14 髑髏頭(スカルヘッド)④
僅かでも戦力を削りたかった治安維持軍の思惑は外れ、一気に窮地へと立たされる。進路阻害のために放っていた砲撃の照準を迫るハリー達に向けるも、全てが遅すぎてしまった。
巡洋艦からの砲撃の雨の中を縫うように進むハリー達。直撃することはないにしても、掠りすらせず進んでくる姿は相対する存在にとって恐怖以外の何物でもなかった。
「……よし」
【ストライカ―】と【コアⅡ】の射程圏にまで接近したのにも関わらず、ハリーは『対艦用高周波ブレード』の先端を上下させた後に軌道を変更させ始めた。
そのハリーの動きに合わせ、ムラセとアヤノも軌道を変更して互いの距離を開けていく。彼らの不可解な行動に違和感を覚えながらも巡洋艦は主砲の照準を合わせようとした、次の瞬間。
「流石。完璧だね」
開けた射線を活用したテイラー兄妹らの【ケルベロス】が放った砲撃が巡洋艦へと直撃。巡洋艦上部の主砲二門、両側面の副砲二門、先端部ミサイル発射口、そして艦橋が、叩き込まれた徹甲榴弾によって派手に爆散した。
ほぼ同時の砲撃と着弾。兄妹だから息が合っているとはいえ、あまりにも高すぎる精度は感嘆を超えて惚れ惚れするほど。完璧な腕前を見せたはるか後方の兄妹を胸中にて称えつつ、自らも奮起せねばとハリーは【ストライカー】のスラスターを吹かしていった。
まだ生きていた先頭の巡洋艦の上部をCIWSの弾幕を潜り抜けていったハリーは、2隻目の巡洋艦をモニターに捉える。まだ2隻目が速度を落としていないことを確認したハリーは『対艦用高周波ブレード』を逆手に持ち替え、スラスターで急制動をかけつつ眼下にある先頭の巡洋艦後部へと急降下した。
接触と同時に深々と2つの刃が船体へと突き刺さる。刺し貫かれた巡洋艦後部エンジンは小規模の爆発の後、煙を吐き出しながら停止した。彼の行動に合わせるように追撃で叩き込まれた徹甲榴弾6発が先端部で爆散し、先頭の巡洋艦は完全に沈黙し、大きく速度を落とすこととなった。
「じゃあ、一番後ろを狙おうか」
刺し込んだ刃を引き抜いたハリーは【ストライカー】を沈黙した艦から飛び立たせ、ムラセとアヤノと共に最後部の”3隻目”へと向かっていく。無視された2隻目は、彼らに構う余裕など残されていなかった。
減速をかけるのが遅すぎた。こんなにも早く先頭を行く巡洋艦が無力化されると想定していなかったのだろう。過ぎ去っていくハリーらへの対象は最低限で済まし、何とか1隻目と衝突しまいと必死に急制動をかけていた。
そんな2隻目に対し、過ぎ去りざまにムラセとアヤノは【コアⅡ】の『120mmライフル』を撃ち放ち、数発の弾丸を後部エンジンへと叩き込む。頼みの綱である推進力に異常をきたした2隻目は、成すすべなく1隻目と派手に衝突するのだった。
互いに船体を大きく歪ませることとなった1隻目と2隻目に、【ケルベロス】の徹甲弾による追撃が襲う。弾薬庫、エンジン部分といった要所を正確に穿った追撃によって、巡洋艦2隻は多くの命を連れて爆散し、広い宇宙の屑の一つへと消えていった。
「さてと――」
近寄らせまいと分厚い弾幕を張る3隻目の巡洋艦へと、3機は恐れることなく突き進む。彼らに張り付かれた巡洋艦が搭載火器の悉くを無力化されていく様は、”蹂躙”と呼ぶに相応しいものだった。
『ライフル』による射撃だけでなく、ハリーは隙あらば弾幕を掻い潜って船体を切り裂いていく。早々に艦橋は両断されてしまい、指揮系統が混乱している艦内は地獄のような有様となっていた。
下部に設けられた搭載戦闘機発進口はアヤノが撃ち込んだ弾丸を受けて炎を上げている。残る砲門やCIWSはムラセによって処理され、ほどなくして巡洋艦は丸裸の状態となった。
「よいしょっと」
最後の極めつけといった形で後部エンジンの側面へとハリーは『対艦用高周波ブレード』を突き刺す。宇宙を進む力すら奪われ、ただの極大の棺桶となった巡洋艦。哀れにも思えるほど惨い様になった艦から刃を引き抜き、ハリーは【ストライカー】の進路を母艦へと向けた。
帰路に就くハリーにムラセとアヤノも追従していき、地獄絵図から遠ざかっていく。残された3隻目の巡洋艦の乗組員は見逃してくれたと思い込んでほっと胸を撫でおろしていたが、直後に絶叫を轟かせることとなる。
射点を変えたテイラー兄妹が放った止めの砲撃が、巡洋艦の急所へと叩き込まれた。装甲を穿ったのは6発の徹甲榴弾。その爆発が誘爆を生み、数多の絶叫と共に膨れ上がった炎が一帯を照らすのだった。
それからほどなくして、ハリーら3機は母艦と輸送艇の下へとたどり着く。『ARP』の影響下から外れたことで回復した回線を通し、ハリーは頼れる部下たちへ笑顔で告げるのだった。
「お疲れ様、皆。今日も髑髏頭の圧勝だね」




