幕開け
新作 第3弾目の投稿です。
題名 転生したらしいけどスキルデッドストックって何???
今回の主人公は海軍さんの街呉からの転生した女子高生のお話です
はちゃめちゃのスキルで異世界を乗り越えます。
誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。
途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。
作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。
ダビンチは世界遺産のナスカから謎の大陸ムーのお話です!
当初から作品を見ていただき本当にありがとうございます。
大変励みになっております。
これからもよろしくお願いします。
では、参ります!!
## 第一章:召喚 文机『硯水』参上
水底のような静寂のなかで、私はずっと微睡んでいた。
意識の輪郭は酷く曖昧で、自分が何者であるかも忘れていた。ただ、背中に感じる木の温もりと、時折隙間から差し込むかすかな光の気配だけが、私がまだこの世に留まっている証だった。
私は、千年以上前からその土地に在り続けた、名もなき超ど田舎の神社。その境内にひっそりと佇む、いくつもの古い蔵や祠。そこに収められ、人々に大切に、あるいは執念深く使われ続けてきた道具に宿る「付喪神」の一柱。
だが、私たちの故郷はもうない。
激しい雨の音が、記憶の最後を彩っている。世界の終わりを思わせるようなゲリラ豪雨。山が鳴り、大地が裂け、私たちが眠る蔵も祠も、村のすべてが土砂の底へと埋没した。
すべては闇に消えた。そう思っていた。
――しかし、運命というやつは、実にもって奇妙な軌道を描くものである。
突如として、私の魂を縛っていた泥の重みが霧散した。
目の前が目まぐるしく反転する。暗闇から、光へ。それも、ただの光ではない。嗅ぎ慣れた杉や檜の匂いではなく、嗅いだこともない瑞々しい草木の香りと、どこか甘ったるい魔力の気配が鼻腔を衝いた。
「うわぁっ!? で、出たあぁぁーーーっ!?」
鼓膜を震わせたのは、まだ幼さの残る少女の悲鳴だった。
視界がクリアになる。そこにいたのは、艶やかな黒髪を二つに結わえた、十五、六歳ほどの少女だった。仕立ての良い、だがこの世界の神職の衣装とは明らかに異なる、どこか異国風の豪奢なローブを纏っている。
いや、驚くべきはその魂の格だ。彼女の魂の奥底からは、私たちがよく知る「あの神社」の、あの泥臭くも厳かな神気の匂いがした。
「……お主は。村の、神主の娘か?」
私が己の依り代である『古い文机』の姿から、人間の形――着物を着崩した青年のような姿――へと変化しながら問いかけると、少女は腰を抜かしたまま、目を丸くして私を見上げた。
「え? ええっ!? 日本語!? っていうか、その着物、それにその喋り方……もしかして、日本の神主さん!? いや、でもなんかちょっと怪しい雰囲気が……!」
「失礼な。私は怪しい者ではない。お主の生家にあった蔵で、千年以上も小説や日記を書き連ねるために使われてきた文机の付喪神だ。……それにしても、随分と大きくなったな。私が最後に見たお主は、確か五歳そこらの、鼻水を垂らした童だったはずだが」
「鼻水は垂らしてません!……って、えええええっ!? 実家の付喪神様ぁぁぁーっ!?」
少女の名は、ヒヨリ•マ•テンショウ=天照ひより。
彼女の口から語られた身の上話は、小説家を自称する私の想像力を遥かに凌駕する、奇想天外なものだった。
五歳の時、両親がなぜか「村からテイクオフ(夜逃げ)」し、遠く離れた海軍の町へと潜伏。ひより自身もそこで育てられ、十六歳の女子高生へと成長したという。近所の神社へのお詣りを欠かさない、健気な神主の娘。
だが、運命の日。お詣りの帰り道に、なんと「犯人追跡中のパトカー」にはねられるという、とんでもない災難に遭ったらしい。
「でね!? 気づいたら真っ白な空間にいて、ものすごーーーく別嬪な神様がいたの! その別嬪さんがね、『あなたの実家、ゲリラ豪雨で丸ごと埋没しちゃったから、デッドストックになってる物が多いのよね。可哀想だから、それを呼べるスキルあげる!』って言われて、この世界にドーンって!」
「……なるほど。あの集中豪雨で我が故郷が埋まったというのは事実か。そしてお主は死に、異世界へ転生したと。……しかし、その別嬪神とやら、スキルの命名センスが少々投げやりではないか?」
「それ私も思った!『デッドストック』って! 売れ残りのお宝ってコト!? でも、本当に呼べちゃった……。ここ、剣と魔法と亜人と魔物がウジャウジャいる、ファンタジー世界なんですよ!?」
ひよりが周囲を指差す。
確かに、見渡せば巨木が連なる原生林。遠くからは、聞いたこともない獣の咆哮や、大気を震わせる魔力の波動が伝わってくる。
「私は今、5歳でこの世界の『召喚術士』の家系に拾われて、一応見習いとして学校に通ってるんですけど……実技試験で『一番馴染みのある、世界の底に眠るお宝を召喚しろ』って言われて、やってみたら文机が出てきたんです!」
「文机を呼んでどうするのだ。これで魔物を殴るとでも?」と言われた。
「物理攻撃系文机!? いやいや、付喪神様なんでしょ!? なんかすごい能力とかないんですか!?」
「あるとも」
私は不敵に微笑み、懐から一本の万年筆を取り出した。いや、これは万年筆の姿をした、別の付喪神の力の一端だ。
「私は小説家の才能を持つ付喪神。私がこの世界に言葉を刻めば、それは現実となる。――例えば、そうだな。あそこにいる、不細工なトカゲの運命を書き換えてみせよう」
茂みの奥から、鋭い牙を持つ体長三メートルほどの魔獣『アースリザード』が姿を現した。ひよりが「ひゃあッ!?」と悲鳴を上げて私の背中に隠れる。
私は文机を実体化させ、その前に腰掛けた。そして、空間に浮かび上がった透明な原稿用紙に、猛然と筆を走らせる。
『――突如として現れた大蜥蜴は、猛烈な腹痛に襲われた。昨日食べた魔蝿が当たったのである。彼は戦意を完全に喪失し、自らの巣へと涙目で逃げ帰った。』
サラサラと文字が書き終えられた瞬間、原稿用紙が光となって弾けた。
「グルルル……グ、ギ、ギルゥゥゥゥ!?」
襲いかかろうとしていたアースリザードが、突如として腹を押さえ、短い前足をバタつかせながらのたうち回った。そして、信じられないほどの速度で森の奥へと退却していったのである。
「……す、すごーーーい! 現実改変能力じゃん! チートじゃん!」
「ふっ、だが難点があってな。一文字書くごとに、お主の魔力を恐ろしい勢いで消費する」
「げふっ!?」
ひよりがその場に膝をついた。顔色が心なしか青白い。
「ちょっと待って、一文字につきどれくらい!? 今ので私の魔力タンク、半分くらい空になった気がするんだけど!?」
「仕様だ。何せ私は『デッドストック』だからな。燃費が悪いのだよ。さあ、ひより。主よ。この剣と魔法の世界で、我ら名もなき神社の遺物たちと共に、新たな物語を紡ごうではないか」
これが、私と、数奇な運命を辿る神主の娘との、異世界放浪記の幕開けであった。
## 第二章:開かずの蔵の「お局様」
ひよりが通うのは、この地の中心都市にある『ルミナス魔法学院』。
彼女を拾ってくれたのは、心優しい老召喚術士だったが、彼はすでに他界しており、現在のひよりは特待生としてギリギリの生活費で通学している。
「次の試験は『集団戦闘演習』なんです。クラスのいけすかないエリート貴族たちに『ド田舎者の無能召喚士』って煽られてて……。文机さん、なんとかして!」
「私を便利道具のように呼ぶな。それと、私のことは『硯水』と呼べ。それが私の筆名だ」
学院の裏庭で、私は実体化してパイプ(の形をした煙管)を吹かしていた。もちろん、幻術で周囲からは見えないようにしてある。
「硯水さん! 今の私の魔力量じゃ、あなたの『現実改変執筆』は長文が書けないよ! もっとこう、省エネで、かつ戦闘に特化した付喪神様をデッドストックから召喚できない!?」
「ふむ。戦闘向き、かつ燃費が良いか。……あの神社で、最も武闘派といえば、東の第三蔵に納められていた『あれ』だろうな。ただ、少々性格に難があるぞ?」
「背に腹は代えられないよ! やってみる!」
ひよりは精神を集中し、胸の内に眠る「埋没した実家」のイメージを広げた。
彼女の足元に、禍々しくも神聖な、泥に塗れた魔法陣が展開する。スキル『デッドストック』の発動だ。
「出よ! 我が実家の、東の第三蔵に眠りしお宝(?)よ!」
ゴゴゴゴゴ……と大地が鳴動し、光の中から現れたのは――一振りの、酷く古びた、しかし抜身の輝きを放つ『日本刀』だった。
「おお、刀! かっこいい! これなら前衛としてバッチリ――」
「だあああぁぁぁ誰が前衛じゃワレェェェェ大層な挨拶抜きで呼び出しおってからにィ!!」
キィィィン! と甲高い金属音が響き渡り、刀から立ち上る紫煙が、一人の女性の姿を形作った。
豪快に晒しを巻き、緋色の袴を穿いた、超絶絶世の美女。だが、その口調は完全なる極道、あるいは場スナックのお局そのものだった。
「げぇっ、紅緒の姉さん……!」
私は思わず文机の陰に隠れた。
「ああん!? そこにいるのは硯水の安ポンタンじゃねえか! お前、相変わらず陰気な顔してけったいな文字書いとんのかワレ! ……って、おや?」
紅緒と呼ばれた刀の付喪神は、凄まじい眼光でひよりを睨みつけた。
「お前……あのクソ神主のガキか? 五歳の時に、ウチの蔵の前に犬の糞を放置して逃げた、あのひよりか!?」
「ち、違います! あれは近所のポチが勝手にやったことで、私は片付けようとしただけで――って、覚えてるんですか!?」
「忘れるわけなかろうが! 千年も生きてりゃ記憶力だけは無駄に良いんだよ! ……ふん、まぁええわ。あのド田舎が泥に沈んだ時はどうなることかと思ったが、こんな得体の知れん世界でウチを呼び出すとは、大した度胸じゃねえか」
紅緒はふんぞり返り、自身の本体である刀をひよりに突き出した。
「ええか、娘。ウチは千年前の戦場で、数百人の首を刎ねて神格を得た名刀・『紅一文字』や。魔力消費は少ねえが、ウチを扱うにはそれ相応の『覚悟』が必要やで?」
「か、覚悟って?」
「ウチが戦う時は、敵の返り血を最低一杯は浴びせろってことや! ガハハハハ!」
ひよりは顔をひきつらせたが、背は腹に変えられない。
翌日。学院の演習場にて、集団戦闘演習が始まった。
ひよりの対戦相手は、炎の魔法を得意とする高慢な貴族の嫡男、レナード。彼はオークの変異種である『アーマーオーク』を従え、勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「おいおい、そこの平民。お前が召喚したのは、そんな錆びかけた鉄くず一本か? 笑わせるな! 我がオークの一撃で、そのナマクラごと叩き潰してやるわ!」
「ナマクラ……? おい、ひより。今、あの金髪のモヤシ、ウチのことナマクラ言うたな?」
ひよりの手に握られた紅一文字が、怒りでブルブルと震動している。
「言うた。完全にナマクラって言うた。……姉さん、いっちゃってください!」
「おうよ! 主の許可は出た! そこなデカブツ、ウチの錆の肥やしにしてくれるわぁぁぁ!」
ひよりが刀を突き出すと同時に、紅緒の幻影がオークの背後に転移した。
否、転移ではない。常人には視認できないほどの超高速の「一閃」が、ひよりの手を通じて放たれたのだ。
ズバァァァン!!
「ブモォォォ!?」
強固な鉄の鎧を纏っていたアーマーオークが、一瞬にして鎧ごと胴体を真っ二つにされ、光の粒子となって消滅した。
「な、何ぃぃぃ!? 一撃!? 我が最高峰の魔獣が!?」
レナードが腰を抜かす。
紅緒はひよりの手の中で、満足そうに刀身の血(魔獣の残滓)を吸い上げ、妖しく輝いていた。
「ふん、手応えのない豚や。次はお前か、金髪モヤシ? その首、綺麗に剃髪してやろうか?」
「ひ、ひぃぃぃ! 降参だ! 降参する!」
レナードは涙目で逃げ出していった。
演習場は静まり返り、ひよりは一躍、学院の「要注意人物」として注目を集めることになってしまったのである。
「やったね姉さん!大勝利!」
「おう、気持ちええわ! でもなぁひより、やっぱりこの世界の空気は薄気味悪いわ。日本の、あの泥臭い神社の境内が恋しくなるねぇ……」
紅緒は少しだけ寂しそうな目をしたが、すぐにいつもの豪快な笑みに戻り、刀の中へと消えていった。
みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?
少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。
励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
今回は女子高生のお話です。
よろしくお願いします。




