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24 ピーラーとあく取り網と

カレンダーのページが十月にめくられると同時に、ルミナス魔法学院が誇る白亜の学園都市は、これまでにない黄金の輝きと、芳醇な香りに包まれていた。

九月の「地下グルメ・ダンジョン収穫実習」を、実家の蔵のバールや熊手といった日常の開墾道具たちの連携で完全勝利へと導き、クラスの垣根を超えた絆を結んだ天照ひより。そんな彼女が次に迎えた舞台は、学園都市の全域を挙げて開催される秋の最大の祭典――『ルミナス大収穫祭・街頭美味パレード』であった。


「みんな、ついに十月だよ! 秋本番、収穫祭の本番だよ! 見て見て、この大通りの賑わい! 呉のれんが通りのお祭りも凄かったけど、異世界の大収穫祭は規模が宇宙レベルだよ!

街中の広場という広場に、黄金の魔導カボチャで作られた巨大なランタンが飾られて、あっちの屋台からは『特製魔導ブタのメープルジンジャー焼き』の香ばしい匂いがして、こっちの屋台からは『エルフ特製・完熟ハニーリンゴの焼きパイ』が信じられないくらい甘い湯気を立ててるんだよ!?

これを全部食べ尽くさずに十月を通り過ぎるなんて、広島県立女子高生としての私のすべての胃袋の尊厳が許さないんだから!」


秋の涼しく爽やかな風が吹き抜ける中央大通り。ひよりは、十月の収穫祭に相応しい、カボチャ色と漆黒の刺繍が施されたルミナス特製の『魔導式秋祭り和装(エプロン付き)』に身を包み、両手に大きな木製のスプーンと特大の取り皿を掲げながら、瞳を爛々と輝かせて飛び跳ねていた。


「おいおい、天照! お前は本当に、世界がひっくり返るような危機の後でも食欲の魔力だけは天井知らずだな! だが、のんびり買い食いを楽しんでいる暇は無いんだぞ!

僕たち二年A組の班は、今回の収穫祭のメインイベントである『街頭クラス対抗・至高のお宝食材調理バトル』の代表に選ばれちまったんだ! 対戦相手は、王都の暗黒料理界から秘密裏に刺客として送り込まれたという、不気味なローブを纏った謎のゲテモノ料理研究会……

……通称『漆黒の混沌饗宴団(カオス・ガストロノミー)』の連中だ! もし彼らに負けたら、僕のヴァルカン家がこの収穫祭のために王宮の特級料理長から買い付けておいた『十月限定・最高級魔導カボチャの極上とろけるプリン・一生分無料手形』が、完全に闇の彼方へ没収されちまうんだぞ!」


ツンツン頭の少年――ルファスが、背中に何本もの巨大な包丁と調理用の魔導加熱炉を背負いながら、顔を真っ青にしてハチマキを締め直していた。


「ひよりさん、ルファスさん! その漆黒の混沌饗宴団の皆さん、収穫祭の神聖な審査会場に、何だかドロドロした紫色のスープとか、トゲトゲが動いている魔界の不気味な芋虫とか、見ただけで気絶しそうな『ゲテモノ食材』を大量に運び込んでいますぅ!

街の人たちにお宝料理の美味しさを伝えるはずの収穫祭が、不気味な毒煙で汚されちゃいそうです! 尻尾の毛が恐怖で逆立っちゃいそうです!」


犬耳の少女ミーナが、もふもふの尻尾を激しく左右に振りながら、ひよりの袖をギュッと掴んで震えていた。


「ふむ。十月の実りの街に、混沌たるゲテモノの不条理を記述せんとする、暗黒の調理プロットか。だが、本来の『お宝料理』とは、珍品や魔々しい異形によって人を驚かせるものではない。

その土地が育んだ最高の食材を、道具への深い愛情と正しい手順によって、食べる者の心を満たす至高の芸術へと昇華させてこそ、真の食の歴史。不気味な見た目の刺激だけで、十月の美しい大団円を上書きできると思うなよ, ひより」


私はひよりの和装の帯に差し込まれた、竹定規の竹千代の裏側の影に、依り代である文机を精神体として小さく実体化させ、滑らかな万年筆の先から透明なインクを走らせながら応えた。


私の名は『硯水(けんすい)』。千年の歴史を持つあの蔵の中で、人間の様々なる「お祭りでの美味しい料理の対決」「料理人が包丁と鍋に込める誇り」「一口食べた瞬間に人々が笑顔になる温かい奇跡」の歴史を静かに見つめ続けてきた、文机の付喪神だ。 


「そうだよ、硯水さん! 呉の港のお祭りでもね、みんなが一生懸命作った肉じゃがや、美味しいおうどんを食べて、みんなが『美味しいね!』って笑顔になるのが一番のお宝だったんだもん! どんなに珍しい魔法の食材でも、みんなを怖がらせたり、お腹を壊させたりするようなゲテモノ料理に、この十月の最高の収穫祭をめちゃくちゃにされてたまるかぁぁぁーーーッッ!!」


ひよりが力強く拳を握りしめ、中央広場に特設された巨大な屋外調理ステージへと一歩を踏み出した、まさにその時だった。


第二章:漆黒のゲテモノ料理と、お宝食材への呪い


特設ステージの周囲は、何万人もの観光客や亜人、魔物たちの熱気で埋め尽くされていたが、対戦相手である『漆黒の混沌饗宴団』が調理を始めた瞬間、ステージの右半分から不気味な紫色の毒霧と、ドロドロとした暗黒の魔力が噴き出し始めた。


「クハハハ! 愚かなルミナス魔法学院の子供たちよ! 収穫祭の綺麗事など、我が暗黒料理界の至高の芸術――『千眼魔界イカの生血とトゲトゲ毒芋虫のドロドロ暗黒魔導煮込み』の前には、ただの退屈な家庭料理に過ぎんわ! このゲテモノが放つ圧倒的な魔力の刺激によって、審査員たちの味覚を完全に麻痺させ、この街の収穫祭を混沌の悪夢(バグ)で塗りつぶしてやる!」


不気味な漆黒のローブを着た調理師たちが、巨大な髑髏の形をした鍋に、のたうち回る魔界の食材を次々と放り込んでいく。

その調理から発せられる不条理な波動は、なんとA組が用意していた、この世界で最高峰とされるお宝食材――『純白の特級魔導ハニーポーク』や『完熟黄金カボチャ』の鮮度を急激に奪い、食材の因果関係を「腐敗と呪いのノイズ」へと強制的に書き換えようとしていた。


「な、何だと!? 僕たちが収穫祭のために、何日もかけて遠くの聖なる谷から運んできたお宝食材の表面が、相手のゲテモノ料理の呪いの煙のせいで、ドロドロとした黒いカビみたいな魔力に覆われ始めていくぞ!

これじゃあ、調理を始める前に食材が全部毒物に変わっちまう!」


ルファスが調理用魔導加熱炉を必死に盾にしながら悲鳴を上げる。お宝食材たちの輝きが失われ、無残なバグノイズの塊へと変貌しようとする絶望的な光景が目の前に広がっていた。


「そんなの、そんなの絶対に許さないんだから! みんなが汗を流して育てて、みんなが楽しみに待っているお宝食材を、そんな不気味な煙で汚して台無しにするなんて……最高に美味しくてハッピーな私のカボチャプリンの未来を、そんなゲテモノのバグイベントで終わらせられてたまるかぁぁぁーーーッッ!!」


ひよりの純情と、お宝料理を完成させて最高の秋を堪能するという猛烈な日常防衛本能(食欲)が、極限の出力で爆発した。


「ひより、その通りだ。相手が『食材の表面を汚染する圧倒的な暗黒の不条理』を盾にして、お主たちのお宝調理プロットを絶望のノイズで塗りつぶそうとするなら……我が神社の西の第四蔵の棚の奥――

………千年の間、人間のありとあらゆる『調理の前に食材に付着してしまった頑固なアクや汚れの完全な削ぎ落とし』や『バラバラに飛び散る油や不純物を一滴残らず完璧に堰き止めて隔離する』、

そしてどんなに固くこびりついた暗黒の汚点であっても『柔軟な刃先による表面の薄皮一枚の超精密な剥ぎ取りと、強固な金属の枠による純粋なる領域の完全な防衛』という二つの知恵によって、一瞬で元の綺麗な純白の輝きへと強制補正し続けてきた、あの二つの伝統的な日常道具を呼び出すしかないようだな」


「西の第四蔵の、食材の汚れを綺麗に剥ぎ取って、不純物を堰き止める道具……あ! おじいちゃんが昔、神社の盛大な秋祭りの時に、泥だらけになったお化けサツマイモや巨大ゴボウの皮を、シャカシャカシャカッて滑らせるだけで、一瞬の狂いもなく真っ白で綺麗なお宝に変えていた、あの小さな湾曲した刃を持つ……それに、お母さんがお台所で、お鍋の表面に浮き出た嫌なアクや不純物の泡を、網目の先でスーッて撫でるだけで、一瞬で透き通るような極上のスープに変えていた、あの……!」


「そうだ。あれらは、大破壊の攻撃魔法ではない。だが、人間の『どんなに不気味な汚れや呪いに侵された食材であっても、その表面の薄皮を綺麗に剥ぎ取り、不純物を完璧に濾し取れば、必ず中からは至高のお宝が再出発できる』という、あまりにも力強い生活の知恵から生まれた道具たちだ。……

……ひより, 彼らを呼び出して、その侵食するゲテモノの呪いの記述を、純白のお宝料理の輝きへと正しく剥ぎ取ってやれ!」





第三章:新付喪神現る!「ピーラーの剥皮境界とアク取りの濾過結界」


「デッドストック、最大出力起動! 我が実家の蔵の奥、千年の間、どんな頑固な汚染も絶対に許さず、食材の表面を綺麗に剥ぎ取り、不純物を濾し取ってきた、最強の調理下ごしらえコンボ、おいで!」


シャカシャカシャカッ!!! スゥゥゥゥゥン……!!!


空間に、研ぎ澄まされた湾曲刃が野菜の皮を驚異的なスピードで滑らかに削ぎ落とすような小気味よい音と、極細のステンレス網が液体の表面に浮く不要な物質を物理的に一網打尽にするような、あまりにも耳心地の良い『清浄と濾過の音』が響き渡った。


光の中から出現したのは――長年の使用によって自らの刃先を極限まで薄く研ぎ澄まし、どんな複雑な曲面にも完璧にフィットして皮を剥く伝統的な『調理用・快速ステンレスピーラー(ピーラー)』と、髪の毛よりも細い金属線を数万本も編み込み、水の分子は通しても不純物は絶対に一粒子たりとも通さない特大の『職人用・極細アク取り網(あくとり)』の一対だった。


「おやおや、随分と泥臭い、ゲテモノ染みた呪いの煙が、お嬢さんの美味しい収穫祭の和装を汚そうとしているねぇ。……これじゃあ、せっかくの最高級ハニーポークたちが、息の根を止められて台無しになっちまうよ」


ピーラーの表面から立ち上る、磨き上げられた金属と清潔な水の香りと、整えられた空間の煙の中から現れたのは、タイトな衣服を身に纏い、手元の一本の刃を華麗にジャグリングさせる、いかにも几帳面で隙のない料理職人の姿をした付喪神――

……名を『皮剥(かわむき)』という。千年の間、神社の厨房で発生したあらゆる「数千個の里芋の神速剥皮」や「一分の隙もない精密な大根の桂むき」の最前線に担ぎ出され、どんなに激しい呪いの侵食であっても「我が刃が滑り抜けた表面は、すなわち絶対不変の『純白の素地』である」という、強烈な『境界剥離』の執念から神格を得た、ピーラーの付喪神だ。


「およびおよびぃ! 剥くだけじゃ、空気の中のドロドロしたアクは消えないからね! ボクがスーッと濾し取って綺麗にしてあげるよ、ひよりちゃん!」


アク取りの網目から、スンスンと音を立てて飛び出してきたのは、頭に大きなメッシュの帽子をつけ、手にした網を神速のスピードで振り抜く、いかとも聡明で潔癖な少年の姿をした付喪神――

……名を『濾過丸(ろかまる)』という。彼は、宮廷の宴が催された時代から、何万杯もの極上スープの濁りを、その網の動きによって一瞬の誤差もなく「透明なる秩序(極上の旨味)」へと収束させてきた、アク取りの付喪神であった。


「皮剥さん、濾過丸君! あの漆黒の混沌饗宴団のゲテモノ料理のせいで、私たちのお宝食材が呪われちゃうの! あの不気味な煙を濾し取って、食材の表面の呪いを綺麗に剥ぎ取って!」


「おう、合点承知の助だ、ひよりのお嬢さん! 僕の刃(ピーラー)が滑る因果はね、悪魔の呪いだろうが邪神の粘液だろうが、絶対に滑り落としはしないのさ!……ただ『ここに刃を当て、表面の汚染物質をピンポイントで削ぎ落とす』。――【神域剥離・快速鋼鉄刃(しんいきはくり・かいそくこうてつじん)】!」


皮剥が、自らの本体である快速ピーラーを両手で構え、ゲテモノ料理の煙によってドロドロとした黒いカビに覆われ始めていた『純白の特級魔導ハニーポーク』と『完熟黄金カボチャ』に向けて、空中でシャカシャカシャカッと目にも留まらぬスピードで滑らせた。


その瞬間、どんな解毒魔法であっても浄化できなかったはずの暗黒の呪いの膜が、皮剥のピーラーの先端から走る『絶対の境界剥離の力』によって、パラパラパラパラッ!!! という音を立てて極薄の皮ごと一気に剥ぎ取られ、ただの「無害な魔力のチリ」へと強制分解されてしまったのだ。


「な……何だと……!? 我が混沌饗宴団の放った、すべてを腐敗させるはずの暗黒料理の呪いの膜が、ただの『ジャガイモの皮むき器』のような道具によって、完全に薄皮一枚残さず剥ぎ取られたというのか……!?」


ステージの右半分の黒装束の調理師たちの声が驚愕に大きく引き裂かれ、お宝食材の表面からみるみるうちに、本来の瑞々しい黄金色と純白の輝きが取り戻されていく。


「それだけじゃないよ! はい、ボクの番! スゥスゥスゥスゥ、スゥスゥスゥスゥッ!! ――【神域濾過・一万因果不純物極滅網(しんいきろか・いちまんいんがふじゅんぶつきょくめつもう)】!」


濾過丸が、驚異的なスピードで特大のアク取り網を空中に振り回し、皮剥が剥ぎ取って宙に浮いていた呪いの微粒子や、ステージ右半分からモクモクと流れてきていた紫色のドロドロした毒煙の成分を、一瞬のズレもなく、ただの『綺麗な透明の空気』へとマッピング(濾過変換)し始めた。


不思議なことに, 濾過丸が網をスーッと滑らせるたびに、不気味だったゲテモノの毒煙が、完全にその悪意の成分だけを網の中に絡め取られ、お宝食材の調理エリアの周囲には、十月の秋晴れのような、どこまでも爽やかで清らかな空気が生まれ変わっていったのである。


「ああっ!? バカな、我が方の芸術たる暗黒の毒煙が、ただの『スープのアク取り網』によって、完璧に濾し取られてただの綺麗な空気に上書きされていく……!? 止めてくれ, これではただの最高にクリーンな青空調理室になってしまう!」


暗黒料理師たちが悲鳴を上げるが、濾過丸の網の動きは止まらない。ゲテモノの呪いが完全に濾過され、清浄なる大地のエネルギーへと変換された特設ステージの上には、あと数分で、歴史上見たこともない最高の「お宝料理」の記述が幕を開けようとしていた。


第四章:至高のお宝料理と、街頭を埋め尽くす大団円


「よし、食材の輝きは完全に元通り、いや、皮剥さんと濾過丸君のおかげで、さっきより何倍も瑞々しくパワーアップしてるよ!……ルファス君、ミーナちゃん、反撃開始だよ!」


ひよりの力強い号令と共に、二年A組の調理台から、日常の調理道具たちの、あまりにも温かく、力強い『知恵の連鎖』が爆発的に起動した。


「白妙の修正液で食材のわずかな形の乱れを消し去り、竹千代の竹定規で黄金カボチャの厚みを一ミリの狂いもなく均等に切り揃え、吸着丸のセロハンテープでハニーポークの極上の旨味の肉汁を完全に包み込んで外に逃がさない! ――さぁひより, 我が万年筆から、この十月の収穫祭の歴史に永久に刻まれる『至高の美味の記述(プロット)』を、大鍋の底へと注ぎ込んでやる!」


私が文机の上で滑らかに万年筆を走らせると同時に、ひよりは、皮剥が完璧に剥き上げた黄金カボチャを巨大な蒸し器に投入し、濾過丸が極限まで雑味を濾し取った清らかな魔導天然水を使って、ハニーポークを特製の自家製タレでじっくりと煮込み始めた。


ステージの右半分では、暗黒料理師たちが必死になって「ゲテモノ料理の見た目の不気味さと強烈な刺激」をアピールしようと、髑髏の鍋から紫色のドロドロしたスープを審査員たちに差し出していたが、ひよりたちの調理台から立ち上った香りがステージ全体を包み込んだ瞬間、その不条理なハッキングは完全に無力化された。


ゴトゴト、ゴトゴト……パカッ!!!


対決の制限時間が訪れたその瞬間、ひよりが巨大な特製オーブンの蓋と、大鍋の蓋を同時に勢いよく開け放った。

シュゥゥゥゥゥゥーーーーッッ!!!


その瞬間、中央広場はおろか、学園都市のすべての通り、さらには遠くの山々や魔物の森にまで、ハニーポークが香ばしく焼き上がった時の「どこまでもジューシーで、お腹の底から極上の幸福を呼び覚ますお肉の香り」と、完熟黄金カボチャがとろけるように蒸し上がった「なめらかで濃厚な、これぞ秋の恵みの王様という極上の甘い香り」が、まばゆい黄金の光の爆風となって、一気に吹き抜けていったのである。


「な……何だ、この圧倒的な、五感のすべてを優しく包み込んで涙を流させるような香りは……!? 身体の芯から、まるでお盆やお正方に、家族みんなで大きなテーブルを囲んで食べた、あの世界で一番温かいご飯の記憶が、魂に直接ハッキング(上書き)されてくるような、凄まじい大団円のビジョンが……!」


審査員席の王宮特級料理長や、街の代表の亜人、魔物たちの長たちが、香りを嗅いだだけでダラダラと感動の涙を流し始め、目の前に差し出された、ひより特製のお宝料理――『黄金カボチャの極上とろける贅沢重ね焼き・ハニーポークの特製完熟リンゴソース添え(特大収穫祭サイズ)』を、我先にと掴み取って口に放り込んだ。


「う……美味い……!! 美味すぎるぞぉぉぉーーーッッ!!! カボチャのペーストが、まるで絹のようになめらかで口の中で優しくとろけ、そこに皮剥が完璧に下ごしらえしたハニーポークのジューシーな歯ごたえと旨味が、濾過丸の清浄なスープと完熟リンゴの爽やかな酸味と完璧に合体し、口の中で至高の秋のシンフォニーを奏でている! ゲテモノ料理の奇をてらった不気味な刺激とは次元が違う、これぞ、これぞ私たちがずっと求めていた『大地の恵みとお宝への愛情』そのものだぁぁぁーーーッッ!!」


審査員たち、そして周囲を取り囲む何万人もの観客たちが、配られた料理を貪り食い、大絶叫しながらスタンディングオベーションを送り始めた。

その点数カウンターは上限を遥かに突き破って粉砕され、二年A組の圧倒的な『完全大勝利』を告げる大収穫祭の祝砲が、秋晴れの青空へと高らかに鳴り響いた。


「バ、バカな……! 我が混沌饗宴団の暗黒ゲテモノ料理が、ただの『カボチャの重ね焼きとポークソテー』に、これほどまで完璧に叩きのめされるとは……!」


暗黒料理師たちが、ひよりの料理のあまりの美味しそうな香りと温かさに、自らの悪意の仮面を完全にへし折られてその場に泣き崩れ、お腹をグーグーと鳴らしながら涙を流していた。


「はい、暗黒料理界のみんなも、そんな怖い顔をしてないで一緒に食べよ! 十月の大収穫祭のお宝料理はね、人間も、亜人も、魔物も、暗黒料理師のみんなも、全員で『美味しいね』って笑い合いながら、お腹いっぱい食べるのが一番のハッピーエンドなんだから!」


ひよりが満面の笑みで、出来立ての特大カボチャ重ね焼きを暗黒料理師たち全員に手渡していく。それを一口齧った瞬間、彼らの暗黒のローブはボロボロと崩れ落ち、中から「美味い、温かいよぉ!」と声を上げて全員で子供のように大号泣しながら、A組と街の人々と手を取り合って、収穫の本当の喜びを分かち合ったのだった。


第五章:大団円と「十月の星空のハッピーエンド」


こうして、十月の街頭収穫祭調理対決は、ゲテモノ料理の不条理な呪いをすべて日常の調理道具たちの知恵で包み込んだA組の、完全なる大勝利と、街全体を巻き込んだ最高のハッピーエンドによって幕を閉じた。


お祭りの本番が終わり、収穫祭の温かい提灯の光が優しく揺れる、深夜の中央広場の特等席。

ひよりはテーブルの上で、ついに守り抜いた最高の報酬――ルファスのヴァルカン家から提供された『十月限定・最高級魔導カボチャの極上とろけるプリン・一生分無料手形』をフルに使用した、特大の『秋の収穫祭特製・お宝トリプルカボチャプリンパフェ(完熟ハニーリンゴ添え)』を前にしていた。


「おいしーーーい!!! 何これ、プリンが信じられないくらい濃厚でなめらかで、口の中でハニーポークの後味を最高の甘さで包み込んでくれて、皮剥さんと濾過丸君が綺麗にしてくれた大地の恵みが、スプーンを動かすたびにジュワッて弾けて、呉のれんが通りのお祭りで食べるどんな名物スイーツより身体も心もハッピーになれるよ!」


ひよりはパフェをこれでもかと頬張り、頬をリスのようにパンパンに膨らませながら、最高の笑顔を浮かべていた。


「フ、フン、当然さ。今回の収穫祭バトルでは、君のその『よく分からない実家の調理下ごしらえ道具たちの絆の力』に、暗黒料理界の連中どころか街全体の食文化まで救われちゃったわけだからね。……まぁ、その、天照さん。十月ももうすぐ終わりだけど、これから来る寒い冬の季節のイベントも、僕が君の隣で一緒に美味しいものを探してあげてもいいぞ」


ルファスはすっかり胸元の二本線章を誇らしげに揺らしながら、自らの分のお菓子を大事そうに口に運び、どこか幸せそうに微笑んでいる。


「ひよりさん、ルファスさん! このカボチャプリン、食べると心の中からポカポカと温かい魔力が溢れて、次の魔術理論の試験も全部満点が取れそうな気がしますぅ!」



ミーナも、お皿をピカピカになめる勢いでパフェを平らげ、尻尾を千切れんばかりに激しく振って笑っていた。


「ふむ。ゲテモノの不純な因果を濾し取り、食材の呪いの薄皮を綺麗に剥ぎ取って最高のハッピーエンドを掴み取る。これ以上ない見事な十月の収穫祭プロットだな, ひより」


私は文机に向かい、この『第二十四幕・十月の街頭収穫祭・お宝料理対決編』の最後の一ページに、満足のいく文字を刻み終え、万年筆を静かに置いた。


「推敲は終わった、硯水さん?」

ひよりがテラスから差し込む、温かいお祭りの余韻に包まれた学園都市の美しい夜景を見つめながら覗き込んでくる。私は微笑み、表紙に力強い文字でこう書き込んだ。


『名もなき神社のデッドストック・第二十四幕~十月の街頭収穫祭・ゲテモノ料理対決を、すべての付喪神たちの日常調理下ごしらえフルコンボにより、バグを粉砕してお宝カボチャプリンを堪能してみた~』


「ふふ、完璧な大団円だ。さあ、ひより。十月でのささやかな大騒動もこれにて一段落。明日からはまた、このルミナス魔法学院で、新しい美味しい秋と冬の日常のプロットの始まりだ」


「うん! よーし、十一月になったら、今度は街のみんなと一緒に世界一大きなほかほか肉まん大会で美味しい日常をたくさん作っちゃうぞ!」


窓の外では、静かに、優しく十月の黄金色の星空が世界を包み込み、街中に飾られたカボチャのランタンの温かい光が、ひよりの黒い髪を美しく照らし出す。


「パパ、ママ。私ね、十月の収穫祭の街の中で、実家の全てのお宝たちの力を使って、不気味なゲテモノの呪いを最高にハッピーなお宝カボチャプリンに変えて、みんなでお腹いっぱい食べちゃったよ。だから……いつか本当に私が呉の家に帰れた時、屋台の限定のコロッケと唐揚げのトッピング海軍カレー、絶対に家族みんなで、お腹がはち切れるくらい食べさせてね!」


少女のどこまでも明るいハッピーエンドの笑い声と、千年の時を超えてリュックの中で賑やかに笑う付喪神たちの声は、ぬくもりに包まれた学園都市の夜空へ、遠い、遠い故郷の空へと、どこまでも、どこまでも響き渡っていった。

みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?

少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。

励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。

これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

パラレルワールドで魔法と多種族の住む異世界でスキル無しで探偵します。

ローマ編も追加しています。17時投稿です!

よろしくお願いします。

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