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16 強行偵察①

 ――数日後

   グループ2宙域 コロニー【208】近郊宙域




 地球から2番目に近い位置にある、幾多もの旧型の円形トーラス型コロニーが並ぶグループ2宙域。老朽化に伴い移住が決定しており、新たな住みかとなる新型であるシリンダー型コロニーの建造が進んでいた。

 宇宙にて始まった繁栄が途絶えることなく続いていることが、並ぶコロニーを見れば実感できる。希望ある光景ではあるのだが、そうもいっていられない者達の姿がグループ2の8基目に建設されたコロニー、【208】近郊宙域にあった。

 上層部から作戦開始までの部隊の待機を指示をされていたモラキンは、艦長席に腰かけてその時を待ち続ける。どうにも浮かないといった彼の表情は、今回の作戦が厄介なものであることを周囲に知らしめていた。

 相も変わらず反応の悪い右手部分のパネルをいじれば、左手側先端に設けられたモニターに上層部からの指示書が表示される。今一度内容が見間違いではないかと確認するも、変わりはない。改めて重いため息をついたモラキンが指示書を閉じたところで、艦橋へとアランに連れられた見知らぬ2人が入ってくるのだった。



「艦長、つい先ほど合流した”新入り”の2人を連れてきました」


「おう、ご苦労」



 アランからの報告に覇気なくモラキンが答える。正反対にやる気で満ちたような”新入りパイロット”は、艦長席の前まで来て誠意のこもった敬礼を実施するのだった。



「本日付で『第2独立兵装試験隊』に合流しました。『ターニャ・ラドフスキー』伍長です。以後、よろしくお願いいたします」



 凛とした雰囲気ではきはきと言葉を紡ぐ少女、『ターニャ』に艦橋内の皆の視線が集まる。容姿もよく、赤みがかった瞳も綺麗なのだが、最も目を引いたのは彼女の透き通るような”白髪”だった。

 髪の毛だけでなく、細めの眉と長めのまつ毛も白い。染めているとは思えぬ透明感。そうした様と美しさを感じさせる乳白色の肌に多くの者が思わず見惚れている中、隣に立つ少々疲れ気味といった様子の男性も僅かに遅れて敬礼をしながら口を開いた。



「同じく本日付けで合流しました、『ロランド・パーシヴァル』軍曹です。よろしくお願いいたします」



 黒い縮れ髪に茶の瞳。先祖に東洋の出が存在することが感じられる『ロランド』。他者からの接触を拒むような重い雰囲気を纏う彼への質問は誰からもなかったが、純粋に気になったことをボーデンは口にした。



「ターニャ伍長ー。質問良いっすかー?」


「何でしょうか」


「伍長の白さは体質によるものなんすかー?」


「先天性白皮症によるものです。投薬によって諸症状は既に改善されましたが、体色の変化はありませんでした」


「『アルビノ』ってやつっすかー」


「はい。この体色を気味悪がり、両親は私を捨てました。拾われた養護施設から軍へ入隊し、ここへ至りました」


「お、おぉう……」



 質問したことに想定以上の内容を乗せて返したターニャにボーデンは顔を引きつらせながらたじろぐ。対するターニャは微動だにしておらず、問いにただ答えただけだといった様子だった。

 可愛らしいとはいえ、ここへと飛ばされただけの”強い癖”を持っている。一筋縄ではいかないことをやり取りから早々に察した面々は、それ以上問いを投げかけることはしなかった。

 


「艦長。迫る出撃の準備のため、格納庫へと向かってよろしいでしょうか」


「ああ。頼む」



 気まずい沈黙が続きそうになった中でアランは助け舟を出し、モラキンはそれを了承する。アランに連れられて新人たちが去ったところで、艦橋の皆はそれぞれに安堵の表情を浮かべていた。

 


「また癖の強いのが……。困ったもんだっての」



 皆の胸の内を代弁するかのようにモラキンが愚痴ると、艦橋内の面々は同感だといった表情を浮かべた。気を取り直してそれぞれが自分の作業へと戻っていった中で、モラキンの視線は格納庫から繋がった回線の向こうへと向けられていた。

 


『艦長、今しがた終わったぞ』


「どうだった、ロイ」


『”指示書の通り”だ。かなり精巧に組まれてて、今からじゃ解除できそうにない』


「……そうか。ご苦労だったロイ。”彼”には申し訳ないが、黙っておくこととしよう」


『歯がゆい気もするがそれしかないな。下手に動けば、自分たちの首が飛んじまう』



 回線の向こうにいる渋い表情のロイとの会話を終えたところで、モラキンは特大の嘆息をつく。滲み出て抑え込めぬ彼の気苦労が艦橋内を満たし、作戦前らしからぬ静けさが漂っていた。



「……悪く思わないでくれよ。これも、決定事項だ」

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