表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/30

13 髑髏頭(スカルヘッド)③

『数は?』


『巡洋艦が3隻。直列にて進行。『ARP』散布と同時に突入し、目くらましをしていますが間もなく肉眼での確認可能距離に入ります』


『報告ご苦労。それじゃあ迎撃に移るとしよう。アラン、君は輸送艇の警護を頼む』


「する必要性を感じないが」


『そう言ってくれるな。もしもがあるとも限らないだろう?』



 和やかな空気は一変し、緊張が張り詰める。そうした中であっても平常心を崩さないハリーは、名残惜しそうにアランの下から離れて部下たちの方へと向かうのだった。

 ハリー率いる『第4独立機動部隊』のチーム『α』の面々は、既にこちらへと向けて進んでいる巡洋艦を迎え撃つべく配置についていた。砲撃準備を整えていた最前列の2機へと向け、アランは回線をつなぐ。



『『スウェッソン』、『フェイ』、超長距離砲撃の準備は整ってるかい?』


『もちろんです』


『すぐにでも風穴開けられますよ~』



 手練れの雰囲気漂わせる黒人兄妹の姓は『テイラー』。彼らが操縦する【ケルベロス】による支援砲撃の精度は『α』だけでなく、コロニー連合軍内でも随一のもの。優秀な射手による援護のもと、ハリーは彼らを通り過ぎて近づきつつある巡洋艦の方へとスラスターを吹かせていった。

 進むハリーの後方に2機の【コアⅡ】が追従してくる。付かず離れずといった絶妙な距離を維持する2機に向け、アランは回線越しに笑顔を向けた。



『『ムラセ』、『アヤノ』、いつも通り援護よろしく』


『援護というより、撃ち漏らしの処理ですね』


『同感です。少しぐらいは獲物残してくれてもいいんですよ?』


『善処するよ。あれ? でもこの場合の善処はわざと取りこぼすってことになるのかな? まあ、いつも通りやるから頼むよ』


『『了解です』』



 『リョウ・ムラセ』、『カオリ・アヤノ』の東洋人男女コンビに背中を預けたハリーはスラスターの出力を上げていく。輸送艇から離れていく彼の【ストライカー】の姿を見送るアランは、ぼそりと小さくつぶやいた。



「――『踊る死神』、か」





     ■■■■■





 加速によって体がシートへと押し付けられる。いつもながらに心地よいその感覚に胸の内を昂らせながら、ハリーはさらに【ストライカー】の速度を上げていった。

 バックパック両側面の可動式アームが正常に稼働することを再確認したところで、両腕下部の『対艦用高周波ブレード』を抜き放つ。その刃を叩き込む対象を肉眼にて捉えた直後、強力な電波障害が発生し始めた。



「ん? もう『ARP』散布領域突入? ってことは、これ襲撃じゃなくて”待ち伏せ”か」



 想定よりも早く発生し始めた電波障害の正体は『ARP』。ミサイルによる散布ではなく、予め散布しておくことで接触時の敵の連携を崩そうという思惑をハリーは見破ったのである。

 戦い慣れていない者がこの状況に立てば混乱するだろう。しかしながら、ハリーを含めた彼ら髑髏頭スカルヘッドは違う。一切の動揺もなく、迫る治安維持軍へと向かっていった。



「威嚇砲撃、じゃないね。進路固定と考えると、戦闘機かな」



 明らかに当てる気がない巡洋艦からの砲撃から戦闘機の接近を察知したハリー。その推測通り、進行方向から戦闘機が迫りつつあるのを微かな噴射光から確認できた。

 数は【8】。ほんの僅かでも軌道を逸らせば味方の砲撃の餌食になる可能性が高い中、躊躇いなく突き進む姿から手練れであることが分かる。そうした存在たちを前にしながら、ハリーは口元に笑みを浮かべていた。

 


「良い練度だ。戦い甲斐がある」



 生きるか死ぬかの瀬戸際をハリーは心の底から楽しんでいるようだった。昂る彼に呼応するかのようにさらに限界まで速度を上げた【ストライカー】は、迫る戦闘機へと突っ込んでいく。

 そして――



「――まず2つ」



 ――先端を行く戦闘機2機が、爆散した。


 肩上から銃口を前方へと向けた可動式アームの『120mmライフル』の正確無比な射撃。第2、3射も、後に続く戦闘機たちを捉える。



「3つ、4つ」



 爆散に伴う煙と炎で視界が遮られているはずなのだが、撃ち放たれた弾丸は確実に戦闘機に直撃していく。すでに半数が堕とされた劣勢においても怯むことなく進む戦闘機たちは、【ストライカー】の目前にまで迫った。

 機関砲を撃ち込みつつ、搭載ミサイルを戦闘機たちは【ストライカ―】へと叩きこむ。巡洋艦からの砲撃と戦闘機たちの攻撃はまるで豪雨のようだった。



「――」



 見開いた目でハリーは迫る攻撃をしっかりと捉え、自ら手足として遜色なく動く【ストライカー】を稼働させる。防御するでもなく、速度を落とすこともなく、まるで”踊る”かのような圧巻の動きで全ての攻撃をかいくぐって見せた。



「5つと6つ」



 その直後にやってきたすれ違いざまのタイミングで、2機の戦闘機を『対艦用高周波ブレード』で切りつける。両断された戦闘機が爆散するよりも速く今度は背後へと銃口を向けていた可動式アームの『120mmライフル』が火を噴いた。



「7つ、8つっと」



 【ストライカー】の後方にいたムラセとアヤノへと攻撃を加えようとした残る戦闘機2機も、ハリーの手で撃墜された。勝利の余韻に浸ることなく突き進む【ストライカー】の絶技を目にした巡洋艦内部は、騒然となっているのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ