らしながら、自らの分のケーキを大事そうに口に運び、どこか幸せそうに微笑んでいる。


「ひよりさん、ルファスさん! このクリスマスケーキ、食べると心の中からほかほかと温かいお祭りの思い出が溢れて、冬休みの宿題は全部一日で終わらせられそうな気がしますぅ!」


ミーナも、お皿をピカピカになめる勢いでケーキを平らげ、尻尾を千切れんばかりに激しく振って大喜びしていた。


「ふむ。対立する死の硬直と生の躍動の因果を拍子木で擦り合わせ、大太鼓で一つの完璧な平衡へと誘導して最高のハッピーエンドを掴み取る。これ以上ない見事な十二月の定期試験のプロットだな、ひより」


私は文机に向かい、この『第二十六幕・十二月の冬休み前試験スリラーダンス編』の最後の一ページに、満足のいく文字を刻み終え、万年筆を静かに置いた。


「推敲は終わった、硯水さん?」

ひよりがテラスから差し込む、温かいお祭りの提灯の光に包まれた学園都市の美しい夜景を見つめながら覗き込んでくる。私は微笑み、表紙に力強い文字でこう書き込んだ。


『名もなき神社のデッドストック・第二十六幕~十二月の冬休み前魔導実技試験・スリラーダンスを、すべての付喪神たちの日常調停フルコンボにより、バグを粉砕して完璧な引き分けハッピーエンドで極上クリスマスケーキを堪能してみた~』


「ふふ、完璧な大団円だ。さあ、ひより。十二月でのささやかな大騒動もこれにて一段落。明日からはまた、このルミナス魔法学院で、新しい美味しい冬休みの日常のプロットの始まりだ」


「うん! よーし、一月になったら、今度はみんなと一緒に新春の大福引き大会と、お正月の美味しいお餅つきで美味しい日常をたくさん作っちゃうぞ!」


窓の外では、静かに、優しく十二月の満天の星空が世界を包み込み、王宮の暖かい魔導の光がひよりの黒い髪を美しく照らし出す。


「パパ、ママ。私ね、十二月の試験のステージの中で、実家の全てのお宝たちの力を使って、不気味なスリラーのダンスを世界一エキサイティングなステージに変えて、完璧な引き分けでみんなを笑顔にしちゃったよ。だから……いつか本当に私が呉の家に帰れた時は、あのお店のイチゴ入り入りのクリスマスケーキと、パパの奢りの美味しいホットコーヒー、絶対に家族みんなで、お腹がはち切れるくらい食べさせてね!」


少女のどこまでも明るいハッピーエンドの笑い声と、千年の時を超えてリュックの中で賑やかに笑う付喪神たちの声は、ぬくもりに包まれた学園都市の夜空へ、遠い、遠い故郷の空へと、どこまでも、どこまでも響き渡っていった。

みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?

少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。

励みになりますので、☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。

これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

今回は女子高生のお話です。

よろしくお願いします。

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