54:尊大な邪魔者
「密告がありました。どうやら、ナルシア率いる盗賊団が明日、クルード様とリュネット様の不在を狙って、ラプレニア(城下町)を襲撃する算段のようです!」
「……なっ……! 強襲、だと……!?」
言われて顔を跳ね上げた。
もはや毒づいている場合ではない。
クルードは血相を変えショーンに瞳を送る。
素早く渡された羊皮紙に書かれた文字を読むのももどかしく、要件は口から滑り出していた。
「どこからだ」
「ラヴィズです」
「──ラヴィズか……!」
その名を呟きながら、クルードは過去の自分たちを称賛した。
あいつを引き込んだのは正解だった。
元は盗賊ということもあり、そのあたりの密偵業務にはうってつけだ。
あの男の情報ならば、信憑性は高い。
問題は、奴らがリュネットの名を再び穢すために、どんな手段を講じてくるかだ。
「クルード様、奴らの中には、魔法使いも居るとのこと」
「……やはり、それが狙いか。変容魔法……厄介だな」
クルードは眉をしかめ、低く呟いた。
やはりナルシアはリュネットの破滅を狙っている。
リュネット本人が出かけたと見せかけて、盗賊とつながっているところを示し、彼女が築き上げた信頼を完膚なきまでに破壊するつもりである。
リュネットは既に烙印を押されている身だ。
再び偽装や罠によって民心が揺さぶられれば、ここまで築き上げてきた信頼は跡形もなく崩れ去るだろう。さすれば彼女にこの先、安寧など無い。永遠、民に嫌われ、忌み者として扱われてしまう。
それは、避けねばならない。
彼女が築き上げてきた信頼を、あんな女に壊されるわけにはいかない。
「ショーン、他に情報は?」
「詳細な人数は不明ですが、精鋭が含まれている可能性があります。ナルシア自身も加わっているとのこと……」
「──女狐め……ッ!」
あの憎たらしい顔を脳裏に描き、クルードは作戦卓を睨みつけた。
時間は限られている。
明後日には聖女選別のためオルセリアへ発たねばならない。しかし、ここで街が荒らされ、リュネットの名誉が傷つけられれば、彼女の未来にまで影響する。
重苦しい沈黙が軍務室に落ちる。
迷っている暇はない。
打てる手立てはすべて打つ、それだけだ。
そう腹を据えたクルードは、緩やかに視線を地図からショーンに移し、ゆっくりと口を開いた。
「定刻通りにオルセリアへ発つ。それは変えない。しかし、護衛の数を増やせ。賊の動きは厳重に監視だ。城下町に異変があれば即座に知らせろ」
「かしこまりました!」
「──それと」
さらに一拍置き、クルードは考えをまとめるように視線を巡らせた。
そして、鋭い決意を込めて一つの名を口にする。
「──ネネを呼べ」
「ネネ……ですか?」
「ああ。あいつの力が必要だ」




