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12 合同料理と大鉄鍋


常闇の回廊でのダンジョンキャンプ実習を、長火鉢のぬくもりと竹細工の籠による「お掃除大作戦」という規格外の不条理コンボで完全攻略してから数週間。


大陸の空はすっかり高くなり、ルミナス魔法学院の広大な敷地を取り囲む並木道も、赤や黄金色といった鮮やかな秋の色彩に染まりつつあった。十月。

それはこの剣と魔法の世界、そして亜人と魔物が共存する学園都市にとって、一年で最も華やかで賑やかなお祭り――『大収穫祭(グランド・ハーベスト)』の季節の到来を意味していた。


「……あー、美味い。何これ、エルフの里の果物も美味しかったけど、この『大樹の蜂蜜漬けローストポーク』も、口の中で肉汁がジュワァァって弾けて最高に幸せ……!」


学院の広大な正門前広場から街の目抜き通りにかけて、所狭しと並んだ色とりどりの屋台の雑踏の中。橘ひよりは、串に刺さった香ばしい黄金色の肉を頬張りながら、目をこれでもかと輝かせていた。十六歳の女子高生(兼・見習い召喚士)にとって、お祭りの屋台飯という食べ歩きの天国は、いかなる古代遺産の探索よりも抗いがたい魅力を放っているようだった。


「お主は本当に、どんな世界にいようとも『食』へのプロット(構成)だけは一ミリの狂いもなく邁進するのだな、ひより。大巫女としての高潔なイメージを保つ気は、もはや毛頭ないというわけか」


私はひよりの背負ういつものリュックの隙間から、依り代である文机を精神体として小さく顕現させ、羊皮紙のノートに万年筆でその賑やかな様子をさらさらと書き留めながら応えた。私の名は『硯水(けんすい)』。千年の歴史を持つあの超ど田舎の神社で、人間の喜怒哀楽、そして豊作を祝う秋祭りの歴史を文机の特等席から見つめ続けてきた付喪神だ。


「いいのいいの! お祭りの日くらい、ダイエットも大巫女の看板も全部デッドストックの奥にしまっておくんだから! あーあ、実家のパパとママ、今頃は呉のレンガ通りあたりで、秋の心地よい風に吹かれながら、名物のフライケーキでも齧って『ひより、ちゃんとご飯食べとるんかねぇ』なんて噂してるのかなぁ。娘はこっちで、異世界の屋台の串焼きを両手に持って満面の笑みを浮かべてるっていうのにさ」


「ふふ、ひよりさんが喜んでくれて何よりです。この十月の収穫祭は、この学園都市に住む人間、エルフ、ドワーフ、そして獣人のすべての種族が、大地の恵みに感謝して手を取り合う、最も平和な一週間なのですから」


ひよりの隣で、いつもより少しカジュアルな私服姿に身を包んだ生徒会長のセリアが、嬉しそうに微笑みながら歩いている。彼女の手には、ドワーフ風に豪快に焼き上げられた大麦のパンが握られていた。


しかし、お祭りの活気と平和に満ちたその空間に、突如として不穏な影が差し込んだ。

広場の中央に設けられた、収穫祭のシンボルである「豊穣の大神殿」の方向から、すさまじい怒号と、金属が激しくぶつかり合うような不穏な音が響いてきたのだ。


「な、何!? この平和な収穫祭の真ん中でケンカ!? せっかくの美味しいお肉の味がぼやけちゃうじゃない!」

ひよりが串を片手に憤慨する。


「いえ、ただのケンカではありません……。あの方向は、今年の収穫祭のメインイベントである『異種族合同・大炊き出し料理コンテスト』の会場です!」

セリアの顔から一瞬にして血の気が引き、二人は慌てて人混みを掻き分けて現場へと向かった。


第二章:料理コンテストの危機と「冷め切った鍋」


料理コンテストの特設会場に飛び込んだひよりたちが見たのは、まさに一触即発の、最悪の混沌の光景だった。


「おい、軟弱なエルフども! 大地の恵みを祝うなら、肉と芋をどデかい鉄鍋で泥臭く煮込むのが正義だろうが! お前らの作るような、草の葉っぱを浮かせただけの薄いスープが『収穫の料理』と言えるか!」

頑丈なエプロンをつけたドワーフ族の豪腕料理長が、巨大な包丁を振り回しながら机を叩いている。


「無礼なドワーフめ! 美と調和こそが世界樹の教えです! お前たちの作るような、油まみれの塩辛い煮込みなど、大地の繊細な息吹を汚す泥水も同然! 今年の収穫祭のメインディッシュは、我がエルフの『聖木の実の清澄スープ』にするべきです!」

美しい絹の衣服をまとったエルフ族の宮廷料理長が、負けじと魔法の杖を突きつけて言い返している。


さらにその横では、獣人族の料理人たちが「肉だ! 生肉の塊をそのまま出すのが一番美味いんだ!」と叫び、人間族の商人たちは「いや、一番利益が出る小麦のパイにするべきだ!」と大揉めに揉めていた。


「みんな、落ち着いてください! 種族の誇りを懸けて料理を作るのは素晴らしいことですが、これではお祭りが台無しです!」

セリアが必死に割って入ろうとするが、長年蓄積された「食文化のプライド」の衝突は、王女の言葉をもってしても簡単には収まらない。


そして最悪なことに、種族間の激しい魔力のぶつかり合いによって、会場に設置されていた、都市の巨大な魔導炉から熱を供給する「調理用魔導火床」が、過負荷による爆発を起こして完全に沈黙してしまった。

プスン……という間の抜けた音と共に、すべての調理台から火が消え、会場全体に、十月の冷たい秋風が吹き抜ける。

「あ、熱源が……! 魔導炉の火が完全に消えてしまったわ! このままでは、すべての屋台への魔力供給も止まり、何万もの観光客に振る舞うはずだった『収穫祭のメインスープ』が、冷め切ったただの生ゴミになってしまいます……!」

セリアが壊れた魔導火床を見つめながら、絶望の声を上げる。料理人たちも、火を失った調理場を前に、言葉を失ってガタガタと震え始めていた。


「なるほどな。種族ごとの『我がまま(プライド)』が衝突し、火の消えた調理場に、文字通りの『冷や水』が差されたわけか」

私はひよりのリュックの中から、ふっと煙管の煙を吐き出すように声を届けた。


「ひより、お主のデッドストックの底には、戦闘の役には一切立たないが、『すべての食材の個性を完璧に融け合わせ、一つの至高の芸術へと昇華させる』、あの西の第三蔵の最も年季の入った棚に鎮座していた『あの分厚い道具』が眠っているはずだ」

「西の第三蔵の分厚い道具……? あ! おじいちゃんが秋祭りの度に、近所の人たちを何百人も呼んで、大きなすき焼きとか芋煮を作ってた、あの重たくて丸い……!」


「そうだ。あれは、ただの鉄の塊ではない。千年の間、人間のありとあらゆる『我がまま(具材)』をその懐に受け入れ、強烈な温もりで一つの大団円(美味)へと導いてきた、大鍋の付喪神だ。……ひより、彼女を呼び出して、このバラバラになった連中の魂を、根こそぎ煮込んでやれ!」


第三章:合同料理の開幕と「大鋳鉄鍋のぬくもり」


ひよりは右手の串焼きを気合いと共に食べ終えると、火の消えた巨大な調理場の中心へと歩み出た。


「みんな、ケンカしてる場合じゃないよ! 火が消えたなら、私の実家の一番あったかいお鍋を貸してあげる! デッドストック、最大出力(フルパワー)で起動ぉぉぉーーーッ!!」


ドォォォォォン!!!


広場全体を震わせるような、重厚な金属の響きと共に、特設ステージの真ん中に、これまでにないほど巨大な黒い魔法陣が展開した。

光の中から出現したのは――直径が五メートルはあろうかという、厚みのある真っ黒な、伝統的な日本の『鋳鉄製の大鍋(大鉄鍋)』だった。鍋の表面には、長年の使用によって磨き上げられた、美しい黒光り(油膜)が施されている。


「おやおや。随分と賑やかなお祭りなのに、肝心の鍋が冷え切っているねぇ。……これじゃあ、大地の神様たちも、お腹を空かせて泣いてしまうよ」


大鉄鍋の底から立ち上る、心地よい薪の煙の中から現れたのは、頭に大きな手ぬぐいを巻き、ふくよかな体つきに真っ白な割烹着をまとった、いかにも包容力に満ちた、優しいお母さんの姿をした


付喪神――名を『お鍋(おなべ)』という。


千年の間、神社の秋祭りや飢饉の際の炊き出しで、数え切れないほどの人間の胃袋をその温もりで満たし、「すべての命は、一つの鍋の中で等しく融け合う」という、圧倒的な『調和と抱擁』の執念から神格を得た、大鉄鍋の付喪神だ。


「お鍋さん! この世界のエルフとかドワーフとか人間たちがね、お互いの料理のことでケンカして、火まで消しちゃったの! みんなの食材を全部まとめて、世界一美味しい『収穫祭のちゃんこ鍋』にしちゃって!」

「あいよ、任せときな、ひよりの嬢ちゃん! ワシの身体(お鍋)に入ればな、どんなにトゲトゲした食材も、どんなに頑固な味付けも、全部が最高の『旨味のハーモニー』に変わっちまうんだから!――【万象融解・神苑大鍋(ばんしょうゆうかい・しんえんおおなべ)】!」


お鍋がどっしりと腰を据え、手にした巨大な木べらで自分の天面をポンと叩いた。


その瞬間、魔導炉が壊れて凍りついていた調理場に、どこからともなくパチパチと薪が燃える「神聖な大炎」が湧き上がり、巨大な鉄鍋を瞬く間に真っ赤な熱エネルギーで包み込んだ。鍋の内部からは、ただの熱ではない、浴びた者の頑なな心を芯から解きほぐすような、圧倒的に優しく、香ばしい蒸気が溢れ出し始めた。


「な……何という熱量だ! 我がドワーフの最高級の鍛冶炉ですら、これほど均一で、奥深い熱を通すことはできん! それに、この鍋の鉄肌……千年の執念が宿っているとしか思えんぞ!?」

ドワーフの料理長が、その大鉄鍋の圧倒的な存在感の前に、思わず包丁を落として驚愕している。


「美しい……。無骨な鉄の鍋でありながら、この中に満ちている魔力は、まるで世界樹の根元を流れる清流のように、一切の淀みがない……」

エルフの料理長も、その神聖なぬくもりに当てられ、突きつけていた杖をそっと下ろした。


「さあ、そこの髭の旦那も、耳の長いお兄さんも、ボサボサしてないで自慢の食材をワシの中に放り込みな! ドワーフの肉も、エルフの木の実も、獣人の新鮮な山菜も、全部まとめて、ワシが最高の『命のスープ』に仕立て上げてやるからさ!」


お鍋の豪快で温かい声に押されるようにして、料理人たちは、気づけば自らのプライドを懸けて用意していた最高級の食材――最高級のローストポークの塊、聖木の実、秘境のキノコ、人間族の熟成チーズなどを、次から次へと大鉄鍋の中へと放り込んでいった。お鍋が巨大な木べらでザクッ、ザクッと鍋の中をかき混ぜるたびに、種族の壁を完全に超越した、全大陸の歴史上最も濃厚で、かつ繊細な、えも言われぬ至高の香りが、学園都市の全域へと広がっていったのである。


第四章:暴食魔獣の乱入と「お祭りの団扇(蝿叩き)」


大鉄鍋の中で、全種族の食材が完璧な調和(ちゃんこ鍋)へと仕上がりつつあった、まさにその時だった。

お鍋が醸し出す「世界一美味しい匂い」は、学園都市の観光客だけでなく、都市の遥か外側、魔の森の深奥に眠っていた、おぞましい存在までをも呼び寄せてしまった。


ズズズズズズ……ッ!!!


地響きと共に、特設会場の強固な防壁を突き破って現れたのは、体長十五メートルを超える、巨大な豚と油の塊のような姿をした伝説の魔獣――『暴食の悪魔・ベルゼブブの末裔(グラトニー・ボア)』だった。


「ブモォォォォォォッ!!!」


魔獣は、その濁った目で大鉄鍋を見つめ、口から大量の不浄な涎(よだれ)を垂らしながら、鍋ごとすべてを喰らい尽くそうと、凄まじい突進速度でステージへと迫ってきた。


「た、大変です! 匂いに釣られて、災害級の暴食魔獣が街の中に侵入してきました! 騎士団の防衛線が突破されたようです!」


セリアが慌てて防御魔法を展開しようとする。ドワーフやエルフの料理人たちも、「せっかくの至高のスープが、あの汚い豚に食われてしまう!」と血相を変えた。


「ひより、焦るな」


私は文机の前に座り、原稿用紙に万年筆を構えながら、冷静に状況を分析した。


「あの魔獣は、純粋な『食への執着(悪臭と不浄)』そのもので動いている。……我が神社の秋祭りにおいて、せっかくの神聖な屋台飯や、神様へのお供え物に群がる不浄な羽虫や害獣を、それこそ容赦のない『一撃』で叩き落とし、お祭りの衛生と秩序を護り続けてきた、あの台所の隅に眠る『地味ながら最強の防衛具』を呼び出すのだ」


「台所の隅の……あ! おばあちゃんがいつも、お祭りの屋台の周りを飛び回るハエやアブを、『神聖なお祭りに悪さしちゃダメだよ!』って言いながら、ものすごい速度でパチンパチンって叩き落としてた、あの古びた……!」

「そうだ。あれは、ただのプラスチックの板ではない。お祭りの秩序を乱す『不浄な侵入者』を、容赦ない物理と霊力のコンボで叩き潰す、至高の衛生兵器だ」


第五章:害獣駆除と「蝿叩きの鉄槌」


ひよりは迫り来る巨大な魔獣の前に毅然と立ちはだかると、天に向けて、自身の巨大な魔力タンクから黄金の光を解き放った。

「デッドストック!! 我が家の台所の隅に眠る、お祭りの邪魔者をお仕置きしちゃうお宝、出てきてあの食いしん坊の豚を叩き落としちゃって!」

パシィィィン!!! と、空間に小気味良い、乾いた打撃音が響き渡り、網目状の模様を持つ不思議な魔法陣が出現した。

光の中から出現したのは――長さ数メートルはある、網目状の平たい板がついた、古びた竹製の『蝿叩き(はえたたき)』だった。


「……はいは~い。お祭りの神聖な御馳走に、随分と大きな『ハエ(魔獣)』がたかろうとしていますねぇ。不衛生極まりない、一撃で叩き落としてあげましょう」


蝿叩きの柄から立ち上る、ハッカのすっきりとした煙の中から現れたのは、目元を鋭いお面で隠し、手には本体である蝿叩きを構えた、いかにも厳格で、一ミリの妥協も許さなそうな職人風の女性の付喪神――名を『羽々斬(はばきり)』という。


千年の間、神社の秋祭りで出店される屋台の周りや、本殿のお供え物に近づくあらゆる害虫、害獣を、その驚異的な「動体視力」と「必殺の平手打ち」で駆除し続けてきた、蝿叩きの付喪神だ。


「羽々斬さん! あの大きな豚の化け物が、みんなの作った大切なちゃんこ鍋を横取りしようとしてるの! 思いっきりパチンってして!」

「お祭りの料理を汚す不浄など、ただのハエ同然。……我が間合い(衛生圏)に入ったこと、後悔しなさい。――【神速衛生・百蝿一殺(しんそくえいせい・ひゃくばいいっさつ)】!」


羽々斬が、自らの本体である巨大な蝿叩きを天に向けて構えた。その瞬間、彼女の瞳がキラリと鋭く輝き、突進してくる十五メートルの巨大魔獣の動きが、まるで止まっているかのように彼女の視野に捉えられた。

そして、魔獣が鉄鍋の縁にその汚い手をかけようとした、まさにその刹那――。


パァァァァァァァンッ!!!!!


学園都市の空気を一瞬で真空にするほどの、すさまじく乾いた、そして圧倒的な「打撃音」が広場に炸裂した。


「ブゴッ!?!?!?」


なんと、羽々斬の放った巨大な蝿叩きの一撃が、魔獣グラトニー・ボアの額のど真ん中に完璧なタイミングで直撃したのだ。破壊の魔法ではない、ただの「完璧な平手打ち(叩き落とし)」の衝撃波を受け、十五メートルの巨体を誇る魔獣は、まるで本物のハエのように空間で綺麗に反転し、そのまま広場から遥か数キロメートル外側の『魔の森』の奥深くへと、キリモミ回転しながら凄まじい速度で吹き飛ばされていってしまったのである。


「な……何だってぇぇぇーーーッ!?!? あの騎士団の防壁を破った災害級の魔獣が、ただの『網目のついた板』で、文字通りハエみたいに叩き落とされただとぉぉぉーーーッ!?」


ドワーフの料理長が、顎が地面にめり込みそうなほど驚いて叫んでいる。エルフの料理長も、あまりの神速の打撃に、美しく整えられた髪を振り乱して呆然としていた。


「ふぅ、これでお祭りの衛生は護られました。さぁ、ひより様、料理が冷めないうちに、みんなで美味しくいただきましょうね」

羽々斬は静かにお辞儀をすると、質素な蝿叩きの姿に戻ってひよりのリュックへと収まった。


特設会場には、再び、お鍋の鉄鍋から立ち上る、世界一温かくて美味しいスープの湯気だけが、平和に広がっていった。


終章:合同ちゃんこ鍋の宴と、呉の秋祭りを想う


大収穫祭の最大の危機を、「大鉄鍋」と「蝿叩き」という、異世界のどんな超常魔法の系譜にも存在しない不条理な日常道具コンボで完全解決したひより。


お鍋がじっくりと煮込んでくれた『異種族合同・神域特製ちゃんこ鍋』は、その場にいた料理人たち、そして何万もの観光客に振る舞われ、

「美味い……! エルフの木の実に、こんなにドワーフの肉の旨味が染み込むなんて……!」「私たちは、なぜ今までケンカをしていたんだ……!」と、全員が涙を流して手を取り合い、今年の料理コンテストは満場一致で『全種族合同での歴史的大優勝』という、最高の結末を迎えた。


その日の夜。収穫祭の美しい花火が学園都市の夜空を彩る中、ひよりは特設ステージの横で、セリア、そして元のサイズに戻ってお鍋(鉄鍋)を囲むドワーフやエルフの料理長たちと共に、最高の屋台飯の宴を楽しんでいた。


「ぷはぁぁぁぁ! やっぱり、みんなで作ったお鍋は最高に美味しいね! お鍋さんも羽々斬さんも、本当にお疲れ様!」

ひよりは器に盛られた温かいちゃんこ鍋をハフハフと食べながら、最高の笑顔を浮かべていた。


「本当に、ひよりさんの持っている『ツクモガミ』の力には、種族の壁すらも一瞬で溶かしてしまう、不思議な温もりがありますね。素晴らしい大収穫祭になりました」

セリアも、すっかりドワーフや獣人たちと打ち解け、楽しそうに果実酒のグラスを傾けている。


「ふむ。頑固な者たちが一つの鍋を囲んで笑顔になる。これこそが、秋祭りの最も美しいプロット(大団円)だな、ひより」

私は文机に向かい、この『第七幕・学園都市収穫祭編』の最後の一ページに、満足のいく文字を刻み終え、万年筆を静かに置いた。


「硯水さん、今回の本のタイトルは?」

ひよりが夜空の花火を見上げながら覗き込んでくる。私は微笑み、表紙に力強い文字でこう書き込んだ。


『名もなき神社のデッドストック・第七幕~十月の学園都市収穫祭を、大鉄鍋の調和と蝿叩きのお仕置きで大成功させてみた~』


「ふふ、これ以上ない見事な結末だ。さあ、ひより。お祭りはまだ続くぞ。明日は市場の屋台を全部制覇しにいくのだろう?」

「うん! よーし、明日はセリア様も一緒に、美味しいクレープのお店に突撃だぁ!」


夜空に大輪の黄金の花火が弾け、ひよりの黒い髪を美しく照らし出す。

「パパ、ママ。私ね、こっちの世界の秋祭りで、エルフやドワーフのみんなと、おっきなお鍋を囲んで最高の思い出を作っちゃったよ。だから……いつか呉のレンガ通りの秋祭りにみんなでいく時は、私の大好きなフライケーキ、絶対にパパの奢りで、お腹いっぱい食べさせてね!」


少女のどこまでも明るい笑い声と、千年の時を超えて集まった付喪神たちの賑やかな宴の歌声は、収穫祭の活気に満ちた学園都市の夜空へ、遠い故郷の空へと、どこまでも、どこまでも響き渡っていった。

みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?

少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。

励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。

これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

今回は女子高生のお話です。

よろしくお願いします。

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