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15 印箱と角印(かくいん・抹消スタンプ)と

15 印箱


十一月の白熱した魔導体育祭で、拍子木の絶対音律と足場板の鉄壁の架橋能力という不条理極まりない日常道具コンボを用い、クラス対抗5人6脚で歴史的新記録を叩き出して優勝し、幻のいちご大福をたらふく味わってから一か月。

大陸を吹き抜ける風はすっかり冷徹な氷の刃へと変わり、世界樹の巨木も白い冬の眠りへと就き始める十二月。ルミナス魔法学院は、十月の収穫祭や十一月の学園祭とは完全に異なる、ある意味で生徒たちにとって最も冷酷で、最も容赦のない、絶望的な現実の空気に支配されていた。


「……あー、無理。もう脳の皺(しわ)が全部すり減って平らになっちゃった。魔導構築の第三理論だか、古代エルフの動詞の不規則変化だか知らないけど、こんな呪文みたいな記号の羅列を何十ページも暗記するなんて、一般女子高生のスペックを明らかに超越してるってば……。もういっそのこと、このまま冷たい雪に埋もれて冬眠しちゃいたい……」


学院の広大な図書室の最奥、いつもの特等席。天照ひよりは、山積みにされた巨大な魔導教科書と羊皮紙のノートの山に完全に押し潰され、机の上にべったりと突っ伏していた。

十六歳の女子高生(兼・見習い召喚士)に、ついに異世界の「冬休み前・学期末最終定期試験」という名の、あまりにも非情な現実の壁が立ちはだかっていたのである。


「何を情けない声を上げているのだ、ひより。お主は体育祭で時速一〇〇キロメートルの韋駄天を披露し、収穫祭の暴食魔獣を蝿叩きで吹き飛ばした、生ける伝説の巫女なのだろう?

過去の賢者たちが残した数式や文字のプロットを、頭の中の引き出しに数ページ分だけ綺麗に整理(執筆)して記憶するくらい、小説の構成を一段落分書き換えるよりも簡単なはずだが」


私はいつものように人型の姿をとり、木陰ならぬ書棚の影に愛用の文机を実体化させ、滑らかな万年筆の先で羊皮紙に文字を刻みながら応えた。私の名は『硯水(けんすい)』。

千年の歴史を持つあの超ど田舎の神社の蔵で、人間の様々な学問への挑戦、あるいは一夜漬けの受験生たちの必死な祈りの歴史を文机の特等席から見つめ続けてきた付喪神だ。


「簡単に言わないでよ、硯水さん! 世界を救うのは実家のみんな(付喪神)が不条理なチート能力でドカーンってやってくれるからで、私の地頭というか勉強のスペックは、呉の高校にいた頃から、テスト前になると急に部屋の掃除を始めたくなっちゃうタイプの一番駄目なやつなんだから! あーあ、十二月の呉の蔵本通りにでも行って、イルミネーションで綺麗に飾られた街路樹を眺めながら、屋台のあったかいラーメンでも啜って現実逃避したいなぁ。なんで異世界にまで来て『古代暗黒魔法の構文解釈』なんていう、名前からして頭痛がしてくるテストを受けなきゃいけないの!?」


「それは、お主が今回の期末試験で全科目の平均点を超えなければ、楽しみにしている『冬休みの特別帰省(実家の呉へ一時的に精神を繋ぐ特別儀式)』の許可が、学院長から下りないからだろう?」


ひよりのリュックの隙間から、ひょっこりと顔を出したのは、おみくじ箱の付喪神である『吉凶(きっきょう)』だった。六角形の木箱の体をからからと小気味良く鳴らす。


「そうだよ、ひよりの姉ちゃん。それに、今回の試験が終われば、街の中央広場で『大陸最大級のクリスマスツリー点灯式』とお祭りのパーティーがあるんだろ? ルファスもミーナも、追試なんかでそのパーティーを居残り食らったら一生の不覚だって、さっきからあっちの席で泡を吹きながら猛勉強してるぜ!」


「そうなの! クリスマスツリー! なんでもエルフの職人たちが作った魔導発光ガラスと、ドワーフ族が金細工で鍛えた何千ものオーナメントが、高さ三十メートルの大樅(おおもみ)の木に飾られて、街じゅうが宝石箱みたいになるっていう、この世の楽園みたいなイベント! ……そのためなら、私はこの学期末試験という名の不気味な魔獣を討伐してみせる!」


ひよりが「シャキーン!」と効果音が聞こえそうな勢いでペンを握り直した、その時だった。


第二章:期末試験の絶望と「知性のオーバーフロー」


「おい、天照! この『空間転移の多重円境界方程式』の第三展開が、どうしてこうなるのか君は分かるか!? 僕の脳内の魔力回路が、もう限界を超えてパチパチとショートしそうなんだ!」


図書室の通路から、ツンツン頭の少年――ルファスが、髪の毛をさらに逆立てて、いかにも狂乱した様子で机に突っ込んできた。彼の後ろには、狼の耳と尻尾を完全にヘタらせ、今にも気絶しそうなほど目を回している小柄な獣人の少女――ミーナが、教科書を抱えたままガタガタと震えながら付いてきている。


「あ、ルファス君、ミーナちゃん……。うう、私に聞かないでよ、私も今、エルフ語の過去完了形の活用表の前で、魂が口から半分飛び出してるところなんだから……」


「ひ、ひよりさん……。私、もう教科書の文字が全部、小さな虫さんに見えてきて、頭の中でぐるぐる、ぐるぐる踊ってますぅぅ……。このままだと、私、不合格になって、冬休みの間ずっと、地下の補習室でゾンビさんたちと一緒にお勉強することになっちゃいますぅ……!」


ミーナが涙目を浮かべて、ひよりの袖をギュッと掴む。

そう、ルミナス魔法学院の期末試験は、単に紙にペンで書くだけではない。


試験用紙に込められた「魔導構築の思考波長」を、自身の魔力と頭脳で正確に解きほぐしながら記述していくという、極めて高度な『精神的サバイバル』だったのだ。

個人の魔力が高ければ高いほど、焦りやパニックによって自身の魔力が暴走し、記憶したはずの知識が頭の中で「大爆発(忘却)」を起こしてしまうという、恐るべき罠が仕掛けられていた。


「なるほどな。個人の知識や魔力そのものは決して低くないのだが、試験の重圧と『焦燥(パニック)』によって、脳内の知識のプロット(構成)が完全に混線し、引き出しが開かなくなっているわけか」

私は文机の前で静かに思考を巡らせた。


「ひより、これは単なる暗記能力の問題ではない。バラバラになった脳内の知識を、完璧に整理整頓し、どんなに焦っていても『正しい引き出し』から一瞬で知識を取り出せるようにする必要がある。……我が神社の本殿の裏手、千年の間、神職たちの膨大な祝詞(のりと)や、地域の人々の様々な記録を、その絶対的な『仕分け能力』によって一分の狂いもなく保管し続けてきた、あのシンプルながら最も美しい道具を呼び出すのだ」


「本殿の裏手の、記録を整理する道具……あ! おじいちゃんが毎日、古い御朱印の帳面や、神社の長い歴史の本を、綺麗に包んで重ねてた、あの杉の木で作られた……!」


「そうだ。あれは、ただの木の箱ではない。人間の乱れた記憶や知識を、完璧な『索引(インデックス)』へと並べ替える、至高の整理道具だ」


第三章:猛勉強と「印箱の知識仕分け」


ひよりは山積みのノートの真ん中で大きく息を吸い込むと、自らの膨大な魔力タンクから、波紋のように広がる純粋な銀色の魔力を机の上へと流し込んだ。


「デッドストック、起動! 我が実家の蔵の奥、千年の間、バラバラな記録を完璧に仕分けて護ってきた、最高のお片付け隊長、おいで!」


パカッ……! と、


図書室の重苦しい空気を一瞬で塗り替えるような、どこまでも清々しい杉の木が擦れ合う音が響き渡った。


光の中から出現したのは――

………何十もの小さな仕切りがついており、表面に美しい花の模様が微かに彫り込まれた、伝統的な『印箱(いんばこ・ハンコ入れ)』だった。箱が開くと、中には何百個もの、歴代の神主たちの名前や役割が彫られた美しい木印が、完璧な整列を保って納められている。


「おやおや、随分と頭の悪い散らかし方をしているねぇ。これじゃあ、せっかく覚えた大事な言葉(知識)が、頭の隅で迷子になって泣いちまうよ」


印箱の引き出しから立ち上る、爽やかな墨と朱肉の香りがする煙の中から現れたのは、長い黒髪を白いリボンで上品に結び、手には小さな筆を持った、いかにも聡明で、規律を愛する少女の姿をした


付喪神――名を『印子(いんこ)』という。


千年の間、神社のあらゆる重要な公印や、神職たちの個人印を、その絶対的な「仕切り」によって一分の狂いもなく分類し、いつでも一瞬で取り出せるように管理し続けてきた、印箱の付喪神だ。


「印子さん! 私たち、この期末試験で良い点数を取って、大きなクリスマスツリーのパーティーに行きたいの! でも、頭の中がゴチャゴチャで、覚えたはずの方程式や活用表が全部消えちゃって……力を貸して!」


「ふふ、任せなさい、ひより様。私の身体(印箱)が刻む『仕切りの理(ことわり)』はね、人間の脳内にある膨大な記憶を、根こそぎ完璧な『引き出し(ファイル)』へと並べ替える、至高の知性統制よ! ――【神域仕分・記憶整列(しんいきしわけ・きおくせいれつ)】!」


印子が、自らの本体である印箱の蓋をパチン!と小気味良く閉めた。

その瞬間、ひより、ルファス、ミーナの3人の脳内に、直接「完璧な見出し(インデックス)」の光が、心地よい精神の振動となって直接打ち込まれた。


「……っ!? な、何だこれは!? さっきまで頭の中でドロドロに溶けていた方程式の数々が、まるで図書館の書棚のように、項目ごとに美しく並べ替えられていくぞ!?」

ルファスが驚愕して自らの額を押さえる。


「ひ、ひよりさん……! エルフ語の難しい文字が、頭の中で『Aの引き出し』『Bの引き出し』って、勝手にお部屋に入っていきますぅ!」

ミーナの耳がシャキーンと立ち上がり、濁っていた瞳に、一瞬にして天才的な知性の光が宿る。


「よし、そこんのツンツン頭も、耳の長いお嬢ちゃんも、私の筆の動きに合わせなさい! この公式は『一番の引き出し』! この歴史の年号は『二番の引き出し』! それ、頭の中の印鑑(インデックス)を、正確にポン、ポン、ポンと押しなさい!」


印子が筆をさらさらと振るたびに、3人のペンは、まるで自動筆記の魔法がかかっているかのように、完全に均一な美しさで、驚異的なスピードで白紙の羊皮紙を正解の文字で埋め尽くしていった。それは、単なる丸暗記ではない、自身の知性が完璧にコントロールされた「機能の美」そのものだった。


第四章:試験本番と「魔導エラーの暴走」


そして迎えた、学期末定期試験の最終日。

試験会場となった大講堂には、一学年の生徒たちが一堂に会し、極度の緊張感の中で試験用紙に向き合っていた。ひより、ルファス、ミーナの3人は、印子の完璧な知性仕分け(インデックス)のおかげで、どんな難問が出ようとも、頭の中の引き出しからカチャリと正解を取り出し、サラサラと完璧な解答を記述していた。


しかし、試験が終了する直前の残り十分の段階で、最悪の事態が発生した。

大講堂の壇上に設置されていた、試験用紙の魔力出力を管理し、生徒たちのカンニングを防止するための巨大な「魔導監視水晶(アーティファクト)」が、生徒たちの発する極限の焦燥とストレスの魔力を吸収しすぎたためか、突如として禍々しい漆黒の光を放ち始めたのだ。


キィィィィィィン!!!


大講堂全体に、脳を引き裂くような、凄まじい高周波の魔力ノイズが響き渡る。


「な、何だ!? 監視水晶の魔力回路が、生徒たちのストレスで過負荷(エラー)を起こしたぞ! このままでは、水晶に蓄積された数万文字分の『不合格者の怨念(ネガティブ・魔力)』が、大講堂全体に向かって、脳を破壊する『精神崩壊の吹雪(サイコ・ブリザード)』となって放出されてしまいます!」


試験監督の教授たちが慌てて防御障壁を張ろうとするが、水晶から放たれる圧倒的なエネルギーの波の前に、杖を持つ手すらもガタガタと震えていた。


「くっ……!? あ、頭が……、せっかく整理した知識の引き出しが、あのノイズでバラバラに壊されちゃう……!」

ルファスが頭を抱えて絶叫する。ミーナも恐怖のあまり完全に失神寸前だった。


「不味いな。監視水晶のエラー(バグ)によって、生徒たちの精神そのものがシステムごとハッキングされかけている」


私は文机の前に立ち、万年筆を強く握りしめた。私の現実改変で『水晶が止まった』と書くには、試験会場全体のネガティブな質量が大きすぎて、ひよりの魔力を全て吸い尽くしても相殺しきれない可能性が高い。


「ひより! システムのエラーや、存在してはならない『不正な動作(暴走)』を完全にシャットダウンするなら、私の執筆ではなく、我が神社の『最も不要な動きを否定し、元の静寂へと戻してきた』、本殿の引き出しの奥――千年の間、人間のありとあらゆる『余計な一歩』や『間違いの記述』を、その確実な打撃によって無効化し続けてきた、あの『真四角な道具』を呼ぶのだ!」


「引き出しの奥の真四角な道具……? あ! お父さんがお仕事の書類を間違えた時に、上から四角いスタンプを捺して『はい、これは無し!』ってやってた、あの真っ赤な……!」


「そうだ。あれは、ただのスタンプではない。存在してはならない不適切なエラーを、その絶対的な『拒絶(キャンセル)』の朱によって歴史から完全に抹消する、至高の修正兵器だ」


第五章:エラー修正と「抹消印の強制終了」


ひよりは過負荷の精神ノイズに耐えながら、真っ黒に輝く監視水晶に向けて、渾身のデッドストックの光を放った。


「デッドストック!! 我が家の書斎に眠る、すべての間違いをなかったことにしちゃうお宝、出てきてあの嫌なエラーを全部強制終了しちゃって!」


バシャァァァン!!! と、


空間に大量の「真っ赤な朱肉」が飛び散るような、禍々しくも神聖な魔法陣が出現した。


光の中から出現したのは――重厚な真鍮(しんちゅう)で作られた、印面に「無効」と力強い文字が逆さに彫り込まれた、巨大な『角印(かくいん・抹消スタンプ)』、そして燃え盛るような真っ赤な『朱肉の池』の一組だった。


「おやおや。随分と、お行儀の悪いエラーコードが並んでいますねぇ。……これでは、美しい神社の帳簿(試験会場)が台無しです」


赤いインクの霧の中から現れたのは、全身真紅の格調高い着物を纏い、瞳の奥に絶対的な拒絶の光を湛えた、大変に厳格で美しい女性の姿をした

付喪神――名を『赤印(あかじるし)』という。


千年の間、神職たちが失敗した契約書や、存在してはならない『不正な記述』の上に「真っ赤な無効印」を押し当て、その存在そのものをシステムから完全に抹消し続けてきた、角印の付喪神だ。


「赤印さん! あの水晶の黒いエラーが暴走してるの! 全部、なかったことにしちゃって!」


「不適切な不正動作(バグ)の強制終了ですね。承知いたしました。……我が朱の前に、存在を許されるエラーはございません。――【一捺抹殺・赤墨破却(いっさつまっさつ・せきぼくはきゃく)】」


赤印が、自らの本体である巨大な角印の底面に、池から溢れ出る真っ赤な「神域の朱肉」をたっぷりと浸した。

And then、暴走して漆黒の精神レーザーを放とうとしていた巨大な水晶に向けて、その角印を、ドォォォン!!と、力強く押し当てた。


ジュゥゥゥゥゥゥッ!!!


凄まじい水蒸気と、焦げ付くような朱肉の匂いが大講堂に立ち込める。


なんと、水晶の表面に浮かび上がっていた、数万行の黒いエラーコードの上に、赤印の放った真っ赤な『無効』の文字がピタリと貼り付き、その黒い暴走の光を、文字通り「システムごと完全に強制終了」してしまったのである。


「な……何ということだ……!古代の防衛システムのエラーが、ただの『赤いハンコ』によって、プロセスごと完全に切断された……!?」

試験監督の教授たちが顎が外れそうなほど驚いている。


「ふふ、これでよし。……どんなに偉大な魔法の暴走であっても、上から『無効』と捺されてしまえば、ただの存在しない落書きですからね」


赤印は静かに微笑むと、水晶の表面から赤い朱肉をフッと吸い取り、何事もなかったかのように綺麗に水晶を元の「正常な休眠状態」へと戻して、一組の文房具の姿に還ってひよりのリュックへと収まった。


大講堂の精神ノイズは完全に消え去り、そこには、試験終了を告げる、平和な鐘の音だけが、美しく響き渡っていった。


第六章:世界樹のクリスマスツリーと、呉の未来を想う


期末試験の危機を、「印箱」と「角印(赤印)」という、世界のどの魔導書にも載っていないような不条理な文房具コンボで完全解決したひよりたちの一学年A組。


翌日、発表された試験結果は、ひより、ルファス、ミーナの3人とも、すべての科目で『学年トップクラスの超高得点』を叩き出し、学院長からは「冬休みの特別一時帰省許可証」が、涙ながらにひよりへと手渡された。


そして迎えた、十二月二十四日のクリスマスの夜。


学園都市の中央広場には、約束通り、高さ三十メートルを超える、世界樹の巨木を用いた『大陸最大のクリスマスツリー』が、圧倒的な輝きを放ってそびえ立っていた。エルフのガラス細工が青、赤、緑、黄金色と、まるで生きているかのように明滅し、周囲には、種族を超えた何万もの人々が、温かいホットワインや料理を手に、笑顔でお祭りを祝っている。


「ぷはぁぁぁぁ! 試験の後のフライドチキンと、冷たいベリージュース、最高! 印子さんも赤印さんも、今回は本当に大活躍だったね!」


ひよりはツリーの光を浴びながら、特大のチキンを頬張り、最高の笑顔を浮かべていた。


「本当に、ひよりさんの持っている『ツクモガミ』の力には、頭の中を整理する力から、エラーを消し去る力まで、日常を幸せにするための不思議なぬくもりが詰まっていますね。素晴らしいクリスマスになりました」


セリア生徒会長も、すっかり試験の重圧から解放され、ひよりの隣で楽しそうに特産のターキーを齧っている。


「ふむ。厳しい試練(試験)を乗り越えたからこそ、この聖なる夜の輝き(クリスマスツリー)が、より一層美しくプロットに映えるというものだな、ひより」


私は文机に向かい、この『第九幕・期末試験とクリスマスツリー編』の最後の一行を、満足のいく文字で締めくくったところだった。


「推敲(すいこう)は終わったかい、硯水さん?」

ひよりがツリーの星を見上げながら覗き込んでくる。私は微笑み、表紙に美しい文字でこう書き込んだ。


『名もなき神社のデッドストック・第九幕~十二月の試験パニックを、印箱の仕分けパワーと角印の強制終了で乗り越え、世界一のクリスマスツリーを大切な仲間と眺めてみた~』


「ふふ、実に中身の詰まった、美しい冬の章になったな。さあ、ひより。明日からはついに、お主が待ち望んでいた『冬休み(呉への一時帰省)』の始まりだ」


「うん! よーし、実家に帰ったら、パパとママに、こっちの世界の面白いお話をたくさん聞かせてあげなきゃね!」


世界樹のクリスマスツリーの頂点にある、巨大な魔導の星から、美しい純白の光の粉が雪のように街へと降り注ぎ、ひよりの黒い髪を優しくドレスアップする。


「パパ、ママ。私ね、異世界のすっごく難しいテストで、実家のハンコのお宝の力を使って、学年トップの点数を取っちゃったよ。だから……明日、私の魂が呉の実家に帰った時は、私の大好きなジンギスカンの牛バラと豚足豚耳ハーフ&ハーフ、絶対にパパの奢りで、お腹がはち切れるくらい食べさせてね!」


少女のどこまでも明るい笑い声と、千年の時を超えてリュックの中で賑やかに笑う付喪神たちの声は、聖なる光に包まれた学園都市の夜空へ、遠い、遠い故郷の空へと、どこまでも、どこまでも響き渡っていった。

みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?

少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。

励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。

これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

今回は女子高生のお話です。

よろしくお願いします。

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